著者
松岡 憲知 上本 進二
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.263-281, 1984-04-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
36
被引用文献数
3

日本アルプスの稜線縦断面にみられる起伏と岩質の関係について検討した.花崩岩などの単一の岩種からなる稜線では,起伏は岩盤中の節理の発達程度(密度・結合度)に対応し,突出部ほど節理の発達が少ない.また複数の岩種からなる稜線でも,岩種にかかわらず,起伏は節理の発達程度に対応している。例えば,赤石山脈の堆積岩地域では,チャートや砂岩などの節理の発達の少ない岩石が突出部を構成し,節理の発達の著しい頁岩が鞍部を構成するという対応関係が認められる.節理の発達がとくに著しい断層破砕帯は,深く切れ込んだ鞍部を形成する. 現在の日本アルプスの高山地域では,風化作用の中で凍結破砕作用が卓越している.凍結破砕作用に対する抵抗性の大きさは,主として岩盤中の節理の発達程度に依存している.したがって,現在の凍結破砕作用の進み方は,現在みられる稜線上の起伏の状態と調和的であり,組織地形はより明瞭になっているといえる.
著者
上本 進二 大河内 勉 寒川 旭 山崎 晴雄 佃 栄吉 松島 義章
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.41-45, 1993
被引用文献数
1

鎌倉市長谷小路周辺遺跡において, 14世紀前半 (鎌倉時代後期~南北朝時代初期) に由比ヶ浜砂丘地に築かれた半地下式の建物の跡から, 13世紀から14世紀前半頃 (鎌倉時代初期~南北朝時代初期) 形成されたと考えられる噴砂の跡を検出した. 噴砂は砂層に含まれていた土器を巻き込んで約1m上昇して, 当時の地表に噴出している. また, 噴砂の流出と並行して16cmの落差を伴う地割れも形成されている. この噴砂は『吾妻鏡』や『北条九代記』に見られる地震記録から, 1257年 (正嘉元年) あるいは1293年 (永仁元年) の地震によって形成されたと思われる. とくに1257年の地震では, 鎌倉の各地で噴砂が発生した記録が『吾妻鏡』にあるので, 1257年の地震による噴砂と考えるのが適当であろう.