著者
高久 雅生
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.182-188, 2019-05-01 (Released:2019-05-01)

本稿では,「情報検索」の定義を振り返りつつ,情報検索の伝統的なモデルから新たなモデルへの遷移,変容を解説する。また,ACM SIGIRの過去10年間の発表内容から情報検索研究領域における近年のトレンドとして,新興国の台頭,研究対象の多様化を取り上げる。最後に,注目される研究領域,トピックとして,ランキング学習,ニューラル検索,ユーザ実験,クエリ解析,セッションとタスク,探索型検索,法的文書検索,エンティティ検索,統合検索,情報検索の社会的インパクト,倫理的課題など,さまざまな情報検索のトピックと最新動向,諸課題を解説する。
著者
江草 由佳 高久 雅生
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.361-367, 2018-07-01 (Released:2018-07-01)

教科書LODは,国立教育政策研究所教育図書館や教科書研究センター附属教科書図書館が長年かけて組織化してきた書誌情報をまとめてLOD化したものである。1992年施行の学習指導要領以降の検定教科書を対象として,書誌事項と教科等の関連情報をLOD化し,2018年3月現在,7,257タイトルの教科書情報,RDFデータとして157,297トリプルを公開している。本稿では教科書LODの開発および公開を通して得た知見を紹介する。
著者
高久 雅生 Takaku Masao
出版者
情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.162-169, 2014-05

Web APIは情報サービスの,とりわけWeb上で提供されるサービスにおいて,縁の下の力持ちとして欠かせない位置を占めつつある。本稿ではWeb APIの提供と利用の両面から類型を示しながら,その歴史的な意義と機能を紹介する。学術情報分野を中心にWeb APIの提供事例とマッシュアップ事例を挙げるとともに,その利用目的やデータ形式,ライセンス,永続性といった点を取り上げて議論し,Web APIがもたらしている役割を解説する。
著者
縵沢 奈穂美 高久 雅生
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.161-174, 2017-05-27 (Released:2017-07-21)
参考文献数
25

本研究の目的は「書籍の種類・読む目的が変わると,着目する項目が変化する」かどうかを明らかにすることである.オンライン調査により,同じタイトルの書籍の電子書籍と紙の書籍を示し,どちらを選択するかを尋ねた.課題ごとに「書籍の種類」,「あとがきの有無」などの提示情報を変化させ,どの情報を重視しているのかを調べた.小説を取り扱った課題では紙の書籍を選択した人数が多く,実用書では電子書籍を選択する人数が多いという結果が得られた.また,読む目的を変更すると,項目の重要度の値が変化していた.特定の書籍の種類や読書の目的を設定した場合,「書籍の種類・読む目的が変わると,着目する項目が変化する」可能性があるのではないかと考えられる.
著者
吉川 次郎 高久 雅生 芳鐘 冬樹
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.21-41, 2020-02-29 (Released:2020-03-27)
参考文献数
48
被引用文献数
4 2

英語版Wikipedia 上のDOI リンクを対象に,(1) DOI リンクと編集者に関する状況,(2) 各研究分野における編集者ごとのDOI リンクの追加件数の偏りおよび占有度を明らかにするための分析を行った.結果として,まず,研究分野が特定可能な学術文献として約93 万件の参照記述を取得可能であり,ESI 分類における22 の研究分野と照合可能である.これらの参照記述を追加する編集者のうち,User は34,062 名,Bot は31 名,IP (非ログイン編集者) は16,349 名である.次に,既存の参照記述に対してDOI リンクを追加する編集を大規模かつ機械的に実行する編集者の存在により,User およびBot における研究分野全体でのジニ係数は0.93 であり,総体的に偏りが大きい.また,多くの研究分野においてそれぞれ偏りが大きい.
著者
高久 雅生 谷藤 幹子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.29-41, 2012 (Released:2012-04-01)
参考文献数
35
被引用文献数
3 1 2

物質・材料研究機構(NIMS)では,2008年よりデジタルライブラリー構想に基づく機関リポジトリNIMS eSciDocの開発と運用を始めた。eSciDocは柔軟な拡張可能性と豊富なWeb APIを併せ持つドイツ製のオープンソースのリポジトリソフトウェアであり,単に文献リポジトリにとどまらず,eサイエンスのための汎用ツールとしての機能を持ち合わせている。このような利点を活かして開発,運用してきた機関リポジトリNIMS eSciDocの現状と課題を報告する。あわせて,機関リポジトリと対をなして取り組んでいる研究者総覧SAMURAIについても報告する。SAMURAIは,NIMS研究者約500人を対象に,その連絡先や業績文献,研究内容などをわかりやすく伝えるサービスとして,機関リポジトリや外部データベースと密に連携しながら,2010年より運用を開始した。本報告では,これらのサービス内容と利用動向とともに,今後の展開について述べる。
著者
高久 雅生
出版者
情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.48-53, 2014-02

15 年間にわたるオープンソース運動を振り返りながら,図書館サービスとの接点,オープンソースソフトウェアの利用事例を紹介する。図書館サービスにおけるオープンソースソフトウェアの例として,図書館管理システム,機関リポジトリ,次世代OPAC といった分野を取り上げ,国内及び海外の事例を紹介する。近年の図書館サービスの文脈におけるオープンソースソフトウェアの課題として,クラウドコンピューティングの進展やオープンデータ,人材育成などの観点から考察し,今後の課題を述べる。
著者
田辺 浩介 高久 雅生 江草 由佳
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.219-228, 2013-07

本研究では,FRBR のWork・Expression のエンティティを,既存の運営母体によって作成・管理された書誌・所蔵データと連動して扱える,疎結合構成の実装モデルを提案する.この提案手法は,Work・Exprsesion の記述のためのシステムを,Web 上で提供されている既存の目録システムと独立して運用することを可能にしている.本研究では既存の目録システムとしてCiNii Books を用いたシステムを試作し,その実現可能性を示した.We propose a loosely coupled implementation model that allows cataloging systems to record FRBR Work and Expression entities connecting bibliographic records maintained by existing libraries. The proposed model enables a cataloging system that records Work and Expression entities to operate in-dependently from existing cataloging systems. We have developed a prototype system that uses CiNii Books as an existing cataloging system and showed its feasibility.
著者
谷藤 幹子 高久 雅生 大塚 真吾 轟 眞市
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.51, no.12, pp.888-901, 2009 (Released:2009-03-01)
参考文献数
26
被引用文献数
4 1

研究成果の蓄積と公開は,独立行政法人たる研究所においても重要な任務だが,それを図書館が担うという考え方はつい先ごろまでまったく浸透していなかった。そもそも図書館は,本を買って置く場所という認識である。専門職員が充分にいるわけでもない。しかしさすがに情報社会の波が研究現場にもさまざまな形で押し寄せてくるに至り,組織全体としての情報の流通・発信力に不足感を感じてきたところといえる。物質・材料研究機構(NIMS)では,購読図書の電子化が進んでいることとも合わせ,いっそのことバーチャルな世界でデジタルライブラリーを考えようということになった。未来のライブラリーとは(人も含め)どのようなものか? 研究者が使いたくなる機能とはどのようなものか? そうした問いかけを重ねる中で,単なる蓄積・公開にとどまらず,蓄積された情報が確かな手応えを伴って発信できる仕組み,より能動的なライブラリーシステムを目指してNIMS eSciDocの研究開発に着手したところである。第一期はシステムの「発信する力」に焦点をあて,その具現化にふさわしいソリューションを追求し,改良と試験運用を開始した。本稿はその概要を述べるとともに,他の文書/動画共有サイトとの発信力の比較を行ったNIMS研究者の声も紹介する。
著者
高久 雅生 江草 由佳 寺井 仁 齋藤 ひとみ 三輪 眞木子 神門 典子
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.224-235, 2009-05-16 (Released:2009-06-27)
被引用文献数
1 4

Web 情報探索行動中のサーチエンジン検索結果一覧ページ(以下,SERP と呼ぶ)に対する行動に着目し,ユーザ実験の方法論により,視線データ,ブラウザログ,事後インタビュー等の情報を包括的に用いて,ユーザ属性,タスク属性,クエリ属性の3 つの要因と,眼球運動による視線データとの関連を探った.分析の結果,SERP における行動の説明変数としては,他の要因に比べてInformation/Navigational クエリの違いによる効果が最も大きく,SERP への遷移の直接的な原因となるクエリ種別により,ユーザの行動を予測しうる可能性が示唆された.
著者
高久 雅生 江草 由佳 寺井 仁 齋藤 ひとみ 三輪 眞木子 神門 典子
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.249-276, 2010-10-22 (Released:2010-12-08)
参考文献数
41
被引用文献数
3

Web利用者の情報探索行動の理解のために,眼球運動データ,ブラウザログ等の情報を包括的に用いて,ユーザ特性,タスク種別の違いがいかに探索行動に影響しうるかを検討した.ユーザ特性として図書館情報学専攻の大学院生と一般学部生の2グループを設定し,それぞれ大学院生5名,学部生11名が実験に参加した.タスク種別としてレポートタスクと旅行タスクの2つを設定して,それぞれ15分間ずつのWeb探索行動を観察した.実験の結果,タスク種別の影響として,サーチエンジンの検索結果一覧ページ上における視線注視箇所として,旅行タスクではスポンサーリンク,レポートタスクではスニペット領域がより多く見られるなど,タスク毎に着目する情報が異なることが示された.また,旅行タスクではサーチエンジン検索結果一覧ページから2回以上たどったページの閲覧回数がより多く,異なるタスクにおいて情報収集方略が異なる傾向が示唆された.一方でユーザ特性の影響として,大学院生は学部生に比べて,ページ閲覧をすばやく行い,タブ機能を用いた並列的な閲覧行動も観察されるなど,効率的な情報収集を目指した行動の差異が見られた.
著者
吉川 次郎 高久 雅生 芳鐘 冬樹
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.3-19, 2021-02-28 (Released:2021-03-26)
参考文献数
49
被引用文献数
2

Wikipedia 上の学術文献の参照記述の追加における持続可能性を明らかにするために時系列分析を行った.英語版全体での編集と参照記述の追加を比較した結果,両者は推移の特徴が異なり,参照記述の追加には伸び悩みが見られず近年においても一定の規模である.参照記述を追加する編集者は,2011 年以降は毎年4 月と11 月に多い点で周期的な特徴がある.参照記述を初めて追加した編集者(新規参加者) の過半数は,多くの年で1ヶ月のみ関与し,近年になるにつれてその傾向が強まっているが,近年でも一定の規模を維持している.周期的な特徴や新規参加者の規模の維持については,大学の授業を通じたWiki Education 参加者による影響が挙げられ,今後もこの活動が継続するとすれば,持続可能性は高いと考えられる.
著者
縵沢 奈穂美 高久 雅生
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.165-173, 2016-05-14 (Released:2016-07-15)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1

本研究は書籍の購入者が書籍に対してどういったことが得られると想定し,どの点を比較し,購入しているかを明らかにする.現在,電子書籍と紙の書籍に掲載してある情報には差異がある.その状況で目的にあった購入時の選択が行えるように,購入者がどの点に着目して購入時の選択を進めているかを,書籍の購入に関するストーリーと比較項目のチェックリストを用いて調べた. 実験参加者14名を対象として調査した.結果,4つの課題でいずれも選択されていた人数が5人以上であったのは値段である.また書籍の種類や読む目的を変更すると,着目する項目が変化すると考えられる.
著者
吉川 次郎 高久 雅生 芳鐘 冬樹
巻号頁・発行日
2016

In this paper, we analyzed Digital Object Identifier (DOI) links among English, Japanese, and Chinese Wikipedias (hereafter, enwiki, jawiki, and zhwiki, respectively), which possibly work as a bridge between the Web users and scholarly information. Most of the DOI links in these Wikipedias were revealed to be CrossRef DOIs. The second most-referenced in jawiki were JaLC DOIs, whereas those in zhwiki were ISTIC DOIs. JaLC DOIs were uniquely referenced in jawiki, and ISTIC DOIs tend to be referenced in zhwiki. In terms of DOI prefixes, Elsevier BV was the largest registrant in all languages. Nature Publishing Group and Wiley-Blackwell were also commonly referenced. The content hosted by these registrants was shared among the Wikipedia communities. Moreover, overlapping analysis showed that jawiki and zhwiki share the DOI links with enwiki at a similar high rate. The analysis of revision histories showed that the DOI links had been added to enwiki before they were included in jawiki and zhwiki -- indicating that the majority of DOI links in jawiki and zhwiki were added by translating from enwiki. These findings imply that the DOI links in Wikipedia may result in multiple counts of almetrics.
著者
藤岡 雄大 高久 雅生
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.267-286, 2022-05-28 (Released:2022-07-01)
参考文献数
37

本研究は放送番組のシリーズに着目し,番組情報に含まれるURL などより幅広い観点を比較検討し,同定に有効な手法を示す.各フィールドに対する手法や組み合わせを検討し,区切り文字を設定しタイトルから抽出したマスタータイトルが完全一致するか,タイトルに対するジャロ・ウィンクラー距離を加味しつつ番組詳細からURL を抽出し一致するかという2 点のいずれかを満たすことを条件とし,連続シリーズの同定手法を提案した.そして,2021 年9 月から10 月にかけての35 日分の番組情報を対象に正解データを作成し,シリーズ数,放送回ペアの精度と再現率を指標として用い,手法の評価を行った.結果,タイトルから抽出したマスタータイトルを用いる手法の有効性が示された.また,URL による同定の条件について,ジャロ・ウィンクラー距離を加えることで精度向上に有用であることが示唆された.
著者
原田 隆史 高久 雅生 小野 永貴 杉岡 秀紀 真山 達志 逸村 裕 江草 由佳 岡部 晋典 小泉 公乃 山本 順一 安形 輝 桂 まに子 岸田 和明 佐藤 翔
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では,「資料」「来館者」「非来館者」「知の拠点」「図書館制度・経営」という5つの観点を研究する5 つのグループを設定して,日本の公共図書館全体を対象とする大規模な質的・量的調査を実施する。これによって日本の公共図書館に関して,それぞれの機能・サービスの基準とし,規模や地域経済など,図書館の状況に応じたベースラインを明らかにする。本研究により日本の公共図書館すべてに適用可能な評価パッケージを開発可能にすることが可能になると考えられる。
著者
田辺 浩介 常川 真央 高久 雅生 江草 由佳
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.321-341, 2014-10-06 (Released:2014-12-31)
参考文献数
40
被引用文献数
1

本研究では,FRBRのWork・Expressionのエンティティを,図書館などによって作成,管理された既存の書誌・所蔵情報と連動して扱うことができ,かつ,別々のシステムで管理されたWork・Expressionエンティティをシステム間で相補的に利用できる疎結合構成の実装モデルを提案する.この提案手法は,Work・Expressionの記述のためのシステムを,Web 上で提供されている既存の目録システムと独立して運用することを可能にしている.本研究では既存の目録システムとしてCiNii Booksを用いたシステムを試作し,その実現可能性を示した.