著者
森井 亙 尾上 謙介 中村 佳重郎 大谷 文夫 細 善信 和田 安男
出版者
京都大学防災研究所 / Disaster Prevention Research Institute Kyoto University
雑誌
京都大学防災研究所年報. B (ISSN:0386412X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.B, pp.245-251, 2006-04-01

京都大学防災研究所付属地震予知研究センターの地殻変動観測所のうち近畿地方に分布する3観測所(屯鶴峯・阿武山・天ヶ瀬)で,1989年終盤から1995年初頭にかけて顕著な地殻歪の変動が記録され,その後1995年兵庫県南部地震が発生した。上記3観測所の記録は,何れも1989年終盤から約3年の間南北方向の圧縮が増大したことを示し,その後約2年の間は南北方向の圧縮の増大が沈静化したことを示している。さらに1994年半ばからは,逆に南北方向の伸長が急激に増大したことを示している。この様に圧縮と伸長が入れ替わる変動を震源断層のプレスリップで説明することは困難である。我々は,1989年終盤から始まった地殻歪の変動を紀伊半島下に潜り込むプレートと地殻下部の部分的な固着によって引き起こされた変動と考え,単純なモデル計算を行った結果,観測記録をよく説明できることが分かった。当該の地殻歪変動は,兵庫県南部地震の準備過程を捉えたものではなく,それとは独立に生じた現象であり,むしろ,この急激な地殻歪の変動が兵庫県南部地震を誘発したものであると考えられる。
著者
森井 亙 尾上 謙介 中村 佳重郎 大谷 文夫 細 善信 和田 安男
出版者
京都大学防災研究所 / Disaster Prevention Research Institute Kyoto University
雑誌
京都大学防災研究所年報 = DPRI annuals (ISSN:0386412X)
巻号頁・発行日
no.49, pp.245-251, 2005

京都大学防災研究所付属地震予知研究センターの地殻変動観測所のうち近畿地方に分布する3観測所(屯鶴峯・阿武山・天ヶ瀬)で,1989年終盤から1995年初頭にかけて顕著な地殻歪の変動が記録され,その後1995年兵庫県南部地震が発生した。上記3観測所の記録は,何れも1989年終盤から約3年の間南北方向の圧縮が増大したことを示し,その後約2年の間は南北方向の圧縮の増大が沈静化したことを示している。さらに1994年半ばからは,逆に南北方向の伸長が急激に増大したことを示している。この様に圧縮と伸長が入れ替わる変動を震源断層のプレスリップで説明することは困難である。我々は,1989年終盤から始まった地殻歪の変動を紀伊半島下に潜り込むプレートと地殻下部の部分的な固着によって引き起こされた変動と考え,単純なモデル計算を行った結果,観測記録をよく説明できることが分かった。当該の地殻歪変動は,兵庫県南部地震の準備過程を捉えたものではなく,それとは独立に生じた現象であり,むしろ,この急激な地殻歪の変動が兵庫県南部地震を誘発したものであると考えられる。
著者
土井 浩一郎 塚本 博則 里村 幹夫 中川 一郎 中村 佳重郎 東 敏博
出版者
日本測地学会
雑誌
測地学会誌 (ISSN:00380830)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.59-70, 1988

同じコソクリート台の上に設置された2台のLaCosteamp;&Romberg重力計D-58とG-680を用いて,1984年9月から1985年7月にかけての約11ヵ月間にわたり,重力の潮汐変化の連続観測が静岡において行なわれた. 同一地点に設置されている重力計に与える気温,気圧および海洋潮汐などの擾乱源による:影響はほぼ共通していると考えられるために,2台の重力計によるデータからは,調和解析により,類似の結果が得られるであろうと予想される.しかし,実際には,2台の重力計による約11ヵ月間のデータを用いて求められたδ一ファクターは,LaCoste&Romberg重力計G-680から得られたもののほうがやや大きい値を示し,時間変化の様子もあまり似ていなかった.その原因については,現在のところ,まだ解明されていない. LaCoste&Romberg重力計D-58より得られた同時観、測の約11ヵ月間のデータとその期間を含む約2年間のデータからそれぞれ得られたδ一ファクターを比べてみると,0.1%程度でよく一致しており,ほぼ1年間のデータを用いて解析がなされた場合は,きわめて安定した結果が得られることが確かめられた. 地震予知に対する応用においては,より短い解析期間を用いて,より高い精度の解析結果が得られることが要求される.そこで,解析に用いられるデータ期間の長さと2台の重力計で得られたδ一ファクターの差の関係を調べてみた.その結果,解析期間の長さを30日以上とした場合,比較的安定した結果が得られるものの,その変動はかなり大きいことがわかった.
著者
中川 一郎 中村 佳重郎 田中 寅夫 東 敏博 藤森 邦夫 竹本 修三
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

ジオイドは、地球表面におけるさまざまな測地学的測定の基準面であるばかりでなく、その起伏が地球内部の構造と状態とを反映することから、ジオイドの精密決定は、測地学のみならず、地球物理学においても、きわめて重要で、かつ、基礎的な課題の一つである。本研究は、人工衛星アルチメトリィ・データや海上重力測定データや検潮データに加えて、陸上における重力測定やGPS精密測位および水準測量などのデータを総合し、西南日本におけるジオイドの起伏を精密に決定するとともに、得られたジオイドの起伏と地殻および上部マントルの密度異常との関係を明らかにし、その物理的な意義を解明することを目的として、つぎの研究を実施した。1.西南日本におけるジオイド面の起伏を精密に決定にするためのデータ・ベースとして、重力測定データ、水準測量データ、鉛直線偏差データならびに検潮データなどに加えて、トペックス・ポセイドン衛星のアルチメトリィ・データを収集した。2.近畿地方から九州地方にかけての東西約600kmの範囲内で選定された26地点において、可搬型GPS受信機6台を用いたGPS観測を実施し、これらの地点の楕円体比高を求めるとともに、水準測量によって標高を決定した。その結果、すでに得られている結果とあわせて、西南日本における合計57地点のジオイド比高が決定された。3.鳥取,別府,紀伊半島および西国の各地域におけるGPS観測点において、ラコスト重力計を用いた精密重力測定を実施した。4.気象庁および大学の地震観測データを用いて、西南日本の地震波速度異常の3次元的構造を決定することを試みた。5.ジオイド面ならびに3次元地震波速度構造の空間表示を行なうための面像処理プログラムの開発を行なった。