- 著者
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川染 節江
三木 英三
合谷 祥一
山野 善正
- 出版者
- Japanese Society for Food Science and Technology
- 雑誌
- 日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
- 巻号頁・発行日
- vol.39, no.3, pp.245-252, 1992-03-15 (Released:2011-02-17)
- 参考文献数
- 15
- 被引用文献数
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1
スポンジケーキの生地の粘弾性と構造に及ぼすバター含量の影響を検討するため,バターを小麦粉に対し, 0~120%添加した試料について,レオメーターによる粘弾性の測定および走査型電子顕微鏡による観察により,次のような結果を得た.(1) みかけの粘度を反映する生地の流動量は,生地調製直後(放置前)では,バター含量の増大に伴い直線的に増加したが,放置10~30分後のものは, 120%では若干低下した.(2) 生地調製後, 25℃の恒温槽中で10~30分放置した生地の動的粘弾性(G',G")は,バター含量80%までは減少するが, 80%以上のバター含量では増大し,粘弾性の値とみかけの粘度を反映する生地の流動量との間に有意な負の相関性が得られた.また,バター含量による動的粘弾性の変化は,既報2)のケーキの圧縮試験による硬さ,ガム性およびそしゃく性の変化とほぼ同じ様相であった.(3) バター含量が増大するほど,損失正接(tanδ)は小さくなり,より弾性的な生地になった. tanδと生地の密度との間には有意な負の相関性が,また, tanδとケーキの比容積との間には有意な正の相関性が得られた.さらに,バター含量による損失正接の変化は,圧縮試験により得られているケーキのレオロジー特性を表すモデル式8)y=AnCeBnのパラメータ,C(変形のしやすさに対する抵抗力)の変化と類似していた.したがって,スポンジケーキ生地の動的粘弾性は,焙焼後のケーキの物性をよく表すといえる.(4) クライオ-SEMの写真から,調製直後の生地の気泡はバターを含まないものでは,主にやや大きな回転楕円体が多いが, 80%では小さいものが多く, 120%では大小の気泡が混在しており,いずれも,気泡は直径約100μm以下になると球形を呈することがわかった.(5) 生地の気泡の消失は,バター含量が多く放置時間が長くなるほど著しくなり,バターの添加により密度の増大をきたすことが,組織観察から明確になった.(6) 脂肪球は直径約20~60μmの球形をなし,表面に多くのひだが観察された.以上のように,ケーキ生地のみかけの粘度および動的粘弾性と生地の物性に大きな役割を示す組織のどちらにもバター含量が影響し,小麦粉に対し80%添加した試料が特徴的な様相を示し,既報のケーキのテクスチャー形成と官能評価が良好であったことを裏づけられた.