著者
海老根 直之 北條 達也 中江 悟司 田中 宏暁 檜垣 靖樹 田中 歌 荒井 翔子 濱田 安重 石川 昂志 森川 綾子 鈴木 睦子 渡口 槙子
出版者
同志社大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では,共に摂取した飲料と食物が互いの水分の吸収速度に与える影響と,体位の変換が水分の吸収速度に与える影響を検討することを目的とした.その結果,水分を速やかに補給するためには,飲料を固形食と同時に摂取するよりも10分先行して摂る方が有効であること,飲料の量と温度は飲料水分だけでなく共に摂取した固形食の水分の吸収にも影響しうること,加えて,体位を工夫することで水分の吸収を促進できる可能性が示された.これらの知見は,効果的な水分の補給法の確立には,従来行われてきた飲料単体に焦点を当てた検討だけでなく,食事や体位といった実用時に生じる要因も含めた検討の必要性を示唆するものである.
著者
井上 基浩 中島 美和 北條 達也 糸井 恵 北小路 博司
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.263-272, 2013-08-28 (Released:2013-10-18)
参考文献数
21

目的 : 弾発指は滑膜性・靱帯性腱鞘部(A1 pulley)での浅・深指屈筋腱、長母指屈筋腱の滑走障害が原因とされている。本研究では、障害指A1 pulley部に刺鍼し、弾発時疼痛と弾発現象の程度に対する鍼治療効果を観察した。方法 : 弾発指15名19指を対象とし、無治療等の対照群は設定せず、全例に対して同一の鍼治療を行った。治療は障害指A1 pulley部で屈筋腱の橈・尺側に置鍼術(鍼刺入状態で10分間維持)を最高で5回(1回5~7日)行った。毎回の治療前後に、弾発時疼痛と弾発現象の程度を、それぞれ無症状を0mm、最も耐え難い症状を100mmとしたVisual analogue scale (VAS)で評価した。また、各症状の初回治療前に対する5回目治療前の変化率を求め、50%を基準に改善の有無を判定し、改善の有無と罹病期間の関係について調査した。結果 : 弾発時疼痛、弾発現象の程度において、初回治療前から5回目治療前のVASは、順に57.1±22.2 (mm, mean±SD) →26.0±29.8、61.2±23.1→26.1±27.6となり、有意な改善を示した。また、初回治療時の直後評価でも、弾発時疼痛、弾発現象の程度のVASは、順に40.8±19.6、44.3±23.9となり、有意な改善を認めた。加えて、5回までの治療で、疼痛は4指、弾発現象は6指に完全消失を確認した。弾発時疼痛および弾発現象の改善の有無と罹病期間の関係に関しては、改善を示した方が罹病期間が有意に短かった。考察 : 弾発現象の改善は、鍼治療が靱帯性腱鞘の変性・肥厚に影響したとは考え難く、鍼治療による局所血流の変化が腱鞘滑膜の炎症性腫脹に影響したものと考えた。弾発時疼痛の軽減は、上記による屈筋腱の滑走性改善に加え、鍼治療による疼痛抑制系の賦活の関与を考えた。無治療やSham治療等の対照群の設定がないため、明確にプラセボ効果等の影響を除外できないが、罹病期間により効果に差が生じたことから、障害A1 Pulley部への鍼治療は、罹病期間が短く、腱鞘滑膜の炎症性腫脹を主因とする弾発指に対して有効性示す可能性を考えた。
著者
北條 達也 井口 順太 高橋 仁美 小川 博之 Tatsuya Hojo Junta Iguchi Hitomi Takahashi Hiroyuki Ogawa
出版者
同志社大学スポーツ健康科学会
雑誌
同志社スポーツ健康科学 = Doshisha Journal of Health and Sports Science (ISSN:18834132)
巻号頁・発行日
no.4, pp.51-55, 2012-03-01

肋骨の疲労骨折は,ゴルフなどで生じる中位から下位の肋骨骨折がよく知られているが,第一肋骨の疲労骨折の報告は比較的少ない。われわれは,大学生チアリーダーに発生した第一肋骨の疲労骨折を経験した。左肩甲部痛で発症し,さらに左上肢尺側のしびれと痛みを自覚した。安静および低出力パルス超音波治療によって加療するも骨癒合は得られなかったが,1年後には競技に復帰できた。X線検査では評価が困難な同部位の評価に3DCTは,有用であった。
著者
松井 知之 高島 誠 池田 巧 北條 達也 長谷 斉 森原 徹 東 善一 木田 圭重 瀬尾 和弥 平本 真知子 伊藤 盛春 吉田 昌平 岩根 浩二
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.C4P1122, 2010

【目的】われわれは整形外科医師の協力を得て,理学療法士(以下PT),トレーナーでメディカルサポートチームを有志で組織し,スポーツ選手の肩肘関節疾患の障害予防と治療を目的に2008年から活動を行っている.今回その活動内容と特徴について報告する.<BR>【方法】1. 京都府高校野球連盟(以下高野連)からの依頼によって,京都府高校野球地方大会のサポートを,PT,医師,トレーナーが協力して行っている.具体的には,試合前検診,処置,試合中の救急対応,試合後の検診およびアイシング,コンディショニングを行い,選手が安心,安全にプレーできるようにサポートしている.<BR>2.中学生,高校生の野球選手に対してシーズンオフである冬季に行われる技術・トレーニング講習会で検診を行っている.医師による肩肘超音波検査,PT3名,1グループによる理学所見評価を行い,トレーナーがコンディショニングを指導している.<BR>3.肩肘関節の障害を認め,保存療法が必要な選手を月2回医師,PT,およびトレーナーでリハビリテーション加療を当院で行っている.<BR>4.月一回,PTが中心となって円滑な情報交換を行うことを目的に勉強会を行い,多施設(病院およびスポーツ現場を含む)共通の問診表,評価項目,投球復帰プログラムの作成を行っている. <BR>【説明と同意】京都府高校野球地方大会のサポートに関しては,高野連から各チームに事前通達を行った.またわれわれも大会前の抽選会,試合前のコイントス時に部長,主将に説明し,試合前後の検診やコンディショニング指導を行っている.検診事業も,原則希望者のみとし,施行するにあたっては,監督,保護者,選手に十分な説明と同意を得た上で実施している.<BR>【結果】1.京都府高校野球大会のサポートは,春・夏・秋の準々決勝から行った.2009年秋季大会では,登板投手24名中,検診およびコンディショニングを実施したのが14名,アイシングのみ実施が3名であった.<BR>2.検診事業は,昨年投手68名に対し,肘関節の超音波検査および理学検査を行った.その際超音波検査で上腕骨小頭障害の投手は5名であった.同年12月には中学生野球教室の際に287名に対し肘関節の超音波検査,投手57名に理学検査を行った.上腕骨小頭障害の選手は8名であった.いずれの検診の際も,検診結果のフィードバックおよびコンディショニング内容のパンフレットを配布し指導を行った.<BR>3.2008年6月から2009年10月までに当院スポーツリハビリテーションに受診した選手は,小・中学生7名,高校生24名,大学・社会人が24名であった.うち投球障害肘が16名,投球障害肩が31名,その他8名であった.多施設間の情報交換資料として,問診表から評価表を作成した.<BR>【考察】京都府高校野球大会のサポートとしては,抽選会時などにメディカルサポートチームの案内に加え,傷害予防,熱中症対策など講演を行い,啓蒙活動を行った.大会中には,投球直後の身体所見を評価し,コンディショニング指導を行った.コンディショニングに関しては,どこまでわれわれが介入するか,難しい問題であるが,コンディショニングの大切さを啓蒙することが重要と考えている.大会サポートに関しても,選手のみならず,可能な限り指導者とコミュニケーションを図る必要があると考える.<BR>検診事業は,ポータブル超音波機器を使用することで,障害の早期発見,早<BR>期治療が可能であり,フィールドで簡便に行える有用な評価法とされ,われわれも導入した.PT3名1グループによる理学所見検査によって,正確なデータを蓄積し,それを分析することで,根拠ある評価,治療を確立し,障害予防に寄与すると考えた.しかし,検診の開催時期,二次検診などフォローアップに関する問題点も多く,今後の課題である.当院スポーツリハビリテーション受診数は増加傾向にあるが,現状は月2回程度の実施であり,多施設で協力して診療を行う必要であり,施設間における共通の評価,投球障害復帰プログラムの作成の必要性が生じる.これによって,選手の現状把握が容易となり,円滑な情報交換が行なえると考えた.また,診療場面に多くのスタッフが集まることで,実際の評価,診療内容を共有可能であり,選手の問題点についても討論することも可能であった.しかし医師,PTおよびトレーナーの連携は良好だが,指導者や家族とのコミュニケーションは十分とは言えず,今後の課題である.<BR>【理学療法学研究としての意義】われわれの取り組みは,多くの職種との連携を重視したものである.投球障害の治療は原則保存療法であり,PTが担う役割は大きいが,投球障害を有する選手の競技復帰は,医師や現場のトレーナーなど多職種との連携,協力が必要である.本活動は,他府県の活動を参考にしているが,今後このような活動を行う方への参考になれればと考える.