著者
森 治 佐伯 孝尚 白澤 洋次 加藤 秀樹 船瀬 龍 大野 剛 松本 純 中条 俊大 菊地 翔太 寺元 祐貴 矢野 創 中村 良介 松浦 周二 川口 淳一郎
出版者
一般社団法人日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会誌 (ISSN:00214663)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.117-122, 2015-04-05

ソーラー電力セイルはソーラーセイルにより燃料を節約できるだけでなく,太陽から遠く離れた場所でも,大面積の薄膜太陽電池を利用して探査機に十分な電力を確保できる.ソーラー電力セイルで得た電力を用いて,高性能なイオンエンジンを駆動すれば,ソーラーセイルと合わせたハイブリッドな推進が可能となる.JAXA ではこのコンセプトを踏まえ,ソーラー電力セイルによる外惑星領域探査計画を提案している.本計画では,日本独自の外惑星領域探査技術を確立し,日本が太陽系探査を先導すること,および,新しい科学分野であるスペース天文学等を切り拓くことを目指している.本稿では,本計画について紹介し,初期検討結果を示す.
著者
橘 省吾 浦川 聖太郎 吉川 真 中村 良介 石黒 正晃
出版者
日本惑星科学会
雑誌
日本惑星科学会誌遊星人 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.4-13, 2013-03-25 (Released:2017-08-25)
参考文献数
30
被引用文献数
1

地球外始原物質(より古い情報を記憶する物質)の科学は私たちの太陽系の歴史を銀河の歴史と実証的につなげる唯一の手段である.「はやぶさ」「はやぶさ2」の探査天体よりさらに始原的な情報が残されている可能性が高く,また来る10年に往復探査が可能な天体である107P/Wilson-Harrington(彗星/小惑星遷移天体)へのサンプルリターン探査を提案する.本探査計画は惑星物質科学の進展のみならず,太陽系初期につくられる揮発性物質を多く含む小天体の物理的特性を明らかにできる探査であり,惑星形成論においても大きな貢献をなすものである.
著者
野口 高明 平田 成 土山 明 出村 裕英 中村 良介 宮本 英明 矢野 創 中村 智樹 齋藤 潤 佐々木 晶 橋本 樹明 久保田 孝 石黒 正晃 ゾレンスキー マイケル・E
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.12-22, 2010-03-25

はやぶさ探査機による小惑星イトカワ表面の画像から小惑星表面の巨礫の組織観察を行うことができた.イトカワ表面の巨礫は,大まかにいって不均質な破壊強度を持つものと,均質な破壊強度をもつものに分けられる.前者は角礫岩と考えても矛盾はない.一方,後者の組織は一般的なLLコンドライトには見られない.衝撃によってかなり溶融した普通コンドライト隕石は,そうでないものよりも均質でより高い破壊強度を持つことを考慮すると,後者の巨礫はそのような隕石と類似の岩質をもつかもしれない.これらの巨礫はイトカワの祖先天体で形成されたと考えられる.高解像度画像は小惑星の地史を検討する手段として非常に有効である.
著者
中村 良介 山本 聡 松永 恒雄 小川 佳子 横田 康宏 石原 吉明 廣井 孝弘
出版者
日本惑星科学会
雑誌
日本惑星科学会誌遊星人 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.15-24, 2014

我々は月探査機「かぐや」に搭載されたスペクトルプロファイラ(SP)データの全量解析を行い,月表面に露出しているカンラン石・低カルシウム輝石に富む岩相の全球分布を調べた.その結果,(1)カンラン石はモスクワの海・危難の海といった地殻が薄く比較的小さい衝突盆地周辺に(2)低カルシウム輝石は月の三大衝突盆地,すなわち南極=エイトケン盆地・雨の海・プロセラルム盆地の周囲に,それぞれ局在することが明らかとなった.表層の斜長岩地殻が完全に吹き飛ばされた衝突盆地の内部では,その下にあるマントルが大規模に溶融して「マグマの海」が形成される.原始地球への巨大衝突によって形成された月は,当初数百km以上の厚さのマグマオーシャン(マグマの大洋)によって覆われていた.「マグマの海」は,このマグマオーシャンのミニチュアであり,SPが捉えたカンラン石・低カルシウム輝石の分布は,その分別結晶化過程を反映していると考えられる.今後「かぐや」分光データの詳細な解析をすすめ,「マグマの海」の組成およびその分化過程を読み解いていけば,同じ手法を用いてマグマオーシャンの分化過程や月の内部構造・バルク組成にも強い制約を加えることができるだろう.同様に月の「マグマの海」の研究は,ほぼ同規模の小惑星ベスタ上のマグマオーシャンや,月よりもさらに規模の大きい地球のマグマオーシャンの分化過程についても,新たな知見をもたらすことが期待される.
著者
荒井 朋子 川勝 康弘 中村 圭子 小松 睦美 千秋 博紀 和田 浩二 亀田 真吾 大野 宗佑 石橋 高 石丸 亮 中宮 賢樹 春日 敏測 大塚 勝仁 中村 智樹 中藤 亜衣子 中村 良介 伊藤 孝士 渡部 潤一 小林 正規
出版者
日本惑星科学会
雑誌
日本惑星科学会誌遊星人 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.239-246, 2012
参考文献数
54

地球近傍小惑星(3200)Phaethonは,ふたご座流星群の母天体であるが,彗星活動は乏しく,彗星と小惑星の中間的特徴を持つ活動的小惑星(あるいは枯渇彗星)と考えられている.また,ふたご座流星群のスペクトル観測から報告されているナトリウムの枯渇及び不均質は,太陽加熱の影響よりも局所的部分溶融を経た母天体の組成不均質を反映している可能性が高い.部分溶融の痕跡を残す原始的分化隕石中に見られる薄片規模(mm-cmスケール)でのナトリウム不均質は,上記の可能性を支持する.従って, Phaethonでは局所的な加熱溶融・分別を経験した物質と,始原的な彗星物質が共存することが期待される. Phaethonは,太陽系固体天体形成の最初期プロセスを解明するための貴重な探査標的である.また,天文学,天体力学,小惑星・彗星科学,隕石学,実験岩石学などの惑星科学の多分野に横断的な本質的課題解明の鍵を握る理想的な天体である.本稿では,小惑星Phaethon及び関連小惑星の科学的意義と探査提案について述べる.
著者
大竹 真紀子 廣井 孝弘 中村 良介 武田 弘 荒井 朋子 横田 康弘 春山 純一 諸田 智克 松永 恒雄 宮本 英昭 本田 親寿 小川 佳子 平田 成
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.23, 2009

マルチバンドイメージャは月周回衛星かぐや観測機器の1つであり、高度100kmの軌道から可視・近赤外波長域、合計9バンドの月面分光画像を取得する。本研究では、MIの高い月面空間分解能とS/Nを生かして月上部地殻の組成を推定した。解析対象として、月全球のクレータ約70個を直径や年代等の条件により選定・解析し、詳細な鉱物含有量比推定を行った。結果、最終選別した約30箇所のうち高地地域の直径30km以上の全クレータ(20箇所)で、極端に斜長石に富んだ(斜長石含有量が98vol.%程度以上の)岩層の分布が観測された。また、これら岩層は深さ4から30kmに分布する。月高地地域の上部地殻は、この極端に斜長石に富んだ層で構成されると考えられ、このような組成の地殻を形成するために非常に効率的なマグマからの斜長石結晶の分離プロセスが必要となることを示唆している。
著者
川嶋 一誠 中村 良介
出版者
一般社団法人 日本リモートセンシング学会
雑誌
日本リモートセンシング学会誌 (ISSN:02897911)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.131-136, 2018-04-20 (Released:2018-10-28)
参考文献数
11

This paper presents a super resolution (SR) method for satellite imagery based on deep learning. From this preliminary study, we found that the performance of SR strongly depends on the variety of the training data set. A new strategy that combines SR and selection is proposed to improve the accuracy and flexibility of the method.
著者
中村 良介 山本 聡 松永 恒雄 小川 佳子 横田 康宏 石原 吉明 廣井 孝弘
出版者
日本惑星科学会
雑誌
日本惑星科学会誌遊星人 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.15-24, 2014-03-25 (Released:2017-08-25)

我々は月探査機「かぐや」に搭載されたスペクトルプロファイラ(SP)データの全量解析を行い,月表面に露出しているカンラン石・低カルシウム輝石に富む岩相の全球分布を調べた.その結果,(1)カンラン石はモスクワの海・危難の海といった地殻が薄く比較的小さい衝突盆地周辺に(2)低カルシウム輝石は月の三大衝突盆地,すなわち南極=エイトケン盆地・雨の海・プロセラルム盆地の周囲に,それぞれ局在することが明らかとなった.表層の斜長岩地殻が完全に吹き飛ばされた衝突盆地の内部では,その下にあるマントルが大規模に溶融して「マグマの海」が形成される.原始地球への巨大衝突によって形成された月は,当初数百km以上の厚さのマグマオーシャン(マグマの大洋)によって覆われていた.「マグマの海」は,このマグマオーシャンのミニチュアであり,SPが捉えたカンラン石・低カルシウム輝石の分布は,その分別結晶化過程を反映していると考えられる.今後「かぐや」分光データの詳細な解析をすすめ,「マグマの海」の組成およびその分化過程を読み解いていけば,同じ手法を用いてマグマオーシャンの分化過程や月の内部構造・バルク組成にも強い制約を加えることができるだろう.同様に月の「マグマの海」の研究は,ほぼ同規模の小惑星ベスタ上のマグマオーシャンや,月よりもさらに規模の大きい地球のマグマオーシャンの分化過程についても,新たな知見をもたらすことが期待される.
著者
橘 省吾 浦川 聖太郎 吉川 真 中村 良介 石黒 正晃
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.4-13, 2013-03-25

地球外始原物質(より古い情報を記憶する物質)の科学は私たちの太陽系の歴史を銀河の歴史と実証的につなげる唯一の手段である.「はやぶさ」「はやぶさ2」の探査天体よりさらに始原的な情報が残されている可能性が高く,また来る10年に往復探査が可能な天体である107P/Wilson-Harrington(彗星/小惑星遷移天体)へのサンプルリターン探査を提案する.本探査計画は惑星物質科学の進展のみならず,太陽系初期につくられる揮発性物質を多く含む小天体の物理的特性を明らかにできる探査であり,惑星形成論においても大きな貢献をなすものである.
著者
高木 靖彦 平田 成 橘 省吾 中村 良介 吉川 真 はやぶさ2プリプロジェクトチーム
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.48-55, 2010-03-25
被引用文献数
1

「はやぶさ」に続く小惑星探査計画「はやぶさ2」が最初に提案されてからの約4年間の経緯と,計画の概要をまとめた.その中で,ミッションの目標と,それに基づき選定された搭載機器の仕様についても簡単に述べる.
著者
川辺 良平 河野 孝太郎 北村 良実 鷹野 敏明 井田 茂 中村 良介 阪本 成一 石黒 正人
出版者
国立天文台
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
1999

星と惑星系の形成の問題は、現代天文学の重要課題である。ミリ波干渉計による観測の進展で、太陽系外の惑星系の形成現場を直接観測が可能となった。これにより、観測と理論との直接比較から、惑星系形成論の構築が可能になった。一方、太陽系外の惑星系が発見され、その惑星系の多様性が明らかになってきた。これにより、太陽系が普遍的な存在なのか、その多様性をコントロールする物理は何かなど新たな問題が提起されている。ここでは、新たにサブミリ波の領域で、サブミリ波の特徴を生かし、星形成に伴う原始惑星系円盤の形成や、その構造(円盤の初期条件)を干渉計観測で詳細にしらべ、惑星系形成のシナリオを構築することを目指した。また、観測的研究で、円盤の形成・進化、巨大惑星の形成に制限を与えるガス成分の消失時期、固体惑星の形成の形成に制限を与えるダスト成分の消失時期を抑え、理論と比較することにより惑星系形成のシナリオ構築を目指した。また、惑星系の多様性を説明する独自のパラダイムを提案し、観測との比較を行うことや理論的な実証を行った。既存の野辺山ミリ波干渉計を用いてサブミリ波干渉計を目指し、干渉計実験に成功した。本格観測までは実現できなかったが、南半球領域で世界初の10mサブミリ波望遠鏡の実現へと結びついた。一方、波長1300ミクロン等での牡牛座の天体の干渉計観測により、原始星としては初めてガス円盤が存在する証拠を捕らえ、また円盤の進化する様子、降着円盤としての膨張を捕らえることに成功するなど、円盤の形成・進化の様子を世界で初めて捕らえた。また、惑星系円盤(初期条件)の多様性を観測的に捕らえた。理論的には、独自のパラダイムの理論シミュレーションによる実証ができた。また観測的に発見された系外惑星系が、このパラダイムで説明可能であることを明らかにすることができた。ダストとガスの消失時期について、理論的には推定できた。ガスの消失時間を、観測的には抑えるために、チリに設置した10mサブミリ波望遠鏡による観測を今後実行する予定である。これらにより、惑星系形成論の構築に大きく前進した。