著者
若松 小百合 中村 美里 松代 真琳 角川 雅俊 嶋本 良則 遠藤 大二 郡山 尚紀
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.71-80, 2020-06-23 (Released:2020-08-24)
参考文献数
16

海棲哺乳類の排泄物は海洋環境において重要な栄養源となっているが,飼育下の海棲哺乳類はその水質によって健康を損なう可能性がある。本研究ではその水質に着目し,細菌の群集解析を行うことで,それぞれの動物種の飼育水の細菌学的特徴を明らかにすると共に感染症を引き起こす原因菌のスクリーニングを行うことを目的とした。おたる水族館で飼育されている鰭脚類と鯨類を含む計10の飼育水と元の海水について次世代シークエンサにて細菌の塩基配列を調べ,細菌の群集解析を行った。その結果,飼育水の特徴としては,Proteobacteria,Bacteroidetes,Firmicutesが元海水と共通して見られたが,FusobacteriaおよびOD1・GNO2といった培養不能細菌門は飼育水に特徴的であった。各動物の飼育水細菌叢は鯨類や鰭脚類においてそれぞれ特徴的であったが,鰭脚類においてワモンアザラシは他との類似性が低かった。飼育水には環境中に存在する日和見菌がわずかに見つかったが,伝染性細菌やその他公衆衛生上特に注意すべき細菌は認められなかった。今後,他の水族館の飼育水についても調べることで,より理想的な海棲哺乳類の飼育環境づくりに繋がることが期待される。
著者
中村 美里
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.283-283, 2017-06-01 (Released:2017-06-01)

日々図書館サービスに携わっていると,時々思いもかけず遠く海外から所蔵資料についての問い合わせが届くことがあり,一瞬驚かされることがあります。あるいは,目録も公開されていない特殊文庫資料についての照会が外国の図書館から届き,その探索に四苦八苦するということもありました。そして,そのようなことがあると,海外では日本に関する様々な研究が行われていて,多種多様な資料が求められているのだなと,当たり前のことを痛感させられます。(日本の研究者や学生が,いろいろな国で刊行された資料を求めて図書館に相談に来ることを考えると,それは当たり前のことではありますが。)一方で,海外で日本研究を志す研究者は減少傾向にある,日本と比べ中国や韓国の資料(電子コンテンツ)は入手しやすい(=日本資料は入手しづらい)といった話を聞くことも最近は多くなりました。ただ,そういった危機感を感じつつも,問題が大きなものであるだけに具体的な対応策や改善方法については茫洋としていると感じている人も多いのではないでしょうか。そこで,海外における日本研究の最新動向を中心として,海外の日本研究あるいは日本研究支援に様々な立場で携わっている方の“いま”を捉えることにより,日本研究に従事する人への支援の在り方を考えられる特集を企画しました。総論には,『本棚の中のニッポン』の著者でもある国際日本文化研究センターの江上敏哲氏に,海外における日本研究の現状等について的確にまとめていただきました。それに続き,チューリッヒ大学の神谷信武氏にはチューリッヒ大学アジア・オリエント研究所図書館における日本研究支援の実際について,(株)ネットアドバンスの田中政司氏には,「ジャパンナレッジ」の海外販売戦略を中心とした日本資料の海外受容について,北海道大学附属図書館の相原雪乃氏には,グローバルなILL/DDサービスを実現するためのGIF(Global ILL Framework)プロジェクトについて,国際交流基金ライブラリーの栗田淳子氏には,海外の日本研究支援等を事業の中心とする国際交流基金の取り組み及びライブラリーでの研究支援について,東京国立近代美術館の水谷長志氏には,海外日本美術資料専門家(司書)の招へい事業であるJAL プロジェクトについて,それぞれ執筆いただきました。今回の特集で,海外における日本研究の現状をお伝えでき,そして日本研究支援において自分にできることは何か?ということを考えるきっかけになりましたら,委員一同大変嬉しく思います。(会誌編集担当委員:中村美里(主査),長屋俊,久松薫子,水野翔彦)