著者
中村 彩希 稲山 貴代 荒尾 孝
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.65-80, 2016 (Released:2016-06-02)
参考文献数
38
被引用文献数
1

目的:野菜摂取行動の実態を世帯収入別に把握し,野菜摂取行動と関連する他の食行動を特定すること.方法:調査機関の登録者30~59歳のうち8,284人にウェブ調査を実施した.調査項目は食行動(野菜摂取行動,食事に気をつける行動,朝食摂取行動,朝食共食行動,夕食共食行動,栄養成分表示活用行動,食卓での会話),属性,世帯収入および最終学歴とした.回答が得られた3,269人を解析対象者とし,解析は世帯収入300万円未満,300~700万円未満,700万円以上の3区分別に実施した.従属変数の野菜摂取行動は,毎日野菜料理をたっぷり(1日小鉢5皿,350 g程度)いつも/まあまあ食べている者を良好群とした.独立変数は他の食行動である.調整変数はモデル1には投入せず,モデル2には属性,モデル3には属性および最終学歴を投入し,ロジスティック回帰分析を行なった.結果:世帯収入300万円未満のモデル3において,良好な野菜摂取行動は,食事に気をつける行動(調整オッズ比(AOR): 2.87,95%信頼区間(95%CI): 1.97-4.19),栄養成分表示活用行動(AOR: 2.35,95%CI: 1.69-3.26),食卓での会話(AOR: 4.25,95%CI: 3.04-5.95)の良好な食行動と正に関連した.300~700万円未満および700万円以上においても野菜摂取行動と関連した食行動は同様であった.結論:野菜摂取行動の促進において,いずれの世帯収入においても積極的な自己管理や食情報交換・活用行動も合わせて促すことが,望ましい行動変容を促す可能性がある.
著者
荒尾 孝 稲山 貴代 北畠 義典 劉 莉荊 仲里 佳美 根本 祐太 大滝 裕美
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

小学5年生を対象に身体活動の促進および正しい食事の知識とスキルの習得を目標とした教育介入を実施した。その結果、介入終了直後では介入校で遊びに対する積極的な態度や、放課後に友人と遊ぶ頻度が増加し、総エネルギー消費量では対照校に比べて介入校は有意に高い水準が維持された。食生活については、食事バランスガイドの知識が増え、望ましい食事をとることの結果期待や自己効力感が向上した。しかし、介入終了1年後では、これらの変化のうち行動に関する効果は維持されない傾向が示された。
著者
甲斐 裕子 荒尾 孝 丸山 尚子 今市 尚子
出版者
公益財団法人 明治安田厚生事業団 体力医学研究所
雑誌
体力研究 (ISSN:03899071)
巻号頁・発行日
vol.105, pp.1-10, 2007 (Released:2017-07-26)
参考文献数
23
被引用文献数
2

Objective: This study compared the effects of a behavioral approach program(BAP)and a knowledge-oriented program(KOP)to promote physical activity and healthy dietary habits in community-dwelling middle-aged Japanese. Both programs were designed to have the same intervention protocol in terms of duration and frequency. Methods: One hundred subjects(81 females), 57.4 ± 8.3 years of age(mean ± SD), were randomly assigned to either the BAP or KOP group. The subjects in both groups participated in 2-hr monthly group sessions over a 4 month period. The BAP was based on learning theory and social cognitive theory, and comprised of behavioral strategies(e.g., goal setting, self-monitoring, rewards, and social support)and group discussions. The KOP was based on a conventional health education program, and comprised of lectures on lifestyle-related diseases, physical exercise, and nutrition, followed by group discussions. The primary outcomes included: 1)changes in the number of walking steps, 2)total energy expenditure for exercise and leisure-time physical activities calculated by a self-reported questionnaire, 3)total energy intake of foods, fats, and vegetables, and 4)self-efficacy in physical exercise. Results: A significant inter-group difference existed in the change in number of daily walking steps between the BAP and KOP groups(+226 steps vs. -968 steps, P=0.02). There were significant improvements in fat and vegetable intake in both the BAP and KOP groups, but there were no significant differences between the two groups. There was no significant change in exercise self-efficacy in either group. The change in exercise selfefficacy positively correlated with the change in leisure-time physical activity in the BAP group(r=0.35, P=0.02). Conclusion: These findings suggest that the behavioral approach program promoted greater improvement in physical activity than the conventional health education program in community-dwelling middle-aged Japanese adults.
著者
山田 卓也 福田 吉治 佐藤 慎一郎 丸尾 和司 中村 睦美 根本 裕太 武田 典子 澤田 亨 北畠 義典 荒尾 孝
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.331-338, 2021-05-15 (Released:2021-06-03)
参考文献数
29

目的 本研究の目的は,地域在住自立高齢者に対する膝痛改善教室(教室)が医療費の推移へ与える効果を検討することであった。方法 2015年1月から2月の間に山梨県都留市A地区在住の自立高齢者を対象に非ランダム化比較試験として4週間の教室を実施した。本研究の分析対象者は,教室の介入群で教室のすべての回と最終評価に参加した28人と,教室の非介入群で再調査にも回答のあった70人のうち,死亡・転出者と対象期間に社会保険に加入していた者を除外し,医療費データの利用に同意が得られた49人(介入群20人,非介入群29人)とした。医療費データは,2014年1月から2018年12月の傷病名に関節症のコードを含む医科入院外レセプトとそれに関連する調剤レセプトの合計を用いた。教室開催前の2014年を基準とする2015年から2018年までの各年の医療費の変化量を算出し,その間の医療費の推移に及ぼす介入の効果を線形混合効果モデルで分析した。結果 医療費の変化量の推移に対する教室の効果(調整平均値の群間差:介入群−非介入群)は,対象全期間を通じて有意差は認められなかった(全期間−5.6千円/人,95%CI:−39.2-28.0)。各年では,2015年9.3千円/人(95%CI:−39.6-58.3),2016年−2.0千円/人(95%CI:−44.4-40.5),2017年−10.3千円/人(95%CI:−42.5-21.9),2018年8.2千円/人(95%CI:−39.1-55.4)であり,介入による有意な医療費抑制効果は確認されなかった。結論 今後は介入プログラムや対象人数を増やすなどの改善を行ったうえで,引き続き検証する必要がある。
著者
佐藤 慎一郎 根本 裕太 高橋 将記 武田 典子 松下 宗洋 北畠 義典 荒尾 孝
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.63, no.9, pp.560-568, 2016 (Released:2016-11-04)
参考文献数
62
被引用文献数
1

目的 本研究は地域在住の自立高齢者を対象に,膝痛の包括的な関連要因を男女別に明らかにすることを目的とした。方法 山梨県都留市下谷地区在住の65歳以上の要介護認定を受けていないすべての高齢者1,133人を対象に,健康状態,生活習慣に関する調査を行った。調査内容は基本属性,健康状態,生活習慣,膝痛,身体活動であった。膝痛は,過去 2 週間の平地を歩く際の痛みの有無について調査した。身体活動は,国際身体活動質問紙短縮版の日本語版を用い,週あたりの総身体活動量と 1 日あたりの座位時間を算出した。世界保健機関による健康のための身体活動に関する国際勧告に基づき,週あたりの歩行および中等度強度以上の総身体活動量が150分以上を身体活動量充足群,150分未満を身体活動量非充足群の 2 群とした。座位時間は中央値を基準値とし,5 時間以上を長時間群,5 時間未満を短時間群の 2 群とした。基本属性は,年齢,性別,最終学歴,婚姻状態,健康状態は体格指数(Body mass index:BMI),現症歴,生活習慣は食生活,飲酒状況,喫煙状況を調査しそれぞれ 2 値に分類した。解析は,男女別に行い,膝痛の有無を従属変数とし,身体活動量,座位時間,食生活,飲酒状況,喫煙状況,BMI を独立変数とした。また,不可変変数である年齢,最終学歴,婚姻状態,現症歴を調整変数として一括投入した多重ロジスティック回帰分析を行った。結果 有効回答数は801人(有効回答率70.7%)であった。解析対象者801人のうち,男性は365人(74.9±6.9歳),女性は436人(74.9±6.9歳)であった。膝痛の関連要因を性別にて検討した結果,男性においては,身体活動量(P=0.035)のみが有意な関連要因であった。身体活動量非充足群に対する身体活動量充足群の膝痛のオッズ比は0.605,95%信頼区間は0.380-0.964であった。女性においては,BMI(P=0.023)と食生活(P=0.004)が有意な関連要因であった。BMI では25 kg/m2 以上群に対する25 kg/m2 未満群の膝痛のオッズ比は0.595,95%信頼区間は0.380-0.931であった。食生活は,食生活不良群に対する食生活良好群の膝痛のオッズ比は0.547,95%信頼区間は0.364-0.823であった。結論  本研究結果から,男性では身体活動量,女性では BMI と食生活がそれぞれ膝痛の関連要因であることが示唆された。
著者
松下 宗洋 原田 和弘 荒尾 孝
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.30-38, 2014 (Released:2015-01-13)
参考文献数
17
被引用文献数
1

目的:運動行動を促進する技法の1つとして,インセンティブを用いて動機づけを高める技法が注目されている.インセンティブを効果的に用いるには,インセンティブの内容(種類,金額)や,対象者の運動行動に対する準備性を考慮する必要がある.本研究の目的は,対象者の運動行動変容ステージとインセンティブの内容によって,運動行動を動機づける強さが異なるかを検討することである.方法:40~69歳のモニターを対象(N=1,290)にインターネット調査による横断研究を実施した.測定項目は,インセンティブの種類による運動行動の動機づけの強さ(以下,動機強化得点),インセンティブとして希望する相当額,運動行動変容ステージであった.結果:動機強化得点は,インセンティブの種類(p<0.01),運動の行動変容ステージ(p<0.01)により有意に異なり,両者の交互作用も有意であった(p<0.01).しかし,各行動変容ステージにおける動機強化得点の高いインセンティブは,現金,商品券,旅行券であり,順位に大きな変動はなかった.各行動変容ステージの運動取組動機率が50%に達するインセンティブ希望金額は,前熟考期が2,000円,熟考期が1,000円,準備&実行期が1,500円,維持期が500円であった.結論:運動行動を動機づける強さは,インセンティブの内容(種類,金額)や運動の行動変容ステージによって異なることが明らかとなった.今後は,本研究を基にしたインセンティブによる運動実践率向上の検証が課題となる.
著者
金森 悟 甲斐 裕子 石山 和可子 荒尾 孝
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.125-134, 2013

目的:中年期地域住民を対象に,社会参加と首尾一貫感覚との関連を検討することを目的とした.<br>方法:東京都あきる野市の旧秋川市地区に居住する40~64歳の男女2,000名を無作為抽出し,郵送法による質問紙調査を用いた横断研究を行った.有効回答者は男性200名,女性300名であった.調査項目は首尾一貫感覚,社会参加,基本属性とした.社会参加には,ボランティアや趣味,スポーツなどの12種類の地域組織や団体について,月に1回以上参加している組織の数を扱い,3分位にあたる0種類,1種類,2種類以上の3群に分類した.参加組織数と首尾一貫感覚との関連に対しては共分散分析を行った.<br>結果:参加組織数別の割合は,男性で0種類が122名(61.0%),1種類が56名(28.0%),2種類以上が22名(11.0%),女性ではそれぞれ174名(58.0%),83名(27.7%),43名(14.3%)であった.月1回以上参加している組織別では,男女ともにスポーツ関係のグループが最も多かった.参加組織数と首尾一貫感覚との関連では,男性においては有意な関連はみられなかったものの(F=0.56,p=0.57),女性においては有意な関連がみられた(F=5.54,p<0.01).さらに,女性の首尾一貫感覚の推定平均値は参加組織数が0種類で14.7点,1種類で15.3点,2種類以上で16.3点と,多いほど首尾一貫感覚も高い傾向が示された.<br>結論:中年期地域住民における参加組織数別の首尾一貫感覚は,女性のみ関連が示唆され,参加組織数が多いほど首尾一貫感覚が高い傾向が認められた.
著者
永松 俊哉 荒尾 孝
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.39-47, 1997-02-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
20

運動前多食型 (BE) および運動後多食型 (AE) の食物摂取パターンが持久性の向上に有効か否かを明らかにすることを目的に, ラットを用いて低強度および高強度の急性運動を負荷した際の糖脂質代謝について検討した.(1) 運動前安静および対照安静のいずれの時点でも, 血漿FFAは自由摂食 (AD) 群に比較しBE群およびAE群で有意な低値を示し, 肝臓グリコーゲンはAD群およびBE群に比べてAE群で有意な高値を示した.(2) 低強度運動時には, 血漿FFAおよびグリセロールがAD群において運動前安静群に比較して運動群で有意な高値を示した.肝臓グリコーゲンは, AD群では運動前安静群に比較して運動群で有意な低値を示し, BE群では運動前安静群に比べて運動群で有意な高値を示した.一方, 肝臓グリコーゲンは運動後, AD群に比較してBE群およびAE群で有意な高値を示し, BE群に比較してAE群で有意な高値を示した.腓腹筋グリコーゲンは, AD群では運動前安静群に比較して運動群で有意な低値を示し, 運動後には, AD群およびBE群に比較してAE群で有意な高値を示した.(3) 高強度運動時には, AD群, BE群, およびAE群のいずれも血漿FFAおよびグリセロールが運動前安静群に比較して運動群で有意な高値を示した.運動負荷後の血漿FFAにおいては, AD群に比較してBE群およびAE群で有意な低値を示した.肝臓グリコーゲンは, AD群では運動前安静群に比較して運動群で有意な低値を示した.運動負荷後は, AD群に比較してBE群で有意な高値を示し, BE群に比較してAE群で有意な高値を示した.腓腹筋グリコーゲンに関しては, AD群, BE群, およびAE群のいずれも運動前安静群に比較して運動群で有意な低値を示した.以上より, 運動後多食型は, 運動開始時には自由摂食および運動前多食型に比較して, 肝臓グリコーゲン含量を高めることに極めて有効であるので持久的運動時の肝臓グリコーゲン消費節約が可能であり, 持久性の向上に有効であるものと推察された.
著者
佐藤 真治 荒尾 孝 田中 史朗 田城 孝雄 都竹 茂樹 大槻 伸吾
出版者
大阪産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

「歩いて暮らすまちづくり」条例の施行が住民の身体活動量とソーシャルキャピタル(SC)に及ぼす変化を検証した。市内4モデル地区の成人389名を対象に、条例制定直後と1、3年後にアンケートを実施した。身体活動量の測定にはPhysical Activity Indexを用いた。SCとして、付き合っている人の数、地域への信頼、社会参加の程度などを求めた。身体活動量は、1年目に全ての地区で増加したが、3年目には低下傾向を認めた。SCは、地域への信頼(時間の効果:p<0.05)が高まった。
著者
松下 宗洋 宮地 元彦 川上 諒子 岡本 隆史 塚本 浩二 中田 由夫 荒尾 孝 澤田 亨
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.375-381, 2013-10-01 (Released:2013-10-19)
参考文献数
29

Several studies have shown that low cardiorespiratory fitness (CRF) or heavy alcohol consumption is risks of total or certain types of cancer death. However, the combined influence of CRF and drinking habits on total cancer mortality is not clear. The purpose of this study was to investigate the joint effect of CRF and drinking habits on total cancer mortality among Japanese men. We evaluated the CRF and drinking habits on risk of total cancer mortality in 8,760 Japanese men (age: 19-59 yr) who were given a submaximal exercise test, a medical examination test, and questionnaires on their health habits. CRF was measured using a cycle ergometer test, and the men were classified into two categories by CRF levels based on the reference value of CRF (R-CRF) in “Physical Activity Reference for Health Promotion 2013” (Under R-CRF and Over R-CRF). Also, the men were assigned to Non Drinking, Moderate Drinking, and Heavy Drinking categories. There were 178 cancer deaths during the 20-yr follow-up period. Relative risk and 95% confidence intervals for total cancer mortality were obtained using the Cox proportional hazards model while adjusting for age, body mass index, systolic blood pressure, and smoking habits. Using the Under R-CRF & Heavy Drinking group as reference, the relative risk and 95% confidence intervals were 0.37 (0.16–0.85) for the Over R-CRF & Non Drinking group. This result suggests that Japanese male with a high CRF and a low drinking habit have a lower risk of total cancer mortality.