著者
三枝 英人
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.246-253, 2010 (Released:2011-08-15)
参考文献数
16

Suprahyoid muscles are composed of three different originated muscles, including the first branchial muscles (the mylohyoid and the anterior belly of the digastrics muscle), the second branchial muscles (the stylohyoid muscle and the posterior belly of the digastrics muscle), and the occipital somite (the geniohyoid muscle). The history of the suprahyoid muscles indicate that those muscles might differentiate along the history of the jaw of the vertebrates. And the hyoid bone in the human being does not connect any other bonny or cartilaginous structures, while the hyoid bone or cartilage in the another vertebrate connecting with the other branchial structures or the skull. It could be considered that the hyoid bone in the human being could act as a fulcrum of the submandibular bone and a tractor of the larynx, and the suprahyoid muscles could play successively both rolls of the hyoid bone for according to the functions including mastication, swallowing, speech production, singing, expression, and so on.
著者
小町 太郎 三枝 英人 愛野 威一郎 松岡 智治 粉川 隆行 中村 毅
出版者
特定非営利活動法人 日本気管食道科学会
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.286-291, 2005 (Released:2006-02-17)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

われわれは, 高齢発症の重症筋無力症 (以下MG) による嚥下障害および構音障害を呈した1例を経験した。症例は79歳女性。転倒後から嚥下障害が出現し, 一時改善を繰り返しつつ悪化した。この患者ではMGに典型的な日内変動や易疲労性を認めず, また, 眼瞼下垂などの典型的症状も有していなかった。このため, 診断に苦慮した。しかし, 訓練開始直後は訓練に対する反応性がよいが, その後徐々に悪くなること, 午前中より午後に嚥下訓練に対する反応性が悪いことから, MGが疑われた。そこで, 抗AChR抗体を測定したところ陽性であり, エドロフォニウム2 mg投与後に上記症状は速やかに改善したため, MGと診断できた。最近, 高齢発症の重症筋無力症の存在が注目されており, 注意が必要と考えられた。
著者
三枝 英人 粉川 隆行 愛野 威一郎
出版者
日本医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

(機能解剖学的研究)・H15年度の研究で、垂直舌筋が茎突舌筋との関連があることを確認したが、更に連続切片により、それを証明した。また、その神経支配様式から、舌尖の垂直運動と咀嚼運動の強い相関のあることが推察された。・舌咽神経咽頭枝・茎突咽頭筋枝、迷走神経咽頭頭枝、上喉頭神経外枝の神経線維解析により、H14年度に明らかにした横舌筋と上咽頭収縮筋の運動による舌後方運動と、これに続く嚥下時の咽頭蠕動波の発現の様式は、上頚神経節や交感神経との相関のもとに制御されていることが推察された。(機能生理学的研究)・hooked wired electrodeの手法による多チャンネル筋電図検査、エコー、内視鏡像との同期撮影により、舌尖の垂直運動と舌体部の後上方運動とが、咬合運動により、反射的に制御されるという反射性舌運動の存在をヒトで始めて確認した。これは、肉食動物において知られていた顎舌反射に相当するものであると考えられる。臨床的にも、この反射系を利用した舌運動障害に伴う口腔期嚥下障害や構音障害に対する治療の応用を検討中である。・カラードプラ超音波による舌運動評価方法を開発し、神経筋疾患による病的構音の病態分析や経時的評価での有用性を実証した。・舌骨上筋群の発声時のピッチ調節に対する機能的活動性についても、筋電図、エコーによる同期撮影記録により、明らかにした。更に、これを職業的声楽歌手についてと、そうでない場合とを比較した結果、職業的声楽歌手では、舌骨上筋群と舌骨下筋群、更に内喉頭筋との共同作業がより円滑に、実際のピッチ変化発現よりも早い段階で、極めて有用に連動して起こっていることが明らかになった。これの結果は、機能性発声障害のみならず、音楽表現などの教育指導などにも有効な情報になり得ると考えられた。
著者
山口 智 三枝 英人 中村 毅 小町 太郎 粉川 隆行 愛野 威一郎
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.549-552, 2009-07-20

Ⅰ.はじめに 唾液分泌過多症は唾液分泌の絶対量が多い真性のものと,嚥下障害や上部消化管の占拠性病変による通過障害に伴い唾液が貯留した仮性のものとに分類される1,2)。真性唾液分泌過多症の原因には,薬物性のものや消化器疾患に伴うもの,脳血管障害,パーキンソン病に伴うものなどが報告されており,治療の原則はおのおのの原因に応じたものが中心となる1,2)。一方,原疾患の制御が困難である場合や,特発性の真性唾液分泌過多症の場合には,治療に難渋することが多い2)。今回,われわれは,種々の治療に抵抗性であった特発性の真性唾液分泌過多症に対して,漢方製剤である茵蔯五苓散®が著効した1例を経験したので報告する。
著者
永積 渉 三枝 英人 門園 修 山口 智 小町 太郎 伊藤 裕之
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.350-356, 2017 (Released:2017-10-20)
参考文献数
10

誤嚥に伴う頻回の肺炎発症や,吸引回数の過多などの問題は,患者や家族,介護者の負担となる一方,音声言語によるコミュニケーションは,たとえ重度の感覚性失語となって有意味語が使用できない状態に陥ったとしても,感情に伴う発声,咄嗟時の発声などの心情の表出が行えるものであれば,重要な機能として回復,もしくは保存すべきものであるといえる.したがって,音声を永続的に奪う誤嚥防止術を施行することは,たとえその結果,経口摂取が可能となるとしても,嚥下障害に対する治療を徹底的に行っても改善が得られない場合以外には,まず目指すべき望ましい方向性とはいえない.今回,わたしたちは,重度の嚥下障害を伴う感覚性失語症の患者に対して,音声表出および経口摂取の回復を行いえた症例を経験したので,その治療経過を報告したい.症例は48歳女性.1年前,左側中大脳動脈領域の動脈瘤破裂に対してクリッピングを受けるも,その2ヵ月後に施行された頭蓋形成術中に未破裂の小脳動脈瘤が破裂した.これに対して後頭蓋窩開放・減圧術が施行されるも重度の嚥下障害が発症・遷延したため気管切開,胃瘻造設が施行された.その後在宅療養中であったが,終日にわたり頻回な気管内吸引が必要な状態であったため,誤嚥防止術の適応として当科紹介.これに対して,本症例の嚥下障害の病態を解明し,それに対するアプローチを徹底的に行ったところ,気管孔閉鎖が可能となり,さらに経口摂取,音声表出の回復が得られた.
著者
三枝 英人
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.1-10, 2020 (Released:2020-02-27)
参考文献数
14

構音はヒトのみが行う運動であるが,それを担う構音器官は,本来,構音を目的とするものではない.すなわち,呼吸と水分・栄養摂取に従事する器官であり,それらがヒトの脊柱による直立姿勢と,直立に伴う呼吸様式の変化と安定を基盤にして,音声言語活動に見合う自在性を獲得したものと考えられる.逆に,さまざまな要因により直立姿勢および呼吸様式に一定以上の負担が加わると,構音器官はこれらに対して代償的に活動することとなる.その結果,構音器官の構音を行うための自在性に制限が加わることとなり,神経学的異常による構音運動の異常が,より修飾されたものとなりうる.神経学的異常に起因した運動障害そのものを改善させることは難しいが,2次的に修飾された増悪因子を軽減することは可能である場合が多い.dysarthriaに対する医学的対応とはdysarthriaそのものよりも,患者全体をまずいかに見詰めるかに掛かっている.
著者
三枝 英人 愛野 威一郎 岩崎 智治 粉川 隆行 中村 毅
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.155-160, 2004-03-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
16

胃食道逆流症 (GERD) により咽喉頭異常感を呈した小児3例 (8歳女児、8歳男児および16歳男児) を経験した。全例とも特記すべき既往歴、家族歴を認めなかった。しつこい咳払いや異常感を訴えており、当初、心因性咽喉頭異常感症やチックとの鑑別が難しかった。しかし、喉頭内視鏡所見で披裂間部粘膜の発赤、腫脹を認め、さらに喉頭内視鏡の先端で同部位の触診を行うと、異常感を訴える部分と一致した。そこで、GERDにより咽喉頭異常感が発現している可能性を疑い、食道透視検査、上部消化管内視鏡検査を行ったが異常は認められなかった。このため、プロトンポンプ阻害剤 (lansoprazole 10-15mg/day) による診断的治療を行ったところ (8週間継続投与)、全例、喉頭内視鏡所見ともに症状の改善を認めた。小児においても、GERDにより咽喉頭異常感を呈することがあることが判明し、今後注意が必要であると思われた。
著者
三枝 英人 小野 卓哉 林 明聡 豊田 雅基 新美 成二 八木 聰明
出版者
The Japan Broncho-esophagological Society
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.297-302, 1997-08-10 (Released:2010-02-22)
参考文献数
14

The treatments for patients with severe dysphagia and misdeglutition are very difficult. Some cases must have total laryngectomy or tracheo-esophageal separation to control their severe misdeglutition and prevent serious respiratory distress. However, in such cases, the phonatory function has to be sacrificed, resulting in a poor quality of life.In order to overcome this conflict between deglutition and phonation, we have developed an “artificial pharynx.” The artificial pharynx consists of a soft balloon and a plastic tube. The soft balloon is attached to a tube with an inlet hole. The whole assembly can be inserted through the patient's nose. The tip of the tube remains in the stomach and the balloon is inflated at the level of the pharynx to seal the airway. Our patient could breathe through a tracheal stoma which was created prior to using the artificial pharynx. The bolus was introduced through the inlet hole into the tube and moved down to the stomach by gravity. When the balloon was deflated, the patient could breathe and phonate with a speech valve of the cannula.We treated a patient using an artificial pharynx. He was a 62 years old male diagnosed as having terminal myotonic dystrophy and suffering from severe dysphagia. Because of his poor general condition, any surgical intervention for dysphagia and misdeglutition could not be performed without a tracheotomy. But, since he yearned to take some drinks and to preserve his phonatory function, the artificial pharynx was utilized with some success.
著者
三枝 英人
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.189-195, 2014 (Released:2015-03-13)
参考文献数
5

近年,成人において胃食道逆流症の発症率増加が問題となっている一方,過去に既往の無い,今迄健康と思われていた小児への胃食道逆流症の発症が指摘されている。小児における胃食道逆流症は,喉頭痙攣や喉頭狭窄などの重篤なものから,執拗な咳払いや姿勢異常など心理的反応と誤診され得るものまであり,注意が必要である。一方,その対策は,単純に胃酸分泌を抑制すれば良いというものではなく,小児の成長,その後に続く人生への影響まで視野に入れて行う必要性がある。生活指導,食事指導が極めて重要となる一方,成長期,思春期を迎える小児に対し如何に指導を徹底し,遂行させるかは極めて難しい問題でもある。「子供は社会の鏡」であり,何らかの現代社会の問題点が,その発症の根底にあると考えられ,今後社会全体で取り組むべき問題となり得るものと危惧する。