著者
荒井 朋子 川勝 康弘 中村 圭子 小松 睦美 千秋 博紀 和田 浩二 亀田 真吾 大野 宗佑 石橋 高 石丸 亮 中宮 賢樹 春日 敏測 大塚 勝仁 中村 智樹 中藤 亜衣子 中村 良介 伊藤 孝士 渡部 潤一 小林 正規
出版者
日本惑星科学会
雑誌
日本惑星科学会誌遊星人 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.239-246, 2012
参考文献数
54

地球近傍小惑星(3200)Phaethonは,ふたご座流星群の母天体であるが,彗星活動は乏しく,彗星と小惑星の中間的特徴を持つ活動的小惑星(あるいは枯渇彗星)と考えられている.また,ふたご座流星群のスペクトル観測から報告されているナトリウムの枯渇及び不均質は,太陽加熱の影響よりも局所的部分溶融を経た母天体の組成不均質を反映している可能性が高い.部分溶融の痕跡を残す原始的分化隕石中に見られる薄片規模(mm-cmスケール)でのナトリウム不均質は,上記の可能性を支持する.従って, Phaethonでは局所的な加熱溶融・分別を経験した物質と,始原的な彗星物質が共存することが期待される. Phaethonは,太陽系固体天体形成の最初期プロセスを解明するための貴重な探査標的である.また,天文学,天体力学,小惑星・彗星科学,隕石学,実験岩石学などの惑星科学の多分野に横断的な本質的課題解明の鍵を握る理想的な天体である.本稿では,小惑星Phaethon及び関連小惑星の科学的意義と探査提案について述べる.
著者
中村 圭子
出版者
神戸大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

本研究において新たに改良した有機物その場観察法及び非汚染試料作成法により,Tagish Lake隕石中には空洞コアとマントルから成る構造を持つ微粒子が多数存在することが判った。さらに,この粒子を多量に含む切片のラマン及び顕微赤外分光測定を行った。これらの測定の結果,粒子は主にアモルファス炭素とC=O,C-H結合から成る脂肪族カルボン系有機物及び芳香族有機物から成ることが判った。このような有機粒子は,本研究で行った電子顕微鏡その場観察により隕石中で初めて発見されたが,これまで生物学者らが行ってきた有機物のmembrane実験生成物と酷似した形状・組成を呈している。以上のように,本研究では「隕石中有機物の直接観察の成功及びその成因の解明」という大きな成果がもたらされた。研究成果は'Hollow organic globules in the Tagish Lake Meteorite as possible products of primitive organic reactions'と題して、学術雑誌International Journal of Astrobiology(2002) 1., p179-189に掲載された。研究論文発表に伴い、本雑誌出版社のCambridge Pressおよび研究活動のために渡航していたアメリカ航空宇宙局においてプレスリリースが行われ、各メディアによって高い関心をもって受け入れられた。●アメリカCNNテレビ・アメリカCBSテレビ・インタビュー●ワシントンポスト誌・サイエンス欄掲載●ロシア国営新聞イズベスチヤ・サイエンス欄掲載●ドイツ・アストロバイオロジーNow,惑星科学協会・ニュース速報掲載●ニューサイエンティスト誌・ニューサイエンス欄掲載●Yahoo!ニュース・Space.com等 インターネットニュース等掲載