著者
大井 優紀 井上 基浩 中島 美和 糸井 恵 北小路 博司
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.112-123, 2012-02-29 (Released:2013-10-18)
参考文献数
20

目的:鍼通電刺激の腱修復能に及ぼす影響について調査する目的で、アキレス腱断裂モデルラットを用いて、組織学的、および力学的に検討した。方法:Wistar系ラット(雄性、12週齢)60匹を用いて、アキレス腱断裂モデルを作成し、無作為に鍼通電刺激群(EA群)と無処置群(Control群)の 2群に分けた。EA 群は、軽度麻酔拘束下にアキレス腱断裂部の内外側に先端部が腱断裂部に接触するようにそれぞれ鍼を刺入し、内側部を陰極、外側部を陽極として間欠的直流鍼通電刺激(刺激条件:刺激幅 5 ms、刺激頻度 50 Hz、刺激強度 20 μA、刺激時間 20分間)をモデル作成日の翌日から各評価日まで連日行った。Control群は麻酔拘束処置のみ行った。評価として、モデル作成後 7日と 10日に修復腱を採取し、設定した関心領域内の全細胞数(HE染色)、TGF-β1、および b-FGF の陽性細胞数(免疫組織化学染色)の計測とそれぞれの染色による組織像の観察を行った。また、モデル作成後 10日には、引張試験による修復腱の最大破断強度を測定した。結果:HE染色では、各評価日とも群間に有意差を認め、EA群で明らかな細胞数の増加を認めた(7日:p<0.05、10日:p<0.001)。免疫染色においては、TGF-β1、b-FGFともにモデル作成後7日のEA群で最も強い発現を認め、他との間に有意差を認めた[(TGF-β1:7日 EA群vs. 10日 EA群:p<0.001、vs. 7日 Control群:p<0.0001、vs. 10日 Control群:p<0.0001)(b-FGF:7日 EA群vs. 10日 EA群:p<0.001、vs. 7日 Control群:p<0.0001、vs. 10日 Control群:p<0.0001)]。モデル作成後 10日における修復腱の最大破断強度は EA群で有意に高い値を示した(pp<0.01)。考察・結語:アキレス腱断裂後早期の検討において、EA群では細胞数の増加と成長因子の発現量増加、さらに腱強度の増大を認めた。これらの結果から、直流鍼通電刺激は腱修復部における細胞増殖と成長因子の発現に有益に作用し、修復腱の力学的強度を高めることが示唆され、腱修復能に促進的に作用する有用な方法となる可能性が考えられた。
著者
大井 優紀 井上 基浩 中島 美和 糸井 恵 北小路 博司
出版者
The Japanese Society of Balneology, Climatology and Physical Medicine
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.112-123, 2012-02-29

目的:鍼通電刺激の腱修復能に及ぼす影響について調査する目的で、アキレス腱断裂モデルラットを用いて、組織学的、および力学的に検討した。<br>方法:Wistar系ラット(雄性、12週齢)60匹を用いて、アキレス腱断裂モデルを作成し、無作為に鍼通電刺激群(EA群)と無処置群(Control群)の 2群に分けた。EA 群は、軽度麻酔拘束下にアキレス腱断裂部の内外側に先端部が腱断裂部に接触するようにそれぞれ鍼を刺入し、内側部を陰極、外側部を陽極として間欠的直流鍼通電刺激(刺激条件:刺激幅 5 ms、刺激頻度 50 Hz、刺激強度 20 μA、刺激時間 20分間)をモデル作成日の翌日から各評価日まで連日行った。Control群は麻酔拘束処置のみ行った。評価として、モデル作成後 7日と 10日に修復腱を採取し、設定した関心領域内の全細胞数(HE染色)、TGF-<i>β</i>1、および b-FGF の陽性細胞数(免疫組織化学染色)の計測とそれぞれの染色による組織像の観察を行った。また、モデル作成後 10日には、引張試験による修復腱の最大破断強度を測定した。<br>結果:HE染色では、各評価日とも群間に有意差を認め、EA群で明らかな細胞数の増加を認めた(7日:p<0.05、10日:p<0.001)。免疫染色においては、TGF-<i>β</i>1、b-FGFともにモデル作成後7日のEA群で最も強い発現を認め、他との間に有意差を認めた[(TGF-<i>β</i>1:7日 EA群vs. 10日 EA群:p<0.001、vs. 7日 Control群:p<0.0001、vs. 10日 Control群:p<0.0001)(b-FGF:7日 EA群vs. 10日 EA群:p<0.001、vs. 7日 Control群:p<0.0001、vs. 10日 Control群:p<0.0001)]。モデル作成後 10日における修復腱の最大破断強度は EA群で有意に高い値を示した(pp<0.01)。<br>考察・結語:アキレス腱断裂後早期の検討において、EA群では細胞数の増加と成長因子の発現量増加、さらに腱強度の増大を認めた。これらの結果から、直流鍼通電刺激は腱修復部における細胞増殖と成長因子の発現に有益に作用し、修復腱の力学的強度を高めることが示唆され、腱修復能に促進的に作用する有用な方法となる可能性が考えられた。
著者
中島 美和 井上 基浩 糸井 恵
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.477-485, 2009 (Released:2010-12-27)
参考文献数
16

【目的】鍼通電刺激の骨癒合能に対する影響を調査する目的で、 ラット脛骨の骨折モデルを用いて、 X線学的、 肉眼的、 および生体力学的に検討した。 【方法】Wistar系ラット (雄性、 12週齢) 30匹を用いて、 片側の脛骨骨幹部に開放的横骨折モデルを作成し、 無作為に鍼通電刺激群 (EA群)、 鍼群 (Sham群)、 無処置群 (Control群) の3群に分けた。 EA群は鍼を骨折部、 および骨折部より近位15mmの脛骨骨膜まで刺入し、 骨折部を陰極、 他方を陽極とした間欠的直流鍼通電刺激 (刺激条件:刺激幅5ms、 50Hz、 20μA、 20分間) を骨折作成日の翌日から3週間連日行った。 Sham群はEA群と同一部位・同一深度まで鍼の刺入のみ行い、 電気刺激は行わなかった。 Control群はモデル作成後、 処置を行わなかった。 評価は、 モデル作成後1、 3、 4、 6週に軟X線画像を用いて仮骨・骨面積の定量を行った。 併せて、 モデル作成後6週には脛骨を摘出し、 仮骨部の前後径、 左右径の計測を行った後、 3点曲げ試験を行い、 破断点試験力を測定した。 【結果】EA群ではSham群・Control群と比較して早期に仮骨形成が見られた (モデル作成後3週の仮骨・骨面積の比較;p<0.05)。 経過とともに全ての群で仮骨量の増大を認めたが、 モデル作成後6週経過時において、 EA群では他の実験群と比較して、 仮骨量の有意な増大を認めた (仮骨・骨面積;p<0.05、 仮骨部の前後径、 および左右径;各々p<0.01、 p<0.05)。 さらに、 EA群では、 モデル作成後6週において、 力学的にも高い仮骨強度を示した (p<0.001)。 全ての評価においてSham群とControl群の間には有意差を認めなかった。 【考察・結語】EA群で良好な結果が得られた理由として、 直流鍼通電刺激が陰極周囲、 骨折部局所の環境変化を引き起こし、 細胞活性に有利に働いた可能性が考えられ、 それにより仮骨形成の促進・増大を引き起こしたことが示唆された。 さらには、 仮骨の石灰化を促進・誘導した可能性が考えられた。
著者
藤本 幸子 井上 基浩 中島 美和 糸井 恵
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.208-217, 2011 (Released:2011-12-09)
参考文献数
19

【目的】腰痛に対する、 より効果的な鍼治療方法の検索を目的に、 同一部位における鍼の刺入深度の違いによる治療効果の相違をランダム化比較試験により検討した。 【方法】対象:罹病期間が3ヵ月以上の腰痛を有する患者32名をコンピュータープログラム (Sample Size 2.0) を用いてランダムに、 鍼を表在へのみ刺入する浅刺群と深部まで刺入する深刺群の2群に割り付けた。 介入:施術部位は両群ともに腰部の自覚的最大痛み部位3~12ヵ所を選択した。 浅刺群 (n=16) は切皮のみ (約5mm)、 深刺群 (n=16) は約20mm刺入し、 両群とも約1mm幅での雀啄術を20秒間行い、 その後に抜鍼した。 これらの治療を計4回 (1回/週) 行った。 評価:初回治療前後、 各回の治療前、 治療終了4週経過後に痛みのVisual Analogue Scale (VAS) を記録し、 併せて、 初回治療前、 治療終了時、 治療終了4週経過後にはRoland-Morris Disability Questionnaire (RDQ)、 Pain Disability Assessment Scale (PDAS) を用いて評価した。 なお、 評価は治療内容を知らない鍼灸師が行った。 【結果】VAS、 RDQ、 PDASの経時的変化パターンに関して両群間に交互作用を認め、 深刺群で有意に良好な結果を示した (VAS:p<0.05、 RDQ:p<0.001、 PDAS:p<0.05)。 また、 初回直後、 治療終了時、 治療終了4週経過後の各時点における初回治療前に対する変化量においても、 全ての評価項目において、 深刺群は浅刺群と比較して良好な結果を示した 「(初回直後 VAS:p<0.01)、 (治療終了時 VAS:p=0.13、 RDQ:p<0.05、 PDAS:p<0.01)、 (治療終了4週経過後 VAS:p<0.05、 RDQ:p<0.01、 PDAS:p<0.05)」。 【考察】全ての評価項目において、 浅刺群と比較して深刺群では良好な結果を示した。 このことから、 腰痛に対する自覚的痛み部位への鍼治療は、 筋の存在する深部まで刺入した方がより有効性が高いと考えた。 効果の相違が出現した理由に関しては、 浅刺群と深刺群それぞれの刺激を受容する組織の違いが関与し、 局所における痛覚閾値や筋血流、 あるいは筋緊張緩和に異なった影響を与えた可能性を考えた。
著者
井上 基浩 中島 美和 北條 達也 糸井 恵 北小路 博司
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.263-272, 2013-08-28 (Released:2013-10-18)
参考文献数
21

目的 : 弾発指は滑膜性・靱帯性腱鞘部(A1 pulley)での浅・深指屈筋腱、長母指屈筋腱の滑走障害が原因とされている。本研究では、障害指A1 pulley部に刺鍼し、弾発時疼痛と弾発現象の程度に対する鍼治療効果を観察した。方法 : 弾発指15名19指を対象とし、無治療等の対照群は設定せず、全例に対して同一の鍼治療を行った。治療は障害指A1 pulley部で屈筋腱の橈・尺側に置鍼術(鍼刺入状態で10分間維持)を最高で5回(1回5~7日)行った。毎回の治療前後に、弾発時疼痛と弾発現象の程度を、それぞれ無症状を0mm、最も耐え難い症状を100mmとしたVisual analogue scale (VAS)で評価した。また、各症状の初回治療前に対する5回目治療前の変化率を求め、50%を基準に改善の有無を判定し、改善の有無と罹病期間の関係について調査した。結果 : 弾発時疼痛、弾発現象の程度において、初回治療前から5回目治療前のVASは、順に57.1±22.2 (mm, mean±SD) →26.0±29.8、61.2±23.1→26.1±27.6となり、有意な改善を示した。また、初回治療時の直後評価でも、弾発時疼痛、弾発現象の程度のVASは、順に40.8±19.6、44.3±23.9となり、有意な改善を認めた。加えて、5回までの治療で、疼痛は4指、弾発現象は6指に完全消失を確認した。弾発時疼痛および弾発現象の改善の有無と罹病期間の関係に関しては、改善を示した方が罹病期間が有意に短かった。考察 : 弾発現象の改善は、鍼治療が靱帯性腱鞘の変性・肥厚に影響したとは考え難く、鍼治療による局所血流の変化が腱鞘滑膜の炎症性腫脹に影響したものと考えた。弾発時疼痛の軽減は、上記による屈筋腱の滑走性改善に加え、鍼治療による疼痛抑制系の賦活の関与を考えた。無治療やSham治療等の対照群の設定がないため、明確にプラセボ効果等の影響を除外できないが、罹病期間により効果に差が生じたことから、障害A1 Pulley部への鍼治療は、罹病期間が短く、腱鞘滑膜の炎症性腫脹を主因とする弾発指に対して有効性示す可能性を考えた。
著者
工藤 晴美 田中 絵弓 蓬田 淳 梶原 絢子 中島 美和
出版者
一般社団法人 日本救急看護学会
雑誌
日本救急看護学会雑誌 (ISSN:13480928)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.40-48, 2017 (Released:2017-08-31)
参考文献数
12

本研究は、救急外来における酩酊状態にある患者の現状を把握し、看護実践の課題を明らかにすることを目的とした。救急外来看護師を対象に、無記名自由記述式質問紙調査を行い、質的帰納的に分析を行った。分析の結果、酩酊状態にある患者に対する看護実践の課題は、【飲酒による行動予測の困難さ】、【飲酒による判断力の低下に関連した対応困難事象】、【院内での迷惑行為】、【不測の事態への医療者の心理的負担】、【酩酊状態にある患者・付き添い者のケアにおける苦慮】に分類された。結果より、酩酊状態にある患者は、意思の疎通が図り難く、行動の予測が困難で、迷惑行為による医療者への危害の可能性がある中で、看護師は状況に応じて看護実践を行っていることが明らかとなった。さらに、酩酊状態にある患者の症状は一時的であるため、軽症と認識される傾向になる中で、その看護実践に焦点を当てた報告は少なく、対応に苦慮していた。救急外来という時間的制限がある中で患者や付添者を含めた再発予防への指導が必要であるため、飲酒行為の背景を情報収集しながら、状況に応じた危険予測、患者指導を含めたツールの作成が必要である。
著者
山中 寿朗 石橋 純一郎 山下 徹 土居 真輔 坂本 丈明 中島 美和子 瀬口 真理子
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.52, pp.103-103, 2005

鹿児島湾北部の姶良カルデラに当たる海域には、近年火山噴火予知連によって活火山と認定された若尊海底火山がある。同海域は以前より盛んな噴気活動が知られており、これまでの潜航調査から熱水性石油や熱水性沈殿物がいくつか見出され報告されている。しかし、実際の熱水湧出に関しては、これまで明瞭な証拠が得られていなかった。本報告では、熱水のゆらぎが認められ、30cmのプローブを差し込んでの温度計測で137℃の温度が得られた地点で間隙水の分析を行い、熱水端成分を推定するに足る純度の高い熱水を得ることができたのでその地球化学的特徴について報告する。