著者
五所 正彦 丸尾 和司
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.53-65, 2017 (Released:2017-12-27)
参考文献数
46
被引用文献数
1

データの欠測は,臨床試験の結果をゆがめ,解釈を困難にする重大な問題である.mixed-effects models for repeated measures(MMRM)は,線形混合効果モデルの一種で,不完全な経時測定データを解析するために利用される統計モデルである.特に医生物学の分野で急速に普及しており,臨床試験においては主要な解析に採用されることも多い.本論文では,MMRMに基づく解析を取り上げ,この方法の原理や性質,固定効果パラメータの推定ならびに統計的推測の方法を概観する.また,実際のデータにMMRMを適用する際の具体的な指定方法や注意点を紹介する.
著者
高橋 健一 石井 亮太 丸尾 和司 五所 正彦
出版者
日本計量生物学会
雑誌
計量生物学 (ISSN:09184430)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.37-62, 2022 (Released:2023-03-24)
参考文献数
72

The seamless phase II/III design combining phases II and III into a single trial has been shown growing interest for improving the efficiency of drug development, becoming the most frequent adaptive design type. It typically consists of two stages, the trial objectives being often different in each stage. The primary objectives are to select optimal experimental treatment group(s) in the first stage and compare the efficacy between the selected treatment and control groups in the second stage. In the final analysis, appropriate statistical methods should be applied to avoid increasing the type I error rate and selection bias. This paper reviews several statistical methods that can be applied to adaptive seamless phase II/III designs. Especially, the most representative methods such as the group sequential design approach, combination test approach, and conditional error function approach, are organized in a unified framework and the characteristics of the methods are compared. As related topics, statistical methods for the case where endpoints are different between stages 1 and 2, and the method of sample size calculation will also be discussed. Examples of actual applications are also presented.
著者
小林(野網) 惠 丸尾 和司 坂本 崇 高橋 祐二 堀越 勝
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.12, pp.791-798, 2019 (Released:2019-12-25)
参考文献数
29
被引用文献数
1 2

本邦における局所性ジストニア患者92名を対象として,Revised NEO Personality Inventory(NEO-PI-R)に基づく結果を決定木法に基づいて解析し,職業および発症部位による観点から性格傾向を検討した.その結果,患者パーソナリティは発症部位よりも,職業に関与するか否かによって傾向が異なることが示唆された.また音楽家を含む職業性ジストニア患者における神経症傾向と高水準の不安,職業性上肢ジストニア患者の現実的思考,musicians’ dystonia患者におけるポジティブ/ネガティブ両方の豊富な感情体験が明らかとなった.
著者
山田 卓也 福田 吉治 佐藤 慎一郎 丸尾 和司 中村 睦美 根本 裕太 武田 典子 澤田 亨 北畠 義典 荒尾 孝
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.331-338, 2021-05-15 (Released:2021-06-03)
参考文献数
29

目的 本研究の目的は,地域在住自立高齢者に対する膝痛改善教室(教室)が医療費の推移へ与える効果を検討することであった。方法 2015年1月から2月の間に山梨県都留市A地区在住の自立高齢者を対象に非ランダム化比較試験として4週間の教室を実施した。本研究の分析対象者は,教室の介入群で教室のすべての回と最終評価に参加した28人と,教室の非介入群で再調査にも回答のあった70人のうち,死亡・転出者と対象期間に社会保険に加入していた者を除外し,医療費データの利用に同意が得られた49人(介入群20人,非介入群29人)とした。医療費データは,2014年1月から2018年12月の傷病名に関節症のコードを含む医科入院外レセプトとそれに関連する調剤レセプトの合計を用いた。教室開催前の2014年を基準とする2015年から2018年までの各年の医療費の変化量を算出し,その間の医療費の推移に及ぼす介入の効果を線形混合効果モデルで分析した。結果 医療費の変化量の推移に対する教室の効果(調整平均値の群間差:介入群−非介入群)は,対象全期間を通じて有意差は認められなかった(全期間−5.6千円/人,95%CI:−39.2-28.0)。各年では,2015年9.3千円/人(95%CI:−39.6-58.3),2016年−2.0千円/人(95%CI:−44.4-40.5),2017年−10.3千円/人(95%CI:−42.5-21.9),2018年8.2千円/人(95%CI:−39.1-55.4)であり,介入による有意な医療費抑制効果は確認されなかった。結論 今後は介入プログラムや対象人数を増やすなどの改善を行ったうえで,引き続き検証する必要がある。