著者
高橋 哲也 片山 統裕 菊池 修 辛島 彰洋 中尾 光之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MBE, MEとバイオサイバネティックス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.370, pp.65-68, 2006-11-15
被引用文献数
5

神経回路を構成するニューロンの相互作用や協調的活動を調べることを目的として多重電極による多細胞記録法が用いられている.この手法では同時に記録された複数のニューロンの活動電位を波形情報を頼りに弁別する.複数のニューロンがほぼ同時に発火すると波形が重畳するため,従来のパターン認識の手法ではスパイクの弁別精度が低下するという問題があった.この問題を解決する手法として独立成分分析(ICA)を適用した手法が提案されてきた.しかし十分な分離結果が得られないことが多い.本研究では,連続ウェーヴレット変換と複素ICAを組み合わせた新しいスパイク弁別アルゴリズムを提案する.シミュレーションデータに本手法を適用することによって,従来のICA法より優れた性能を持つこと,及びそのメカニズムについて考察する.
著者
渡邉 俊平 片山 統裕 辛島 彰洋 田中 徹 虫明 元 中尾 光之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MBE, MEとバイオサイバネティックス
巻号頁・発行日
vol.113, no.314, pp.13-18, 2013-11-15

本研究では,脳への電極埋め込み手術中に観測される細胞外電位信号と電極の位置情報を統合し,脳内の構造と状態の時間的変化を可視化する手法(脳内LFPマッピング)を提案する.この手法では,コンピュータ制御された電動マニピュレータで位置決めされたシリコン製多点リニア電極で細胞外電位信号を記録し,各記録点の多細胞活動及び局所フィールド電位の時空間ダイナミクスを解析する.その結果を時間及び空間を軸とする平面上にマッピングする.本手法をウレタン麻酔下のマウスの大脳に提案法を適用することにより,ニューロン活動,海馬θ波,γ波,シャープ波およびシャープ波リップルの時空間的パターンを視覚化する.これにより,本手法が脳内の構造と状態の時間変化を把握するために有用であることを示す.
著者
日高 慶太 片山 統裕 石川 大晃 辛島 彰洋 中尾 光之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.298, pp.27-32, 2012-11-09

マウス用没入型バーチャルリアリティシステムを開発した.このシステムを用い,無限に広がるバーチャル空間におけるマウスの自由行動を計測した.その結果,動物の移動運動の計測に用いる球式トレッドミルの力学パラメータが移動軌跡の形状に大きな影響を与えることが分かった.パラメータを適切に調整したトレッドミルを用い,移動運動と海馬脳波を同時記録した.解析の結果,実空間の場合と同様に,海馬脳波の周波数スペクトルが移動運動と関連して変化することが確認された.さらに,バーチャル空間においても移動速度と海馬シータ波の周波数が相関することを見出した.
著者
福土 審 青木 正志 金澤 素 中尾 光之 鹿野 理子
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

脳腸相関とは、中枢神経系と消化管の機能的関連を言う。これは発生学的に古い現象であるが、不明な点が多い。脳腸相関には大きく分けて2つの現象・経路がある。一つはストレスにより、中枢神経系興奮が自律神経内分泌系を介して消化管機能を変容させる現象・経路である。もう一つは、消化管からの信号が求心路から中枢神経系に伝達され、中枢神経機能を変容させる現象・経路である。われわれは、ストレスにより、あるいは、消化管刺激により、脳の特定部位でcorticotropin-releasing hormone(CRH)を中心とする神経伝達物質が放出され、局所脳活動を賦活化する、そして、過敏性腸症候群においてはこの現象が増強されている、と仮説づけた。本研究は、この仮説を動物実験とヒトに対する脳腸検査によって検証することを主目的とし、positron emission tomography(PET)と脳波power spectra、topographyをはじめとする脳機能画像と併せ、脳腸相関におけるCRHならびにその他の物質の役割を明確にした。平成15-18年度の科学研究費により、過敏性腸症候群の動物モデルを作成することができた。この動物モデルの病態はCRH拮抗薬により改善した。また、消化管への物理ストレスにより内臓痛が生じ、視床と辺縁系で脳血流量が増加した。同時に、脳波power spectra、topogramが変化し、腹痛とともに不安が生じた。この時、消化管運動も変化した。過敏性腸症候群ではこれらの現象が顕著であるが、これらもCRH拮抗薬により改善した。過敏性腸症候群あるいはその病態を示す動物では、辺縁系におけるCRH遊離がこれらの結果を招くことが示唆された。これらの知見を平成15-18年度に得たことにより、脳腸相関におけるCRH系の関与を明らかにするという研究目的を達成することができた。
著者
坂井 秀樹 中尾 光之 本堂 毅 山本 光璋
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MBE, MEとバイオサイバネティックス
巻号頁・発行日
vol.94, no.350, pp.73-80, 1994-11-18

外的同調時はもとより、時間的手がかりを取り去ったフリーラン環境下においても体温リズムと睡眠-覚醒リズムの間には規則的な関係が存在することが知られている。本稿では、これらの現象を統一的に理解するために、我々が新しく構築したサーカディアンシステムモデルのダイナミクスについて述べる。このモデルは2つの写像で構成されており、1つは体温リズムに対する就寝位相を決定する写像で、もう1つは起床位相を決定するものである。そのダイナミクスは1つの分岐パラメータで決定され、外的同調時から内的脱調時における睡眠-覚醒リズムの多様な振舞いが分岐現象として解釈できることが示された。
著者
米田 徹 水谷 好成 中尾 光之 山本 光璋
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MBE, MEとバイオサイバネティックス
巻号頁・発行日
vol.98, no.400, pp.7-12, 1998-11-17

痛み認知の脳内処理機構を知る手がかりを得るために, 電気的な痛み刺激と非痛み刺激に対する事象関連電位を測定した。第3の刺激として新奇刺激を加えたオドボール課題を行った。標準刺激(80%)と標的刺激(12%)は非痛み刺激で、それぞれ人差し指と掌外側に与えた。新奇刺激(8%)は小指に与え、痛みまたは非痛み感覚を誘発する。痛みを伴う新奇刺激に対するP300成分のピークの振幅は痛みを伴わない新奇刺激に比べ大きく、潜時も早くなる傾向が見られた。この結果は, 痛み刺激の方が非痛み刺激より新奇性が強く、意識レベルを大きく変調する可能性を示している。