著者
池田 浩 三沢 良
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.367-379, 2012 (Released:2013-06-04)
参考文献数
32
被引用文献数
2 5

本研究は, 失敗に対する捉え方や価値観を意味する失敗観尺度を作成し, その信頼性と妥当性の検討を行った。研究1では, 自由記述の回答からKJ法を用いて失敗観の構造を明らかにし, それと関連する先行研究を基に尺度の原案を作成した。そして, 大学生246名を対象に調査を実施し, 失敗観はネガティブ感情価, 学習可能性, 回避欲求, 発生可能性の4因子で構成されていることを見出した。研究2では, 759名の大学生を対象に調査を実施し, 尺度の内的整合性と時間的安定性を含めた信頼性, そして関連する尺度との関係性から妥当性を確認した。最後に, 研究3では, 大学生187名を対象に場面想定法による調査を実施したところ, どのような失敗観を持つかによって, 失敗に対する原因帰属やその後の対処行動が規定されることが示唆された。
著者
田原 直美 三沢 良 山口 裕幸
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.38-51, 2013 (Released:2013-09-03)
参考文献数
42
被引用文献数
2 3

本研究は,職務チームの対面的コミュニケーション行動を,特殊な機器を活用して詳細に測定,記録し,チームワーク特性と比較検討することで,職務チームにおいて有効なチーム・コミュニケーションとはどのようなものかについて実証することを試みた。システム・エンジニアを対象に,10週間職務遂行中の対面コミュニケーションを測定し,コミュニケーションの量的指標及びネットワーク指標を算出した。これらの指標と,質問紙調査により測定したチームワーク,職務満足感,集団アイデンティティ,及びチームのパフォーマンスとの関連を比較検討した。最終的に9チーム59名を対象に分析した結果,頻繁で緊密なチーム・コミュニケーションは必ずしも優れたチームワークを保証するものではないことが示された。また,チームとしての発達段階や,遂行する課題の特性,課題の習熟度などによって,チーム・コミュニケーションとチームワークとの関連が変化することも示唆された。
著者
大坪 庸介 島田 康弘 森永 今日子 三沢 良
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.85-91, 2003 (Released:2004-02-17)
参考文献数
16
被引用文献数
8 6

本研究では,日本の医療機関において職種内・間の地位格差により円滑なコミュニケーションが阻害されることがあるかどうかを,質問紙調査により検討した。質問紙では,職場の特定の対象が投薬量を間違っているのではないかと感じられる場面を想定してもらい,その相手に対してエラーの指摘をするのにどの程度の抵抗感を感じるかを尋ねた。調査対象は医師・看護師・薬剤師であり,それぞれの対象者ごとに同僚・先輩・後輩・その他の職種などを指摘対象として想定してもらった。結果は,同職種内では後輩より同期の相手に,同期より先輩に対して指摘に抵抗感があることを示していた。また,異職種間でも,看護師・薬剤師が医師に対して指摘する場合の抵抗感の方が,医師が看護師・薬剤師に対して指摘を行う場合の抵抗感よりも強かった。したがって,職種内・間の両方で程度の差こそあれ地位格差によるエラー指摘への抵抗感が存在することが示された。また,エラー指摘の抵抗感の程度には病院差があることも示された。今回の質問紙調査の限界と,今後,医療事故を減らしていくために必要とされる研究について考察した。
著者
三沢 良 佐相 邦英 山口 裕幸
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.219-232, 2009
被引用文献数
1

The purpose of this study was to develop the Teamwork Measure for Nursing Teams and to examine its reliability and validity. Based on the theoretical model of teamwork components proposed by Dickinson and McIntyre (1997), initial pools of items to measure three components (team orientation, team leadership, and team process) were generated. A questionnaire was administered to two different samples of nurses (study 1:N=568, study 2:N=650). The results of factor analyses revealed that every component of teamwork had subcomponents. Team orientation consisted of two-factors ("orientation for completing tasks" and "orientation for interpersonal relations"). Team leadership also consisted of two-factors ("job directions" and "concern for interpersonal relations"). The team process consisted of four-factors ("monitoring and coordination", "clarification of task", "information sharing", and "mutual feedback"), Scores on these subscales revealed acceptable levels of internal consistency (Cronbach's alpha). Teamwork components positively related to group identification and job satisfaction, and negatively related to incident rates. These results confirmed the validity of the scales. Finally, potential applications of this teamwork measure and the implications for team management practice are discussed.
著者
田原 直美 三沢 良 山口 裕幸
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.74-86, 2008 (Released:2008-11-14)
参考文献数
20

本研究は,病棟クラークの導入が看護師の業務の安全性と円滑さに及ぼす影響を,看護師の行動的及び心理的側面から検討した。K大学病院のA病棟に2名の病棟クラークを約8ヶ月間試験的に導入し,看護師の,業務中断経験,業務中のトラブル経験,ストレッサー,及びチームワークについて,導入前後の変化を追跡調査した。分析の結果,クラーク導入後のポジティブな変化として,看護師の業務中断経験及びトラブル経験の減少が確認されたが,ネガティブな変化として,患者に対応の遅れを指摘される経験の増加と看護師のチームワークプロセス認知の悪化が認められた。クラークの導入は看護師の業務負担軽減や安全性確保に有効であるが,そのためには,一定の時間とクラークと看護師の連携が不可欠であることが示唆された。
著者
吉岡 久美子 三沢 良
出版者
一般社団法人 日本健康心理学会
雑誌
健康心理学研究 (ISSN:09173323)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.93-103, 2012
被引用文献数
3

A hypothetical model of the process by which the causal attribution of depression is mediated by stigma of mental illness was developed, and its effect on social distance was investigated. We conducted household interviews with respondents (<i>n</i>= 1000, aged 20-69 years, 500 men and 500 women) in 25 nationwide locations that were extracted by area sampling. A path analysis was conducted by using a structural equation modeling. Results indicated the following. (a) There were positive effects of &ldquo;causal attribution to external events&rdquo; on &ldquo;dangerousness&rdquo; , &ldquo;possibility of control&rdquo; and &ldquo;social distance.&rdquo; (b) &ldquo;Causal attribution to internal characteristics&rdquo; had negative effects on &ldquo;dangerousness&rdquo; and &ldquo;possibility of control.&rdquo; (c) The &ldquo;dangerousness&rdquo; had a positive effect on &ldquo;social distance.&rdquo; The implications of these findings to knowledge and understanding about mental illness and for raising public awareness are discussed.