著者
高木 雅之 橋本 康太 坂本 千晶 池内 克馬 十樂 眞帆
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.353-360, 2023-06-15 (Released:2023-06-15)
参考文献数
13

地域在住高齢者6名に,作業の記録と対話を中心とした介護予防教室を実施した.その結果,参加者全員の高齢者向け生きがい感スケールと社会活動に関連する過ごし方満足度尺度の得点が向上した.また握力と30-seconds chair-stand testにおいても向上傾向がみられた.参加者の一人は,畑仕事,吊るし柿づくり,墓参りなど,多様な作業経験について記録・対話した.そして本事例は作業の計画や目標を持つ重要性に気づき,作業遂行が高まったと感じていた.これらのことから,作業についての記録と対話は,作業に対する気づきを促し,作業遂行を高め,生きがいや社会活動満足度,運動機能を向上させる可能性がある.
著者
高木 雅之 其阿弥 成子 織田 靖史 ボンジェ ペイター
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.301-310, 2020-06-15 (Released:2020-06-15)
参考文献数
24
被引用文献数
1

地域在住高齢者の健康や幸福を促進する作業に焦点を当てた集団プログラムの開発が進められている.本研究では新たに開発された活動日記を用いた集団プログラムの効果を,ランダム化比較試験によって検証した.対象者は地域在住高齢者125名であった.実験群には計4回の集団セッションが実施され,活動日記を毎日記入することが依頼された.対照群に介入は行われなかった.その結果,実験群の作業に対する満足度,生きがい感,生活満足度の変化量は,対照群よりも有意に高く,効果量は中程度であった(p<.001,r=0.3300.38).本プログラムは,地域在住高齢者の作業に対する満足度,生きがい感,生活満足度の向上に寄与することが示された.
著者
甲斐 公規 高木 雅之
出版者
日本作業科学研究会
雑誌
作業科学研究 (ISSN:18824234)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.66-73, 2022-12-31 (Released:2023-02-01)
参考文献数
18

近年,男性が積極的に育児に参加することが求められている.男性が父親になっていくプロセスは,育児という作業を通して起こるトランザクショナルな変化であり,父親になっていくプロセスを理解するに は,個人の経験を注意深く見る必要がある.よって本論では,父親であることに付随してトランザクショナルに拡大していった作業経験を振り返った.その結果,主体的な Doing によって,男性が理想的な父親や活動家としての Being に調和的に変容していったことが分かった.また,育児という作業が起点となり,育児を取り巻く状況的要素と有機的に交わって調和し,作業が発展しながら継続的にトランザクションを生じさせるプロセスが明らかとなった.さらに,一個人の父親の奮闘から始まった行動は,身近な集団レベルに波及し,集合体レベルでのより作業的に公正な社会づくりへとつながっていったと解釈できた.
著者
池内 克馬 高木 雅之 西田 征治 齊藤 隆一
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.809-816, 2023-12-15 (Released:2023-12-15)
参考文献数
23

われわれは地域在中のがん経験者を対象にした,ピアや作業療法士との対話,活動日記の振り返り,作業に焦点を当てた目標設定,目標の経過の共有という特徴を持った教室を考案した.本報告の目的は,この教室が生活の質に与えた影響を事例の経過から検討することだった.治療完了後もしくは治療中の女性3名に対して,教室を1週間に1回の頻度で6回開催した.結果,すべての参加者が少なくとも部分的に目標を達成し,かつ生活の質が向上した.この要因として,活動日記の記録の振り返りと目標設定により参加者の作業に対する認識が向上したこと,ピアと作業療法士双方が支持的に関わったことが考えられる.
著者
高木 雅之 岡崎 ななみ 宮脇 佳奈 棟田 千比呂 ボンジェ ペイター
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.674-682, 2019-12-15 (Released:2019-12-15)
参考文献数
31
被引用文献数
3

地域在住高齢者の日々の満足度に影響を与える作業経験を探索した.地域在住高齢者20名を対象に,日記と半構造化面接を用いてデータを収集し,テーマ分析を行った.その結果,一日の満足度に影響を与える作業経験として,つながり─隔たり,承認─否定,貢献─迷惑,努力─怠惰,楽しさ─退屈,進展─後退,上出来─不出来,獲得─喪失,回復─減退という9つのテーマが明らかとなった.1つの作業経験の中には,ポジティブな経験とネガティブな経験が混在することがあり,作業経験の複雑性が示された.本結果は,高齢者が日々の作業経験を理解し,生活の中でポジティブな作業経験を増やしていく手がかりを与えてくれる.
著者
永吉 美香 吉川 ひろみ 高木 雅之 古山 千佳子 西村 玲子 山西 葉子 西村 玲子
出版者
県立広島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

非行等の問題行動があり、児童自立支援施設で生活している子ども達の、社会交流技能について評価を行った。その結果、施設で生活している子ども達の社会交流技能の全体的なレベルには大きく2つの山があり、1つめは「平均より低いが社会生活に明らかな影響を及ぼすほどの低さではないレベル」に、もう1つは「社会生活に明らかな影響を及ぼすレベル」にあった。また入所児の多くが「対人関係」を自分の問題として報告していた。このことは未熟な社会交流技能であることが非行と関連している可能性を示唆しており、より年少期間での社会経験の格差解消や、早期介入を行うことで、将来の非行行動を回避できる可能性が考えられる。