著者
早川 和江
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 63回大会(2011年)
巻号頁・発行日
pp.84, 2011 (Released:2011-09-03)

目的 江戸時代,日本に初めて伝わったコーヒーは,その当時,薬としても飲用されており,津軽をはじめとする東北の藩士が北方警備のため蝦夷地に派遣された際,病による陣没者の減少に大きく貢献したといわれている.本研究ではこの点に着目し,藩士の飲用したコーヒーが健康に及ぼした影響の詳細について検討した. 方法 『天明の蝦夷地から幕末の宗谷』(稚内市教育委員会,2009年)を中心に,蝦夷地における藩士たちの生活事情を歴史的背景とともに把握し,現在までに明らかになっているコーヒーの成分や薬理作用に関連する文献・資料とあわせて考察した. 結果 蝦夷地での藩士たちを脅かしたのは寒さと浮腫病(水腫病)であった.この病は「腫レ出シ後心ヲ衝キ落命ニ至ル」といわれ,罹患した者の多くは死亡したという.現代でいえば脚気,または壊血病ではないかとされている.1803年に蘭学医・廣川獬が『蘭療法』の中でコーヒーには浮腫病に対する薬効があると説いているが,コーヒー抽出液には脚気,壊血病に有効な成分は含まれていない.一方,蝦夷地での藩士たちの生活は,厳しい寒さと多湿な環境に対して簡便すぎる住居と保温性の低い衣服や寝具,また偏った食生活のため栄養状態も悪く,藩士たちの多くが凍傷,低体温症を患っていたと推察される.これらの疾病は浮腫・むくみ・不整脈・心室細動といった症状を呈し,悪化すると致命率も高いなど浮腫病の症状と一致する.以上のことから,ここでいうコーヒーの薬効とは,コーヒーに含まれるカリウムの利尿作用,またナイアシンの血流改善効果などを指すと考えられ,浮腫病の予防,症状緩和という点において藩士たちの健康維持に有効であったと結論づけられた.
著者
李 璟媛 山下 亜紀子 津村 美穂
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 63回大会(2011年)
巻号頁・発行日
pp.155, 2011 (Released:2011-09-03)

【目的】虐待による子どもの死亡に対して「しつけのつもりだった」「しつけが過ぎた」と言い訳をし,しつけに対する各々の家庭の方法を正当化しようとする保護者が後を絶たない.そこで,本研究では,子育て中の保護者が子どもに対して行う様々な行為をどのように認識しているのかを,しつけと虐待という視点から検討することを目的とし,分析を行った. 【方法】2010年11月から2011年1月の間に宮崎市における6保育園と5幼稚園の協力を得て,保護者を対象に1,266部配布し,832部回収した(有効回収率65.7%).調査内容は,「大声で叱る」「お尻を叩く」「一室に閉じ込める」「学校に行かせない」などの26行為に対して,(1)子育て中に実際に行ったことがあるかどうか,(2)一般的にそれらの行為は「しつけと思うのか」「虐待と思うのか」,(3)それらの行為をしつけとして認識して行ったかどうか,などの項目で構成した. 【結果】(1)子育て中に実際に行った行為について,「ときどきある」と「何度かあった」を合わせて9割を超えたのは「大声で叱る」の1行為,6割を超えたのは,「お尻を叩く」「手を叩く」「頭を叩く」の3行為である.(2)一般的に(1)の行為は「しつけと思うのか」「虐待と思うのか」について,_丸1_「大声で叱る」「お尻を叩く」「手を叩く」の3行為については,6割弱の人が「しつけとして行ってよい」と考えており,_丸2_「頭を叩く」「泣いても放っておく」「車に子どもだけを乗せたままにする」については,5割の人が「どちらともいえない」と答えた.さらに_丸3_「虐待になる」が9割を超えたのは,「やけどを負わせる」「食事を与えない」「学校に行かせない」などの7行為であった.(3)(1)の行為について,実際に保護者がしつけとして行っている行為は,「大声で叱る」が最も多く,8割弱の保護者がそう答えている.次いで「手を叩く」が続き,5割を超える結果となった.
著者
福井 典代 岩川 真澄
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 63回大会(2011年)
巻号頁・発行日
pp.123, 2011 (Released:2011-09-03)

目的 JISにより既製服のサイズが標準化され明確になっている.その一方でファッションの多様化により,一つのブランドでの販売対象が狭くなり,JIS以外のサイズ表示も増えている.特にフリーサイズはJISに記載がなく,具体的な大きさがわからないという問題性をもつ.本研究では,衣類の実態調査を行い,フリーサイズの大きさを明らかにすることを目的とする.方法 (1)通信販売会社のホームページからフリーサイズの女性用衣類を抽出した.本研究では,女性用衣類の上半身用と全身用を対象とした.(2)服種ごとに整理し,さらに編物(ニット、カットソー)と織物に分類した.(3)サイズを調節する仕組みの有無を調べた.(4)フリーサイズの衣類のサイズ表記の種類,バストのヌード寸法,仕上げ寸法を明らかにした.(5)フリーサイズのバストの仕上げ寸法を服種ごとにグラフ化し,Mサイズや9号サイズと比較分析した.結果 フリーサイズの衣類では,表記の方法として大きさの基準があるものとないものの2つに大別された.本研究で抽出された衣類は,9ARやMサイズを基準としたフリーサイズが大部分を占め、337点中301点であった.バストのヌード寸法は,Mサイズの範囲(79~87cm)が最も多く,181点中164点であった.バストの仕上げ寸法の平均値は,ワンピースでは2.2cm,カーディガンでは15.1cm,プルオーバーでは4.2cm,ブラウスでは0.3cm,9ARやMサイズよりフリーサイズの方が大きく,コートのみフリーサイズの方が4.6cm小さい結果となった.フリーサイズの衣類は,伸縮性のあるニットで作られていたり,ウエストにゴムが入っていたりして,サイズを調節できる仕組みがあるものも見られた.
著者
川上 梅 石井 彩也香
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 63回大会(2011年)
巻号頁・発行日
pp.240, 2011 (Released:2011-09-03)

目的 今日、多くの女子高生がスカート丈を短く調節して履いており、制服が現状に合っていないのではないかと考える。本研究では、女子高生の制服のスカート丈に関する実態と意識について調査し、主にスカート丈の校則、実態及び理想の関係について検討し、実情の一部を明らかにした。 方法 実態及び意識調査の対象者は、都内私立女高1校、都立高2校、水戸市内女高2校、新潟市内私立女高1校の計6校に在籍する745名である。その他に、意識調査のみを女子大生110名、男女108名を対象に実施した。実態調査の内容は、校則のスカート丈、実際に履いているスカート丈、校則の厳しさ等である。また、意識調査の内容は、7種類の丈の異なるスカートのSD法によるイメージ評価である。調査期間は、2010年10月-12月である。 結果及び考察 <校則と思うスカート丈>は、同一の高校であれば、同一の回答が得られる筈であるが、同一の高校でも異なるスカート丈が選択され、認識は様々であった。この認識のばらつき(標準偏差)の違いにより、認識が画一的な高校と分散する高校に分けて考察した。その結果、スカート丈を画一的に認識し、スカート丈を膝丈あるいは膝上5cmの校則通りに履く傾向は、女子校で多く見られた。一方、男女共学の都立高等は、スカート丈の認識が分散しており、校則は膝上5cm程度であるにも拘わらず、実際には膝上10cm程度に調節して履いていた。さらに、<好ましいスカート丈>は、校則や実態が異なる全高校及び10代・20代の男女でほぼ一致し、膝上10cmの評価が最高値を示した。今日、若者の理想は膝上10cm程度であり、校則は膝丈あるいは膝上5cmと長めであった。
著者
米浪 直子 土居 香織 君ヶ袋 志麻 中山 真理子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 63回大会(2011年)
巻号頁・発行日
pp.15, 2011 (Released:2011-09-03)

【目的】食事誘発性体熱産生(DIT)は摂取エネルギーと食事内容に影響され、高たんぱく質食を摂取した場合、食後の熱産生により摂取エネルギーの約16%が消費されるといわれている。さらに運動後のアミノ酸投与は筋たんぱく質の合成率をより高めるという報告もある。本研究では、高たんぱく質食を運動後に摂取することがエネルギー代謝にどのような影響を及ぼすか検討を行った。 【方法】女子大生7名を対象として、30分間の65%VO₂max強度での運動負荷後、食事を摂取し、食後6時間までの心拍数、RQ、酸素消費量、DITを測定した(運動条件)。同様に運動を負荷せず安静状態で測定を行った(安静条件)。食事内容は高たんぱく質食644kcal(PFC 34:28:36%)と一般食642kcal(PFC 15:25:60%)とした。 【結果・考察】酸素消費量、発生熱量は食事摂取前に運動を負荷することによって高たんぱく質食条件が一般食条件よりも有意に高い値を示した。また、RQは運動負荷により高たんぱく質食条件が一般食条件より有意に低く、脂質燃焼が亢進することが示された。DITは、運動条件においては一般食条件よりも高たんぱく質食条件で高くなる傾向を示したが、安静条件では食後6時間までは両食事条件で有意な差は見られなかった。以上のことから、DITは一般食では運動による影響が見られないが、高たんぱく質食は運動後に摂取することで脂質の燃焼を促進するとともにDITが高まる可能性が示唆された。
著者
ガンガ 伸子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 63回大会(2011年)
巻号頁・発行日
pp.150, 2011 (Released:2011-09-03)

目的 家庭において食事計画(献立)を立てる際には、どの食品を組み合わせたら栄養バランスの良い食事になるか、できれば食費も抑えたいなど、栄養や経済性に配慮する。本研究の目的は、栄養摂取量と食品消費量に関する制約条件を課して、最小の費用で実現できる望ましい食事を計画することであるが、通常の線形計画法を基礎としてファジィ理論を導入したファジィ線形計画法を適用する。 方法 ファジィ線形計画法は、通常の線形計画問題に対してファジィ目標とファジィ制約が設定される。次のように、行列形式で表す。 cx<=z0 Ax<=b x>=0 「目的cxをだいたいz0以下にしたい。」というファジィ目標と、「制約Axをだいたいb以下にしたい」というファジィ制約が与えられている。各食品の栄養成分含量はm×n行列A=[aij]、各食品の消費量はx=(x1,x2,…,xn)、栄養所要量はb=(b1,b2,…,bm)、各食品の価格はC=(C1,C2,…,Cn)とする。食料費をファジィ目標とし、エネルギーとコレステロールに関するファジィ制約をつけたファジィ線形計画モデルを設定し、最小費用メニューを計算した。 結果 通常の線形計画法で、最小の食料費で実現できるメニューを求めたところ、でんぷん質食品が多く、また、家庭に常備されているような廉価で栄養価の食品が多く含まれていた。なかでも価格の優等生と呼ばれる卵の量が多くなり、コレステロール摂取量の上限値に達してしまった。しかし、750m以上の摂取は許されないが、できれば600mg以下にしたいというファジィ制約をつけると、コレステロール摂取量を大幅に抑えたメニューを求めることができた。
著者
吉井 美奈子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 63回大会(2011年)
巻号頁・発行日
pp.152, 2011 (Released:2011-09-03)

【研究目的】 現在、「選択的夫婦別姓」の民法改正案はとん挫状態にあり、その理由の一つに「子どもの氏」が、どちらかの親と異なることへの懸念がある。 日本では、正式な場や日常生活でも、多くの場合「氏(姓)」で呼ぶことが一般的であり、「氏(姓)」がアイデンティティの中でも重要であることは否めない。選択的夫婦別姓が認められていない現在でも、近年、親の離婚や再婚等の増加で、子どもの氏(姓)が何度か変更されることが増えた。これが子どもたちのアイデンティティ形成にどのように影響するかを研究、検討する必要がある。 本研究では、子どもがどのように氏(姓)を習得するかについて考察するために、子どもが自分の氏(姓)をどのように習得していくか、またその文字の習得について検討することを目的としている。 【研究方法】 2010年12月に1歳~6歳児の子どもを持つ保護者に対して調査票を配布、回収した。調査対象者は、大阪府、京都府、奈良県に住む保育園、幼稚園に子どもを預けている保護者とし、保育園・幼稚園を通じて調査を行った。有効回収数は419票(きょうだい票を含む)で、回答者のほとんどが女性(母親)、平均年齢は35.3歳であった。 【結果および考察】 1.子どもたちの多くは、自分の名前をフルネームでいうことができた。 2. 自分の名前が書けるようになったのは、3~4歳頃が多い。 3.約半数の親が「子どもが最初に文字を書けるようになったのは、“自分の名前”であった」と回答していた。 4.婚姻時に改姓した女性の多くは「それが普通」だと認識しており、「本当は改姓したくなかった」という回答は1割ほどであった。
著者
高橋 美登梨 蒲池 香津代 赤根 由利子 高岡 朋子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 63回大会(2011年)
巻号頁・発行日
pp.66, 2011 (Released:2011-09-03)

目的 近年,最近の若い男性を表す言葉として「草食系」がメディアに取り上げられるようになった。当初は主に恋愛に奥手な男性を指す言葉であったが,最近では日常生活全般に対して淡白な様を示すこともあり,多様な使われ方をしている。いずれにしても,以前に比べて,男性の生活全般に対する価値観の変化が一因と考えられる。そして,このような価値観の変化は,被服行動にも影響を与えると推察される。そこで,本報告では,生活意識と被服行動の関連性を検討した。方法 調査は,男子大学生285名を対象として,2010年10月~11月に集合調査法により実施した。調査内容は(1)被服行動(32項目,5段階評価)(2)生活意識(恋愛観,結婚観,貯蓄・消費態度,生活習慣に関する19項目,5段階評価)である。調査データは,因子分析,クラスター分析等の統計処理により解析した。結果 (1)被服行動の項目を因子分析した結果,「流行おしゃれ」,「女性化おしゃれ」,「規範的おしゃれ」,「機能性重視」,「他者重視」の5因子が抽出された。(2)生活意識をクラスター分析した結果,被験者は「堅実型肉食系」,「浪費型肉食系」,「草食系」,「無頓着系」に4分類された。(3)4分類された生活意識と被服行動との関連をみるために,被服行動各因子の尺度得点の高得点者を生活意識4クラスター群で分類し,尺度得点の平均値を一元配置の分散分析・多重比較で解析した。その結果、「草食系」には「女性化おしゃれ」、「堅実型肉食系」には「規範的おしゃれ」の特徴が見られた。草食系の男子学生は女性用の小物やフレグランスをつけるなどの女性的なおしゃれをすることが示唆された。
著者
山口 智子 大樌 春菜 小谷 スミ子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 63回大会(2011年)
巻号頁・発行日
pp.101, 2011 (Released:2011-09-03)

【目的】小麦粉の代替品として米粉に注目が集まる中、昨今、米粉パンから製造した米パン粉が開発されている。縁者らはこれまでに、市販されている種々の米パン粉と小麦パン粉について、フライ調理過程における吸油率の比較を行い、米パン粉の吸油率が小麦パン粉に比べて低いことを明らかにしている。本研究では、パン粉の粒度による吸油率や着色度の相違を明らかにすることを目的とした。【方法】試料として、米パン粉(生)、小麦パン粉(生)、市販小麦パン粉(乾燥)2種を用いた。米パン粉(生)と小麦パン粉(生)は、原材料とその配合割合ができるだけ同じになるようにパンを焼成し、常温で72時間経過後にフードプロセッサーで粉砕、粒度2、3、4mmのパン粉を作成した。水分は常圧乾燥法で、吸油率は全国パン粉工業協同連合会2008による簡易測定法で、着色度は色彩色差計で測定した。また、米パン粉と小麦パン粉を用いたハムカツについて、5段階評点法による官能評価を行なった。【結果】米パン粉(生)の吸油率は約30%であり、小麦パン粉(生)より吸油率に低い傾向がみられた。米パン粉(生)では粒度によって吸油率に相違はみられなかったが、小麦パン粉では粒度の小さい方が吸油率が低かった。フライ調理後の着色度については、米パン粉(生)は小麦パン粉より明度L*が低く、赤味a*が強く、黄味b*が弱くなる傾向があった。また、全パン粉において粒度の小さい方が明度L*が高く、黄味b*が強い傾向がみられた。粒度3mmのパン粉を用いたハムカツの官能評価の結果、米パン粉のフライは小麦パン粉のフライに比べて衣の色が濃く、衣がかたく、口当たりがやや悪いものの、味が良く総合評価も高かった。
著者
大竹 美登利 中山 節子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 63回大会(2011年)
巻号頁・発行日
pp.148, 2011 (Released:2011-09-03)

目的:世界経済の急速な悪化によって、日本では、派遣、パートなどの低賃金で不安定な労働市場が拡大し、生活費の最低限を確保するために、長時間労働や複数の仕事を掛け持ちするダブルワークが増えているといわれている。そこで、2010年の家政学会では、収入階層が時間配分に与える影響について分析した。その結果、収入階層と時間量には一定の関係があったが、必ずしも収入が高いほど労働時間が長くならず、土日では収入階層が高いほど労働時間が短く家事時間や自由時間が長くなる傾向にあった。そこで今回は同様のデータを使用し、生活の質を規定すると考えられる余暇活動の内容が収入階層によって相違するかどうかを明らかにすることを本研究の目的とした。 方法:一橋大学経済研究所附属社会科学統計情報研究センターでは、学術研究目的使用する研究者に、秘匿処理を施したミクロデータを試行的に提供している。この募集に応募し承認を受けた(2007年12月官報4969号)、1991、1996、2001年の社会生活基本調査のミクロデータを使用し、収入階層による相違を分析した。 結果:収入階層による時間量の相違が明らかになった夫妻と子どもの世帯で、収入階層別に、夫妻のインターネットの利用、学習研究活動、スポーツ、趣味、ボランティア、旅行の余暇活動の頻度を分析したところ、どの活動においても、収入階層が高いほど頻度が高くなる傾向にあり、特に妻パート世帯ではその傾向が明らかとなった。そこで、夫婦と子どもの妻パート世帯の高校生を同様に分析した結果、親と同様に、収入階層が高いほど様々な余暇活動が活発に行われていた。逆に言えば、親世代の社会的文化的貧困さが、子ども世代にも再生産されていることが明らかとなった。
著者
中田 理恵子 井上 裕康
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 63回大会(2011年)
巻号頁・発行日
pp.215, 2011 (Released:2011-09-03)

【目的】生活習慣病の予防において、適度な習慣的運動の重要性が注目されているが、食事摂取とのバランスや相互作用については不明な部分が多く、分子レベルでの作用機構の解明は十分ではない。我々は、赤ワインに含まれるポリフェノール、レスベラトロールが生活習慣病の薬剤標的である核内受容体PPARを活性化すること、レスベラトロールを摂取したマウスで運動持久力が改善することを見出している。本研究では、レスベラトロール摂取によるPPARαを介した運動持久力改善効果の作用機構を検討するとともに、習慣的運動の効果についての検討を行った。【方法】PPARα欠損型(KO)および対照野生型(WT)雄性マウス(129系)に、レスベラトロール(0,0.4%)添加した普通食または高脂肪食を4週間摂取させた。期間中、週5日の運動を負荷する群としない群に分けて飼育を行った。飼育開始時と4週目に、トレッドミルを用いて運動持久力を測定した。飼育終了後には肝臓と筋肉を採取し、各種遺伝子の相対的発現量の変化を解析した。【結果】普通食群のWTでは、レスベラトロール摂取により肝臓でのPPARα依存的な遺伝子の発現誘導が認められた。習慣的な運動負荷を併用したWTでは、筋肉でのPPAR応答遺伝子群や持久力に関わる遺伝子の発現誘導が見られ、運動持久力の向上効果が認められた。しかしながら、KOあるいは高脂肪食を負荷したWTでは、この変化が消失した。以上より、レスベラトロールによる運動持久力改善効果にはPPARα活性化が寄与すること、筋肉におけるPPAR応答遺伝子の発現誘導には、レスベラトロールの摂取に加えて習慣的な運動負荷が必要で、その結果が運動持久力の向上につながること、運動持久力の改善には肝臓と筋肉の相互作用が関与する可能性があることが明らかとなった。
著者
佐藤 真理子 齋藤 紘野 田村 照子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 63回大会(2011年)
巻号頁・発行日
pp.124, 2011 (Released:2011-09-03)

【目的】日本舞踊の伝統的所作である「振(ふり)」は,日本舞踊特有の身体動作であり,舞踊表現の基本的要素として伝承されてきた.本研究では,「振」のポーズと動きにおいて,男舞と女舞の所作の違いが,和服と人体の関係性にいかなる影響を及ぼすか,明らかにすることを目的とした.【方法】被験者は現代日本舞踊T流師範を持つ22歳の女性2名.着装条件は通常の稽古時と同様,浴衣・半幅帯・足袋・下着(キャミソール・スパッツ・和装用ブラジャー・ショーツ).測定動作は,(1)「束(そく)」;両足を揃えてまっすぐに立つ,(2)「座り」;片膝を付いて座る,(3)「入れ込み」;片足の爪先の前に反対の足を入れ込んで置く,(4)「姿見」;袖を胸に当て自分の姿を見る,(5)「振り返り」;片方の肩を引いて振り返る,(6)「かけ回り」;片足を軸足にかけるようにして身体の向きを変える,(7)「すり足」;足をするように前に出し歩く,の7種の「振」とし,男舞と女舞で踊り分けた.測定項目は,(1)~(5)の静止時の衣服圧と重心動揺,及び(1)~(7)の動作時の筋電とした.【結果】重心動揺では,「姿見」において女舞の総軌跡長の値が大であった.女舞は,男舞に比べ腰を落とし膝を曲げるため,姿勢の保持が難しいと考えられる.筋放電量では,男舞で前脛骨筋と大腿直筋,女舞で腓腹筋と大腿二頭筋の値が大であり,女舞で脚部の背面の筋をより使う傾向が明らかとなった.衣服圧では,女舞の所作において,身体をねじる,腰を落とす等,女らしさを強調する曲線的な動きをとるため,総じて値の大きい傾向が示された.
著者
竹山 恵美子 小沼 朋恵 高内 沙紀 堀内 美香 福島 正子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 63回大会(2011年)
巻号頁・発行日
pp.174, 2011 (Released:2011-09-03)

【目的】ペルーで栽培されるサッチャインチの完熟種実から圧搾して得られるグリーンナッツオイル(サッチャインチオイル)は,ω-3系脂肪酸であるα-リノレン酸とγ-トコフェロールに富んでいる。発表者らはこのオイルが生体に対して高い抗酸化力を示し,DNAの酸化損傷を抑える働きを有する可能性を臨床試験により明らかにした。一方,アマニ油やエゴマ油も同様にω-3系脂肪酸に富んだ油として知られており,以前から使用されている。しかしながら,ω-3系脂肪酸を豊富に含む油脂は加熱や光照射による影響を受けやすく,保存や調理の際の劣化が問題となる。そこで,より適した調理法を開拓するためグリーンナッツオイル,アマニ油およびエゴマ油の加熱および紫外線照射による影響について検討した。 【方法】試料はグリーンナッツオイル,アマニ油およびエゴマ油の3種類を用いた。これらを各々フライパンに一定量とり,80,100,120,140,160,180℃で10分間加熱した。また,UVランプを用いて,0,5,10,15,20,25時間紫外線照射した。これらの過酸化物価,カルボニル価を測定した。【結果】紫外線照射により過酸化物価・カルボニル価は,3種の油ともに上昇したが,その値はアマニ油>エゴマ油>グリーンナッツオイルの順で,特にグリーンナッツオイルは他の2種に比べて著しく低い値であった。また,10分間の加熱においても,温度の設定が高くなるほど両価の上昇が認められたが,過酸化物価はある温度をピークに減少し,その減少開始温度は油の種類により異なった。140℃までの加熱においては,グリーンナッツオイルが3種の油の中で最も劣化度が低いことが認められた。