著者
大竹 美登利 中山 節子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.63, pp.148, 2011

目的:世界経済の急速な悪化によって、日本では、派遣、パートなどの低賃金で不安定な労働市場が拡大し、生活費の最低限を確保するために、長時間労働や複数の仕事を掛け持ちするダブルワークが増えているといわれている。そこで、2010年の家政学会では、収入階層が時間配分に与える影響について分析した。その結果、収入階層と時間量には一定の関係があったが、必ずしも収入が高いほど労働時間が長くならず、土日では収入階層が高いほど労働時間が短く家事時間や自由時間が長くなる傾向にあった。そこで今回は同様のデータを使用し、生活の質を規定すると考えられる余暇活動の内容が収入階層によって相違するかどうかを明らかにすることを本研究の目的とした。<BR>方法:一橋大学経済研究所附属社会科学統計情報研究センターでは、学術研究目的使用する研究者に、秘匿処理を施したミクロデータを試行的に提供している。この募集に応募し承認を受けた(2007年12月官報4969号)、1991、1996、2001年の社会生活基本調査のミクロデータを使用し、収入階層による相違を分析した。<BR>結果:収入階層による時間量の相違が明らかになった夫妻と子どもの世帯で、収入階層別に、夫妻のインターネットの利用、学習研究活動、スポーツ、趣味、ボランティア、旅行の余暇活動の頻度を分析したところ、どの活動においても、収入階層が高いほど頻度が高くなる傾向にあり、特に妻パート世帯ではその傾向が明らかとなった。そこで、夫婦と子どもの妻パート世帯の高校生を同様に分析した結果、親と同様に、収入階層が高いほど様々な余暇活動が活発に行われていた。逆に言えば、親世代の社会的文化的貧困さが、子ども世代にも再生産されていることが明らかとなった。
著者
大竹 美登利 中山 節子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 63回大会(2011年)
巻号頁・発行日
pp.148, 2011 (Released:2011-09-03)

目的:世界経済の急速な悪化によって、日本では、派遣、パートなどの低賃金で不安定な労働市場が拡大し、生活費の最低限を確保するために、長時間労働や複数の仕事を掛け持ちするダブルワークが増えているといわれている。そこで、2010年の家政学会では、収入階層が時間配分に与える影響について分析した。その結果、収入階層と時間量には一定の関係があったが、必ずしも収入が高いほど労働時間が長くならず、土日では収入階層が高いほど労働時間が短く家事時間や自由時間が長くなる傾向にあった。そこで今回は同様のデータを使用し、生活の質を規定すると考えられる余暇活動の内容が収入階層によって相違するかどうかを明らかにすることを本研究の目的とした。 方法:一橋大学経済研究所附属社会科学統計情報研究センターでは、学術研究目的使用する研究者に、秘匿処理を施したミクロデータを試行的に提供している。この募集に応募し承認を受けた(2007年12月官報4969号)、1991、1996、2001年の社会生活基本調査のミクロデータを使用し、収入階層による相違を分析した。 結果:収入階層による時間量の相違が明らかになった夫妻と子どもの世帯で、収入階層別に、夫妻のインターネットの利用、学習研究活動、スポーツ、趣味、ボランティア、旅行の余暇活動の頻度を分析したところ、どの活動においても、収入階層が高いほど頻度が高くなる傾向にあり、特に妻パート世帯ではその傾向が明らかとなった。そこで、夫婦と子どもの妻パート世帯の高校生を同様に分析した結果、親と同様に、収入階層が高いほど様々な余暇活動が活発に行われていた。逆に言えば、親世代の社会的文化的貧困さが、子ども世代にも再生産されていることが明らかとなった。
著者
若月 温美 中山 節子 冨田 道子 藤田 昌子 中野 葉子 松岡 依里子 坪内 恭子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.53, pp.17, 2010

[目的]<BR>本研究は、社会環境の激変の中で進行する格差社会において、どのように生活経営を考え、暮らしをつくりかえていけばよいのか生活経営領域を中心としたカリキュラムを検討することを目的とするものである。本報告では、セーフティネットをどう構築していけばよいのかを探求する授業実践分析を中心に報告を行う。最後に、授業実践分析結果を踏まえながら、本研究の授業設計やカリキュラムの構築の課題を明かにする。<BR>[方法]<BR>対象校は、千葉県の私立高校(B校)と東京都の私立高校(C校)の2校である。対象学年は、B校1年生、C校2年生である。授業実践時期は、2010年1月~2月である。両校ともに4時間の授業計画で、導入で『ホームレス中学生』<SUP>1</SUP>を教材として用い、そこから住まいに住むために必要なこと(B校)や生きていくために必要なこと(C校)を考察させた。次に、派遣社員やネットカフェ難民の実態をVTRで視聴させ、格差や貧困の問題を身近な課題であることを理解させた。B校の対象者は格差や貧困の問題が自分の生活課題として捉えることが難しいことが予想されたため、VTR視聴後に自分自身の生活設計を考えさせた。両校ともに、最後に社会的排除を生み出す社会構造について解説し、ホームレスやネットカフェ難民、派遣社員などの厳しい生活実態から抜け出すためには何が生活資源として必要なのか、また資源を得るためには何が課題となるのかを考察させた。これらを踏まえて、自分自身の生活資源について考えさせ授業のまとめとした。<BR>[結果]<BR>導入の『ホームレス中学生』を取り上げた授業後の記述内容から、「住むこと」や「生きること」に必要なこととして、B校では、基本的な最低限度の生活を維持するのに必要な「物的資源」に関する内容やお金や仕事など「経済的資源」に関する内容が最も多く記述された。次に人や関係性に関する「人的資源」の内容が多く、具体的な記述としては「家族」よりも「近所の人」や「友達」などの記述が多くみられた。また、「個人の努力や能力、運、夢」など個人の資源や能力の問題として捉える記述も見受けられた。C校では信頼関係、頼れる人、家族、友人、つながりなど「人的資源」が最も多く記述され、続いて知恵、知識、資格などの「能力的資源」、「経済的資源」が続いている。その他、生きる希望、プラス思考などの「精神的資源」など、より多くの種類の資源があげられた。派遣社員やネットカフェ難民の実態については、両校ともに「初めて知った」や「大変だと思った」など驚きの反応が観察され、授業後の感想からは、これらの実態から漠然とした不安を抱きながらも自分の将来についてや仕事を得ることの重要性を客観的に見つめようとする様子が伺えた。社会的排除を生み出す社会構造の把握については、生徒の発達段階やこれまでの記述内容などを考慮し、それぞれ独自に工夫した教材を用いたことが効果的であった。自分自身の生活資源を考えることは、労働や福祉の諸課題、転落しやすい社会をどう変えていけばよいのかなど幅広い議論に発展することが明らかとなった。雇用労働環境が厳しさを増し、高校生の就職や進路も益々深刻な問題となっている中、自分がどうすればよいのかわからず悲観的あるいは消極的な状況に留まり続ける生徒の支援が今後の課題である。<BR>[課題]<BR>カリキュラム全体の課題としては、時間数の確保である。これまでカリキュラムの内容を厳選し、6~8時間計画のカリキュラム試案を提示した。<SUP>2</SUP> 試案を部分的に複数の学校で実施したが、時間数に関わる具体的な課題が見え、カリキュラムのコアを定めることがさらなる課題として明らかになった。<BR><BR>1 田村裕(2007)『ホームレス中学生』ワニブックス、田村 裕(2008)『コミックホームレス中学生』ワニブックス<BR>2 日本家庭科教育学会2009年度例会 分科会5配布資料
著者
藤田 昌子 松岡 依里子 若月 温美 中山 節子 中野 葉子 冨田 道子 坪内 恭子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.63, pp.4, 2011

【目的】構造改革による貧困と格差の拡大、2008年の金融破綻による経済危機は、高校生の修学・進学・就職にも深刻な影響を与えている。近年、若年者の労働や生活の実態は徐々に明らかにされているが、高校生に焦点をあてた調査は少なく、彼らの自立支援のための基礎資料は十分でない。本研究では、労働(アルバイト)、生活時間、生活不安に着目し、高校生の生活と労働の実態を明らかにすることを目的とする。<BR>【方法】山形・東京・千葉・神奈川・兵庫の公立・私立高等学校5校1~3年生622名を対象に、生活と労働に関する質問紙調査を実施した。調査時期は2010年7~10月である。<BR>【結果】4割の高校生がアルバイトを行い(アルバイト禁止校を除く)、その理由は「小遣い」「貯金」「家計補助」「学費」等であった。就労状況は、平日は週3~4日、4時間以上が最も多く、深夜時間帯や休日の8時間以上の就労といった労働基準法に抵触しているケースも少なくなかった。厳しい家庭の経済状況のもと、生活費や学費を稼ぐために長時間働かざるを得ない実態や高校生の雇用環境が明らかになった。こうした実態は、睡眠時間・学校以外での勉強時間に影響を及ぼし、「ストレス」「体調不良」「勉強時間がとれない」といった心身と学業面の問題を引き起こしていた。また、高校生は将来の生活に対して、進学や就職、就職後の経済生活、結婚や子育て、介護に至るまで不安を感じていた。このように貧困・格差は、学費や家計費を補うためにアルバイトを余儀なくされている高校生を生み出し、ワーク・ライフ・バランスに問題を生じさせるだけでなく、彼らの進学・就職、その後の将来に対する不安も助長していた。
著者
大竹 美登利 中山 節子
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

インドネシアでは、インドネシア中央統計局の協力をえて、2004年9〜11月に調査を実施した。調査はアフターコード方式の日記形式とし、「ペイド/アンペイド」「誰と」等を記述させるものとした。調査対象者は、ジャカルタの5地区から200世帯ずつ抽出した10歳以上の世帯員全員である。調査の配布と回収は、各地区40人の調査員が担当した。回収された4,151人のうち集計に使用したのは、平日2,408人、土曜3,253人、日曜2,343人である。タイでは、サワポーン(カサタート大学教授)を代表とするタイ生活時間調査チームを結成し、このチームと協力して、バンコック市内に住む住民の調査を実施した。調査は2005年12月〜3月に実施された。回収された300世帯のなかで、調査に協力してくれた人は1,244人であった。なお、日本の調査は資金等の関係から、事例的な調査とした。調査の結果、ペイド・ワークの時間は男性の方が長く、アンペイド・ワークである家事・育児の時間は女性の方が長く、インドネシア、タイにおいても性別役割分業は明確であった。ただし、ペイドワークにおいても、アンペイドワークにおいても、日本とは違う特徴があった。すなわち、女性がペイド・ワークに費やす時間は日本より多く、女性が社会的経済活動に参加しているが、家事の延長線上の小規模な生産活動が多く、インフォーマルな労働に多く携わっているという傾向があった。また、アンペイドワークにも、男性は日本より長く参画していたが、その内容は地域社会との交流に関わるものが多く、女性は炊事や洗濯などの家事雑事が多いなど、その内容に性による相違があることが明らかとなった。なお、これらの結果の一部は、2006年8月にデンマークで開催された国際生活時間学会で発表した。