著者
山本 圭吾 松島 健 吉川 慎 井上 寛之 手操 佳子 園田 忠臣 波岸 彩子 堀田 耕平 市村 美沙 森田 花織 小池 碧 古賀 勇輝 渡邉 早姫 大倉 敬宏
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

平成26年度より開始された「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」における課題「桜島火山におけるマグマ活動発展過程の研究」の一環として,昨年度に引き続き,2017年11月に桜島火山において一等水準測量の繰返し観測を実施した.本講演では,この測量の結果について報告し,2016年11月に実施した前回測量以降の桜島火山の地盤上下変動について議論する. 水準測量を実施した路線は,桜島西部山腹のハルタ山登山路線,北部山腹の北岳路線の2路線である.路線総延長は約24 kmであった.これらの路線を,2017年11月1日~13日の期間において測量に当たった.測量方法は,各水準点間の往復測量で,その往復差は一等水準測量の許容誤差を満たすようにした.近年の水準儀は測量精度も向上しており,これらの器材を用いて注意深く測量を行った結果,測量における誤差は,1 km当りの平均自乗誤差が,ハルタ山登山路線および北岳路線においてともに±0.22 mm/km,水準環閉合差はハルタ山登山路線において時計回りに0.9 mm(許容誤差7.6 mm)となり,高精度の一等水準測量を行うことができた. 桜島西岸の水準点BM.S.17を不動点(基準)とし,各水準点における比高値を,前回の2016年11月に行われた測量結果(山本・他,2017)と比較することで,2016年11月から2017年11月の期間の約1年間における地盤上下変動量を計算した. 計算された地盤上下変動量から,桜島北部付近の水準点において,地盤隆起(最大で4.5 mm)が生じていることが確認された.前々回から前回測量までの2015年8月・9月から2016年11月の期間においては,1年2~3ヶ月間と多少1年間よりも期間が長いものの,北岳路線のこの付近の水準点において15 mm程度の地盤隆起が測定されていた.このことを考えると,2017年11月までの1年間の桜島北部付近の隆起速度は,それ以前の1年間に比べて減少していると考えられる.一方で,桜島中央部付近においては,若干の地盤沈降(最大で-2.6 mm)が認められる. 茂木モデルに基づき,得られた上下変動量データから圧力源の位置を求めた.測量を実施した水準点の空間分布が限られているため試行的な結果であるが,桜島北方の姶良カルデラの地下約10 kmの深さに増圧源が,また南岳地下の浅部に減圧源が推定された.2016年11月~2017年11月の期間,姶良カルデラ地下のマグマ溜まりにおいて引き続きマグマの貯留が進行していることを示していると考えられる.一方で,南岳直下のマグマ溜りにおいては減圧傾向が示唆される.
著者
多田 邦尚 西川 哲也 樽谷 賢治 山本 圭吾 一見 和彦 山口 一岩 本城 凡夫
出版者
日本海洋学会 沿岸海洋研究会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.39-47, 2014 (Released:2020-02-12)
参考文献数
24
被引用文献数
6

瀬戸内海東部海域における過去40年間の海水中の栄養塩濃度減少の検証とその低次生物生産過程への影響について,著者らのグループが得た知見を総合して考察した.瀬戸内海では過去,高度経済成長期には著しく富栄養化が進行していたが,1973年に施行された瀬戸内法により,P の発生負荷量は1980年以降,N は1990年後半以降削減された.しかし,播磨灘東部海域の海水中のTN,TP 濃度には直接反映されていない.一方,栄養塩濃度は1970年以降確実に低下しており,特にDIN 濃度は1990年以降も減少傾向にある.これは,主には瀬戸内法の効果と考えられるが,それだけでは説明できない.おそらく,海底堆積物からの栄養塩の溶出量の減少が大きく関与している可能性が考えられた.この栄養塩濃度減少に対する植物プランクトン群集の応答については,その生物量の低下傾向は認められないが,その種組成の変化が認められた.
著者
山本 圭吾 及川 寛
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.83, no.4, pp.589-598, 2017 (Released:2017-08-07)
参考文献数
30
被引用文献数
7

2013-2015年に麻痺性貝毒原因種の出現とアカガイ,トリガイの毒量,毒成分変化を調査した。確認有毒種はAlexandrium tamarenseとA. catenellaで,主毒化原因種は前者であった。アカガイは毒化,減毒が遅く通年毒が検出されたのに対し,トリガイは,原因種終息後は毒が検出されなくなった。毒成分は前者が強毒のGTX2, 3主体で,後半STXが増加した一方,後者はC1, C2主体であった。両種とも原因種増殖期にGTX1, 4が増加したが,トリガイでは毒が速やかに排出されたと推察された。
著者
山本 圭吾 園田 忠臣 高山 鐵朗 市川 信夫 大倉 敬宏 吉川 慎 井上 寛之 松島 健 内田 和也 中元 真美
出版者
The Volcanological Society of Japan
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.137-151, 2013-03-29 (Released:2017-03-20)
参考文献数
14

桜島火山の活動に伴う最近の桜島および姶良カルデラ周辺域における地盤上下変動が,2007年10月-12月,2009年11月,2010年4月および11月と行われた精密水準測量の繰返し観測によって明らかとなった.姶良カルデラ周辺の地盤は,1996年から2010年までの期間において,それ以前の1991年から1996年までの期間に得られていた結果と同様に,カルデラ内部を中心として隆起したことが確認された.球状圧力源(茂木)モデルに基づく解析を行った結果,1996年-2010年の期間において,姶良カルデラ中央部地下の深さ8.8km-10.8kmに増圧源の存在が推定された.この期間,姶良カルデラ地下に推定されるマグマ溜りにおいてマグマの貯留が進行したものと考えられる.2007年-2009年の期間においては,桜島北部地下の深さ4.3kmに増圧源の存在が推定された.このことは,姶良カルデラの深さ10kmから桜島の浅部方向へのマグマの移動が生じた可能性を示唆するが,そのマグマの移動量は小さい.姶良カルデラ地下におけるマグマの貯留は,桜島火山の山頂噴火活動が静穏化した1991年頃から継続している.2009年以降,昭和火口における噴火活動が活発化する傾向にあるが,観測された地盤隆起の継続は,噴火活動が活発化しつつある2010年11月の時点においても姶良カルデラ地下においてマグマの供給量が放出量を上まっていることを示唆している.計算された増圧源において見積もられた容積増加量および観測降下火山灰量に基づき見積もられたマグマの放出量を考慮すると,1991年から2010年までの期間において姶良カルデラの地下に約1.2×108m3のマグマが新たに蓄積されたことが推定される.また,マグマの蓄積に伴う桜島北部付近の2010年11月の時点における地盤隆起量は,1970年代および1980年代の活発な山頂噴火活動が開始した1973年頃の状態を回復し更に隆起が継続した状態となっている.これらの結果は,桜島火山の次の大規模噴火活動についての潜在的なポテンシャルを示唆するものと考えられる.
著者
木股 文昭 石原 和弘 植木 貞人 内田 和也 小山 悦郎 佐藤 峰司 鈴木 敦生 高山 鐵朗 竹田 豊太郎 辻 浩 寺田 暁彦 中坊 真 浜ロ 博之 平野 舟一郎 松島 健 宮島 力雄 森 済 八木原 寛 山本 圭吾 渡辺 秀文
出版者
京都大学防災研究所
雑誌
京都大学防災研究所年報 (ISSN:0386412X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.35-43, 1999-04

1998年以降, 火山活動が活発化している岩手山火山において, 火山活動に伴う地殻上下変動とその圧力源を議論する目的で, 水準路線を設置し, 1998年7, 9, 11月に精密水準測量を実施した。1998年9月3日, 水準測量実施中に, 直下でM6.1の地震が発生し, 20cmに達する断層運動を水準測量で検出した。岩手山南麓ではこの4ヶ, 月間に4cmに達する山側隆起の上下変動が観測され, その圧力源は岩手山西方に深さ3km前後と推定される。Earthquake swarm is observed around the Iwate-san Volcano, Northeast Japan since 1998. The leveling route with distance of 36 km was set up around the volcano and the precise levelings have been repeated to discuss the crustal deformation four times in July, September, September and November in 1998. When the precise levelingis doing in September 3, 1998, earthquake of M6. 1 was occurred close to the volcano. One leveling team was making leveling in the epicenter area, Re-levelings were repeated since the next day of the earthquake, and coseisimic deformations of 20 cm are detected along the leveling route. However the precursor of the vertical movements is not recognized in the leveling data made just before the earthquake. Uplift of the Iwate-san Volcano is observed and which amounts to 4 cm in the period of July to November in 1998. The pressure sources of the vertical deformations are estimated to be under the west side of the volcano with depth of 3 kim, which is the almost the same location of the pressure estimated by GPS measurements and the DInSAR (Differential Interferometric SAR).
著者
西岡 智哉 池脇 義弘 秋山 諭 山本 圭吾 田中 咲絵 宮原 一隆 原田 和弘 山下 泰司 濱﨑 正明 長谷川 尋士 本田 恵二
出版者
日本プランクトン学会
雑誌
日本プランクトン学会報 (ISSN:03878961)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.36-43, 2018-08-25 (Released:2018-10-26)
参考文献数
19

A widespread bloom of the harmful raphidophyte Chattonella ovata Y. Hara & Chihara occurred for the first time in the east Seto Inland Sea in the summer of 2016. From July 11 to 17, cell densities in Hiuchi-Nada and Bisan-Seto reached 10 cells mL-1. From July 19 to 24, the highly dense distribution area expanded to Harima-Nada, and cell densities reached their peak (max. 222 cells mL-1) in all areas affected from July 25 to 31. In Harima-Nada, the species decreased rapidly, whereas the level at Hiuchi-Nada and Bisan-Seto was maintained until August. From July 11 to 18, a westerly wind had prevailed in the Takamatsu area facing Bisan-Seto while the wind was weak during other periods. That caused eastward wind-induced passage flow, and expansion of the cell distribution from Bisan-Seto to Harima-Nada. In addition, the sunlight hours were long (average 8.6 h) and the water temperature was high (approximately 25 to 29˚C).Furthermore, salinity remained at around optimum for C. ovata (approximately 28 to 31) in the east Seto Inland Sea while the species bloomed. This indicates that these environmental conditions were suitable for growth of this species, which is adapted to strong irradiance, high water temperature and high salinity. In Bisan-Seto and Hiuchi-Nada, Chattonella marina and Chattonella antiqua appeared at high cell densities in mid-July when the distribution of C. ovata expanded. However, in Harima-Nada, C. marina and C. antiqua maintained low cell densities consistently. In Harima-Nada, DIN (dissolved inorganic nitrogen) and DIP (dissolved inorganic phosphorus) remained at 0.51–1.17 µM and 0.08–0.25 µM, respectively, from July 4 to August 15. The minimum cell quotas of nitrogen for C. ovata are lower than for C. antiqua. We presumed this gave a competitive advantage to C. ovata for growth. In Harima-Nada, cell density of diatoms decreased temporarily in late-July, but the density remained above 100 cells mL-1 after August. However, in Hiuchi-Nada and Bisan-Seto, cell densities of diatoms were kept below 100 cells mL-1 through the observation period. We inferred that a low concentration of nutrients, less westerly wind, and a high density of diatoms were factors that led to the regulation of the low level of C. ovata after August in Harima-Nada. We considered that the low diatom density was one of the causes of the C. ovata bloom being prolonged in Hiuchi-Nada and Bisan-Seto.
著者
風間 卓仁 栗原 剛志 山本 圭吾 井口 正人 福田 洋一
出版者
特定非営利活動法人日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.593-604, 2016-12-31 (Released:2017-01-13)
参考文献数
24

Continuous time variations in relative gravity and tilt were observed by a CG-3 M relative gravimeter at Arimura, Sakurajima Volcano (Southern Japan) during the rapid inflation event on August 15, 2015. The gravity/tilt signals were retrieved from the original data by correcting several disturbances such as instrumental drift and tidal effect. The retrieved gravity change is -5.86±0.27μGal;its amplitude is smaller than the typical uncertainty of relative gravimeters (∼10μGal), but the continuous measurement of relative gravity in a one-minute interval contributed to the detection of the small gravity change in the case of Sakurajima Volcano. The tilt change of 55.9μrad is also retrieved from the CG-3 M’s tilt data. The success in detection of the tilt change shows that the gravimeters can be utilized as portable tiltmeters as long as significant tilt variations are expected at volcanic areas. The observed gravity change is consistent with one of the dike intrusion models provided by Geospatial Information Authority of Japan, if the density value in the dike of 0.98±0.37g/cm3 is assumed.
著者
宮町 宏樹 泊 知里 八木原 寛 井口 正人 為栗 健 山本 圭吾 大倉 敬宏 安藤 隆志 尾西 恭亮 清水 洋 山下 裕亮 中道 治久 山脇 輝夫 及川 純 植木 貞人 筒井 智樹 森 済 西田 誠 平松 秀行 小枝 智幸 増田 与志郎 加藤 幸司 畠山 謙吾 小林 哲夫
出版者
特定非営利活動法人日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.227-237, 2013-03-29

2008年に実施された屈折法地震探査によって得られたP波初動走時により,姶良カルデラおよび桜島火山の深さ3kmまでの速度構造を推定した.本研究地域の基盤層である四万十層群は4.6-5.0km/sのP波速度を持ち,姶良カルデラの中央部に向け傾斜している.姶良カルデラの中央部には,4.2-4.4km/sの低速度域が深さ1.5-3kmに存在している.そして,この低速度域はカルデラ下に存在する深部マグマ溜まりからのマグマ供給系が活発であることを示唆している.また,基盤層は鹿児島地溝帯の北西域の境界に沿って深さ1kmから2.5kmに急激に落ち込んでいることがわかった.桜島火山の速度構造は3.6-3.7km/sの領域が存在することで特徴づけられる.桜島火山の山頂直下で発生している火山性地震の震源域と速度構造の比較から,地下構造が種々の火山性地震の震源域の広がりに強い影響を与えていることを示した.
著者
鍵山 恒臣 筒井 智樹 三ヶ田 均 森田 裕一 松島 健 井口 正人 及川 純 山岡 耕春 熊谷 博之 西村 裕一 宮町 宏樹 渡辺 了 西村 太志 高木 朗充 山本 圭吾 浜口 博之 岡田 弘 前川 徳光 大島 弘光 植木 貞人 橋本 恵一 仁田 交一 茂原 諭 中道 治久 汐見 勝彦 中原 恒 青木 重樹 青地 秀雄 井田 喜明
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大学地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2/4, pp.33-60, 1996-03-15

In recent years, investigations on the structures of volcanoes have been noteworthy for further understanding volcanic processes, including locations of magma reservoirs, magma rising process before eruptions and causes of related phenomena. In 1994, a joint experiment was conducted on Kirishima Volcanoes, Southern Kyushu, to reveal the structure and the magma supply system by a group of scientists from national universities under the National Research Project for the Prediction of Volcanic Eruptions. The experiment was carried out by seismological, electromagnetic and other geophysical methods. The following seven papers including this one present some results of the experiments. This paper outlines a seismic explosion experiment in Kirishima, and presents all data on the first motion. An extensive explosion seismic experiment was conducted on December 1, 1994. Observations were made along a 30-km major line lying in the NNW-SSE direction and other sub-lines which cross the major line in and around the Kirishima Volcanoes. Along these lines, 6 shots with a charge size of 200-250 kg, and 163 temporary observations were arranged by many universities and institutes. A newly developed data logger was used for these temporal observations, and the position of each site was determined by GPS. All 6 shots were successfully fired, and clear onset and significant phases were observed at most observation sites. A travel time diagram suggests that a high velocity layer crops out south of the Kirishima Volcanoes, while in the Kirishima Volcanoes, this layer is covered with a lower velocity layer, which is thick at the northern part. It is also suggested that a structural discontinuity exists between S3 and S4.
著者
及川 純 山本 圭吾 井田 喜明
出版者
東京大学
雑誌
東京大學地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.291-307, 1994
被引用文献数
4

霧島火山周辺で発生する地震波形を用いて,地下の地震波減衰領域を推定した.地震波の減衰の強弱を分類し,それらの波線分布を調べることにより,韓国岳周辺の深さ4,5kmより韓国岳火口直下にいたる地震波減衰領域の存在がわかった.The seismograms of 51 earthquakes around the Kirishima volcanoes are classified according to degree of attenuation of the waveform. The paths of seismic rays are assumed to be straight lines from the hypocenters to the seismic stations and the region which the rays of attenuated seismic waves mainly crossed, which correspond to the high attenuation region, is found from the distribution of seismic rays. As a result, the high attenuation region from the depth of 4-5 km to the surface beneath Karakuni- Dake is shown.