著者
外山 祐一郎 川又 純 下濱 俊
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.10, pp.626-630, 2018 (Released:2018-10-24)
参考文献数
9

症例1は25歳の女性看護師.日勤看護業務中,バーコードリーダーを使用直後に転倒し強直間代発作が出現した.強直間代発作は5分程度で自然頓挫したが,意識減損が30分程度持続した.症例2は30歳の女性看護師.夜勤にて看護業務中,バーコードリーダーを使用し赤色点滅光を凝視した直後に起立困難となった.同僚看護師の名前が分からない等の見当識障害が出現した.5分程度見当識障害を認めたが徐々に改善し意識清明となった.両症例はバーコードリーダーの赤色点滅光により誘発された光感受性発作と考えられる.医療機器として病棟で使用されている赤色点滅光を発光するバーコードリーダーは発作誘発の可能性があり注意を要する.
著者
井上 周子 矢澤 省吾 村原 貴史 山内 理香 下濱 俊
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.151-154, 2015 (Released:2015-03-17)
参考文献数
13
被引用文献数
2 2

症例は30歳,男性.乳児期に小児科でDravet症候群と診断され,バルプロ酸を主体に加療されたが月に1回以上の全身けいれん発作があり難治に経過した.28歳まで小児科で投薬を受けていたが,てんかん重積状態になったのを契機に神経内科へ紹介されて投薬を引き継いだ.29歳までの1年間にさらに3度の重積となった.患者の母親は処方の変更に消極的であったが,難治であることからくりかえし説明しレベチラセタムを追加投与したところ,全身けいれん発作は1年以上抑止され,本症の成人例にもレベチラセタムの効果を確認できた.また小児科のてんかん患者を引き継ぐ際の問題点も考察した.
著者
小田 亮介 藤倉 舞 林 貴士 松谷 学 曽根 淳 下濱 俊
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-001609, (Released:2021-10-16)
参考文献数
22

症例は70歳女性.来院6年前にもの忘れを発症した.認知機能障害,神経因性膀胱,便秘症,繰り返す嘔吐発作が認められた.当科初診時には肝内門脈体循環シャントによる肝性脳症を合併していた.頭部MRIでは皮髄境界や脳梁膨大部,両側中小脳脚にDWI高信号像が認められ,皮膚生検とNOTCH2NLC遺伝子検査の結果から神経核内封入体病(neuronal intranuclear inclusion disease,以下NIIDと略記)と診断した.過去10年の頭部MRIを後方視的に確認したところ,認知機能障害の出現に先行して異常信号が存在し,経時的に拡大していた.特徴的な皮髄境界病変だけではなく脳梁膨大部にも早期からDWI高信号像が認められることを念頭に置くことが,NIIDの早期診断に重要と考えられた.
著者
外山 祐一郎 矢坂 正弘 桑城 貴弘 湧川 佳幸 齊藤 正樹 下濱 俊 岡田 靖
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.428-433, 2015 (Released:2015-11-25)
参考文献数
11
被引用文献数
2

要旨:症例1 は63 歳男性.頸部回旋時より右後頭部痛を自覚した.右椎骨動脈に6 mm の拡張を認め,右椎骨動脈解離と診断した.出血や脳梗塞の所見なく,降圧療法を開始(150/90 から100/60 mmHg)した.後頭部痛は改善し第17 病日に消失し,第26 病日に退院した.症例2 は39 歳男性.起床時に正中後頭部痛を自覚した.第12 病日に当科受診.右椎骨動脈に9 mm の瘤形成を認め,降圧を行い(血圧120/60 から110/60 mmHg),後頭部痛は改善し第17 病日に消失し第23 病日に退院した.2~3 カ月後のMR 検査にて解離病変は症例1,2 ともに改善した.椎骨動脈解離急性期の降圧療法は頭痛や血行動態の改善に有効と考えられる.
著者
下濱 俊 北村 佳久
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

アルツハイマー病(AD)の病態解明にはニューロン・グリアの分子病態の解明が重要である。小胞体内に存在する分子シャペロンであるBip/GRP78は、ストレス条件下において誘導され、細胞機能の維持に重要な役割を持っている。Bip/GRP78タンパク質投与により、IL-6、TNF-αの産生が認められた。このサイトカイン産生能はBip/GRP78タンパク質の熱処理により消失した。また、同様の投与により、Aβ1-42の取り込み量及びAβ1-42を取り込んだミクログリア細胞数の増加が認められた。これらの結果よりBip/GRP78はミクログリアの活性化及びAβのクリアランスに対して促進的に作用することが示唆された。heat-shock protein (HSP)のミクログリアへの作用について検討した。その結果、細胞外HSP70は、Toll-like receptor4を介したnuclear factor-κB、p38 mitogen-activated protein kinase経路の活性化によりミクログリアからのサイトカインの産生及びAβ1-42の取り込み・分解を促進している可能性が示唆された。その後、確立した脳ミクログリアの純粋培養系ならびにAβファゴサイトーシス(貪食・除去)アッセイ系を利用して、グリア細胞による神経保護作用の解析を進めた。その結果、high mobility group protein-1 (HMG1)がAD脳内で増加しており、老人斑のAβと共存していること、ミクログリアの純粋培養系においてミクログリアによるAβ1-42のファゴサイトーシスを阻害すること、試験管内ではこの物質は単量体AβからAβオリゴマー形成を促進することを見出した。このことは、このHMG1阻害物質がAβオリゴマーの形成を除去し、単量体Aβの分解除去を促進しうることを意味する。ADに対する新たな治療戦略と考えている。