- 著者
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田和 康太
中西 康介
村上 大介
西田 隆義
沢田 裕一
- 出版者
- 一般社団法人 日本生態学会
- 雑誌
- 保全生態学研究 (ISSN:13424327)
- 巻号頁・発行日
- vol.18, no.1, pp.77-89, 2013-05-30 (Released:2017-08-01)
- 被引用文献数
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6
圃場整備事業の拡大に伴い、平野部の水田では乾田化が進められてきた。このことが近年、水田の多種の水生動物が減少した一要因と考えられている。一方で、山間部などに多い排水不良の湿田では、一年を通して湿潤状態が保たれる。そのため、非作付期の湿田は水生動物の生息場所や越冬場所となり、生物多様性保全の場として重要な役割を担うといわれるが、実証例は少ない。本研究では、滋賀県の中山間部にある湿田およびそこに隣接する素掘りの側溝において、作付期から非作付期にかけて大型水生動物の生息状況を定量的に調査した。全調査期間を通じて、調査水田では側溝に比べて多種の水生動物が採集された。特にカエル目複数種幼生やコシマゲンゴロウに代表されるゲンゴロウ類などの水生昆虫が調査水田では多かった。このことから、調査水田は側溝に比べて多種の水生動物の生息場所や繁殖場所となると考えられた。その原因として餌生物の豊富さ、捕食圧の低さなどの点が示唆された。一方、側溝では水田に比べてカワニナやサワガニなどの河川性の水生動物が多い傾向があった。またドジョウの大型個体は側溝で多く採集された。このことから、中山間部の湿田では、調査水田と側溝のように環境条件や構造の異なる複数の水域が組み合わさることによって、多様な水生動物群集が維持されていると考えられた。また、非作付期と作付期を比較したところ、恒久的水域である側溝ではドジョウやアカハライモリなどが両時期に多数採集された。さらに調査水田ではこれらの種に加えて、非作付期の側溝ではみられなかったトンボ目やコウチュウ目などの多種の水生昆虫が両時期に採集されたことから、非作付期の水生動物の種数は側溝に比べてはるかに多かった。このことから、非作付期の水田に残る水域が多くの水生動物にとって重要な生息場所や越冬場所になると考えられた。