著者
唐牛 譲 石橋 之宏 上椙 真之 矢田 達 中藤 亜衣子 熊谷 和也 岡田 達明 安部 正真
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
地球化学 (ISSN:03864073)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.211-220, 2014-12-25 (Released:2015-01-06)
参考文献数
17
被引用文献数
1

The Extraterrestrial Sample Curation Center of JAXA curates the Hayabusa-returned samples in conditions of minimum terrestrial contaminants, because these samples are very tiny. We evaluated the cleanliness of the handling instruments, the cleanroom environments and the sample storage chamber to improve the cleanliness of particles, organic molecules and metallic elements to a level not to affect the analyses of the Hayabusa-returned samples. In the environment of the clean chamber No. 2 where the samples have been stored, the organic molecule abundance was lower than the detection limit, furthermore, metallic elemental concentrations were the lowest among other evaluated place. A multi-stage ultrasonic cleaning by organic solvents and the ultrapure water have been applied to instruments made of stainless steel and/or aluminum alloy, and additionally, acid-alkali liquids cleaning have been performed for those made of quartz glasses. For the cleanliness of quartz glasses after the cleaning, the organic molecules abundances were blank level, and the metallic element concentrations were 1~100×109atom/cm2/24 h. It was confirmed by optical microscope that no particle of size more than 10 μm was observed on quartz glasses after the cleaning.
著者
荒井 朋子 川勝 康弘 中村 圭子 小松 睦美 千秋 博紀 和田 浩二 亀田 真吾 大野 宗佑 石橋 高 石丸 亮 中宮 賢樹 春日 敏測 大塚 勝仁 中村 智樹 中藤 亜衣子 中村 良介 伊藤 孝士 渡部 潤一 小林 正規
出版者
日本惑星科学会
雑誌
日本惑星科学会誌遊星人 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.239-246, 2012
参考文献数
54

地球近傍小惑星(3200)Phaethonは,ふたご座流星群の母天体であるが,彗星活動は乏しく,彗星と小惑星の中間的特徴を持つ活動的小惑星(あるいは枯渇彗星)と考えられている.また,ふたご座流星群のスペクトル観測から報告されているナトリウムの枯渇及び不均質は,太陽加熱の影響よりも局所的部分溶融を経た母天体の組成不均質を反映している可能性が高い.部分溶融の痕跡を残す原始的分化隕石中に見られる薄片規模(mm-cmスケール)でのナトリウム不均質は,上記の可能性を支持する.従って, Phaethonでは局所的な加熱溶融・分別を経験した物質と,始原的な彗星物質が共存することが期待される. Phaethonは,太陽系固体天体形成の最初期プロセスを解明するための貴重な探査標的である.また,天文学,天体力学,小惑星・彗星科学,隕石学,実験岩石学などの惑星科学の多分野に横断的な本質的課題解明の鍵を握る理想的な天体である.本稿では,小惑星Phaethon及び関連小惑星の科学的意義と探査提案について述べる.
著者
中藤 亜衣子
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

【プロセス3:小惑星の熱変成】1・2年目の研究により,40個のCMコンドライト隕石から,20個の加熱脱水を経験した試料を同定した.これらの試料に対して,微細組織観察,微量元素定量分析,極微細組織観察・極微小領域の化学組成定性分析を行い,岩石学的にCMコンドライト隕石として分類できる8個の試料について更に詳細研究を行った.特に熱に敏感な層状珪酸塩鉱物の観察と,主要構成鉱物組み合わせに基づいて,これら8個の隕石の熱変成の程度と推定経験温度領域を以下のように分類することができた.《強い加熱(750-1000度),中程度の加熱(500-600度),弱い加熱(300-500度)》強い加熱を経験したグループの隕石は,層状珪酸塩鉱物の化学組成,全岩の酸素同位体組成が,弱い加熱を受けた隕石とは大きく異なっていた.この結果は,強い加熱グループに属する試料が,母天体上で水質変質を経験した際,その水溶液の化学組成がCMコンドライト隕石母天体とは異なっていたことを示唆している.また,これらの試料に関しては,マトリクス中に部分溶融したトロイライトと非溶融トロイライトが点在している組織が観察されている.この観察結果は,これらの隕石の最高到達温度が,試料内で不均一であった証拠である.加えて,珪酸塩鉱物に弱い衝撃組織が認められることから,強い加熱グループの熱源として,世界で初めて「衝撃加熱」であると特定することができた.また,韓国極地研究所にて,全岩の酸素同位体組成分析のシステム改良にも引き続き取り組んだ.このシステムを使用した結果に基づくと,弱い加熱を経験したグループ属する2つの隕石について,非常に興味深い結果が得られた.そのデータによると,これまで推測されてきた太陽系始原水の組成に,大きなばらつきがある可能性が示唆される.これは,始原的小惑星の進化のみならず,太陽系の進化にも直結する非常に大きな意味を持つ.この結果は,2011年8月にイギリスで開催された,国際隕石学会で発表するとともに,現在論文を準備中である.【プロセス1:惑星の形成】2年目に引き続き,探査機はやぶさの回収した小惑星イトカワの表面試料の初期分析を行った.この結果は,2011年3月の国際月惑星科学会議,2012年8月の国際隕石学会,科学雑誌サイエンスで報告された.この分析の結果,これまで広く研究されてきた隕石が,確かに小惑星から飛来したものであると初めて確認された.また,地球に飛来する最も一般的な隕石である普通コンドライトと,その母天体であるS型小惑星の表面の反射スペクトルの違いは,試料表面に宇宙線照射による宇宙風化が生じるためであるとした従来の定説が,正しいものであったと確かに立証することに成功した.これは隕石研究にとって歴史的な成果である.