著者
中居 伸行 貞森 紳丞 河村 誠 笹原 妃佐子 濱田 泰三
出版者
社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会雑誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.163-172, 2004-04-10 (Released:2010-08-10)
参考文献数
18
被引用文献数
7 9

目的: Oral Health Impact Profile (OHIP) はオーストラリアで開発された口腔QOLの評価法であり, 近年では, ほかの国々でも徐々に使用され始めている. 今回われわれは, OHIPの原版 (英語版) を日本語に翻訳し, 日本での使用の妥当性を確認した。方法: 本研究は2力国語に通じたもの (39名) を対象に, 原版と邦訳版の回答を比較・検討した. OHIPの翻訳の妥当性は項目ごとの一致率とλ係数 (対象性評価の指標) によって分析した.結果: 尺度ごとの平均一致率はそれぞれ, 「機能的な問題」75%, 「痛み」76%, 「不快感」69%, 「身体的困りごと」79%, 「心理的困りごと] 77%, 「社会的困りごと」90%, 「ハンディキャップ」85%であった. 全49項目中41項目は0.4以上のλ係数を有し, 高い一致性が認められた. 上記7尺度のα信頼性係数は, 原版では0.76-0.90, 翻訳版では0.77-0.89にあり, 日英両版の尺度の内的妥当性が変わらないことが示唆された. 日英両版における7尺度のSpearmanの順位相関係数は0.83-0.92 (p<0.001) で, 優位な相関性を示した.結論: 日本語版OHIPは, このように高い信頼性と翻訳の妥当性を有することから, 日英の2言語間で使用可能であることが示唆された.
著者
中居 伸行
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会誌 (ISSN:18834426)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.196-201, 2018 (Released:2018-08-02)
参考文献数
20

『インプラント周囲の角化歯肉』と『歯周インプラント補綴』についてcritical discussionを試みた.前者では科学的根拠に基づく慎重な治療介入が,後者では慎重な補綴設計が肝要であると思われた.『スカンジナビア型』では「必要性に基づくこと」を介入原則としているが,『米国型』では,術者の主体的意志がさらにそこに添加されているように感じられた,両者の取り組み方の違いは,臨床介入の際の判断基準Shouldしたほうがいいこと,Canしてもいいこと,Not have toしなくてもいいこと,Shouldn’tしないほうがいいことに関する視座の違いから生じているのだろう.
著者
西村 正宏 牧平 清超 二川 浩樹 浜田 泰三 中居 伸行 熊谷 宏
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

根面齲蝕の発生・進行に関与する微生物学的要因として、微生物の根面への付着、定着、酸あるいは酵素の産生による基質の分解が必要であり、我々は、カンジダアルビカンスは他のカンジダや齲蝕原性細菌と比較してコラーゲン及び変性コラーゲンへの付着能、定着能が著しく高いことを見出した。次にコラーゲンスポンジをカンジダアルビカンスと共培養すると、スポンジが完全に溶解することを見出した。このコラーゲン分解能をより定量的に検討するために、アゾコラーゲンやコラーゲン様配列をもつ合成ペプチド(FALGPA)による分解活性測定を行い、このコラゲナーゼ活性の性質について様々な検討を行った。その結果、1.アゾコラーゲンの分解能は嫌気的中性状態で血清アルブミン存在下の時に最も高かった。2.カンジダアルビカンス周囲のコラゲナーゼ活性の検討としてFALGPAの分解能を検討すると、同一ATP当たりではストレプトコッカスミュータンス、アクチノマイセスよりは弱く、ラクトバチラスよりは高かった。また血清アルブミンが存在するときに活性が高かった。3.FALGPAの分解活性はEDTAによって抑制されたが、セリンプロテアーゼインヒビター(APMSF)やアスパラギンプロテアーゼインヒビター(ペプスタチン)では抑制されなかった。また熱によって失活した。4.ゼラチンザイモグラフィーによる分子量検索の結果、培養上清中には約116kDa,150kDaの2本のバンドを検出し、このバンドはサンプルの熱処理によって消失したがEDTA処理では消失しなかった。以上の結果から、カンジダアルビカンスは細胞周囲と培養上清中に少なくとも2つ以上の異なるコラゲナーゼ様の酵素を産生し、この活性は他の細菌と比較して十分に強力なコラーゲン分解能を持つことが示された。したがって、カンジダアルビカンスは根面齲蝕におけるコラーゲン分解に十分に関わりうることが示された。