著者
玉本 光弘 名原 行徳 矢谷 博文 小谷 博夫 浜田 泰三
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会雑誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.1018-1022, 1984
被引用文献数
3

義歯性口内炎の原因の1つとして, デンチャー プラーク中の真菌が重要な役割を演じていると考えられている. したがって, 真菌を含んだプラークを除去する目的で, 義歯洗浄剤を使用することは, 義歯性口内炎の予防および治療にとって有効な手段と考えられる. しかし, 従来の義歯洗浄剤の洗浄効果の研究は, 肉眼的な義歯の汚れ除去効果のみに主眼を置いたものであった. そこで, 本研究では, 義歯性口内炎の治療および予防に主眼を置いた義歯洗浄剤の洗浄効果の評価のため, 従来の肉眼的な評価法と, 新たに義歯性口内炎の原因菌と考えられている真菌を検出する簡易培地であるストマスタットを用いた評価法の有効性を検討した.
著者
西村 正宏 牧平 清超 二川 浩樹 浜田 泰三 中居 伸行 熊谷 宏
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

根面齲蝕の発生・進行に関与する微生物学的要因として、微生物の根面への付着、定着、酸あるいは酵素の産生による基質の分解が必要であり、我々は、カンジダアルビカンスは他のカンジダや齲蝕原性細菌と比較してコラーゲン及び変性コラーゲンへの付着能、定着能が著しく高いことを見出した。次にコラーゲンスポンジをカンジダアルビカンスと共培養すると、スポンジが完全に溶解することを見出した。このコラーゲン分解能をより定量的に検討するために、アゾコラーゲンやコラーゲン様配列をもつ合成ペプチド(FALGPA)による分解活性測定を行い、このコラゲナーゼ活性の性質について様々な検討を行った。その結果、1.アゾコラーゲンの分解能は嫌気的中性状態で血清アルブミン存在下の時に最も高かった。2.カンジダアルビカンス周囲のコラゲナーゼ活性の検討としてFALGPAの分解能を検討すると、同一ATP当たりではストレプトコッカスミュータンス、アクチノマイセスよりは弱く、ラクトバチラスよりは高かった。また血清アルブミンが存在するときに活性が高かった。3.FALGPAの分解活性はEDTAによって抑制されたが、セリンプロテアーゼインヒビター(APMSF)やアスパラギンプロテアーゼインヒビター(ペプスタチン)では抑制されなかった。また熱によって失活した。4.ゼラチンザイモグラフィーによる分子量検索の結果、培養上清中には約116kDa,150kDaの2本のバンドを検出し、このバンドはサンプルの熱処理によって消失したがEDTA処理では消失しなかった。以上の結果から、カンジダアルビカンスは細胞周囲と培養上清中に少なくとも2つ以上の異なるコラゲナーゼ様の酵素を産生し、この活性は他の細菌と比較して十分に強力なコラーゲン分解能を持つことが示された。したがって、カンジダアルビカンスは根面齲蝕におけるコラーゲン分解に十分に関わりうることが示された。
著者
浜田 泰三 二川 浩樹
出版者
Japan Prosthodontic Society
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 = The journal of the Japan Prosthodontic Society (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.561-581, 2001-10-10
被引用文献数
16 2

顎口腔が全身の一部として, 全身とのかかわりがあるにもかかわらず, 体の一部分として取り扱われてきた傾向があるが, 高齢社会のなかで寝たきり患者などから否応なしに口腔が全身の健康と深い関係がある実態をみせつけられた. 欧米ではすでに100年以上も前から義歯の汚れを微生物学的視点からとらえていたが, わが国では20年くらいの歴史しかない. 本稿ではまず (1) デンチャープラークの微生物について解説した. 次いで (2) デンチャープラークの病原性について口腔への影響と全身への影響について言及した. さらに (3) オーラルヘルスケアの具体的方法として機械的な清掃法, 義歯洗浄剤さらには抗真菌剤や銀系無機抗菌剤の応用を紹介した.<BR>オーラルヘルスケアにあたり, いかに口腔内の汚染レベルを把握するかはとても重要であり, 現在応用できるカリエスリスク検査と歯肉溝滲出液検査について解説し, 特にカンジダ検査について詳しく述べた. 局所ならびに全身状態の把握や高齢者に対して特に配慮すべき事柄についても言及した.
著者
牧平 清超 二川 浩樹 西村 春樹 西村 正宏 村田 比呂司 貞森 紳丞 石田 和寛 山城 啓文 金 辰 江草 宏 福島 整 浜田 泰三
出版者
社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会雑誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.403-411, 2001-06-10 (Released:2010-08-10)
参考文献数
22
被引用文献数
4 4

目的: 本研究は, 市販義歯安定剤の細胞活性への影響および炎症性サイトカインであるインターロイキン1βの発現誘導に及ぼす影響を検討した.方法: 細胞活性への影響はaqueous soluble tetrazolium/formazan assay (MTS法) を用いて, またインターロイキン1βの発現誘導はEnzyme-linked immunosorbent assay (EUSA法) を用いて評価した.結果: クリームタイプを中心とした義歯安定剤は, 強い細胞活性の減少を示した. 特に新ポリグリップ無添加が最も低い細胞生存率を示した. 一方, ポリデントを除くクッションタイプでは, 細胞活性に対する影響をほとんど認めなかった. 粉末タイプおよびシールタイプでは, これらの中間の作用を示した. これらの細胞に対する作用は, pHの影響ではなくむしろ義歯安定剤の成分に大きく依存していることが示唆された.また, 細胞活性に影響を与えない6製品でインターロイキン1βの発現を検討した結果, すべての製品で誘導を示さなかった. しかしながら, 歯科で使用される材料由来の環境ホルモンによる人体への影響が懸念されているなか, 今後さらに分子レベルにまで踏み込んだ検討が必要と思われる.結論: 義歯安定剤にはこれまで報告されている機能面での為害性や細胞生物学的な為害性も有している製品もあることから, その使用にあたって歯科医師の十分な管理が必要と考えられる.