著者
山田 卓也 福田 吉治 佐藤 慎一郎 丸尾 和司 中村 睦美 根本 裕太 武田 典子 澤田 亨 北畠 義典 荒尾 孝
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.331-338, 2021-05-15 (Released:2021-06-03)
参考文献数
29

目的 本研究の目的は,地域在住自立高齢者に対する膝痛改善教室(教室)が医療費の推移へ与える効果を検討することであった。方法 2015年1月から2月の間に山梨県都留市A地区在住の自立高齢者を対象に非ランダム化比較試験として4週間の教室を実施した。本研究の分析対象者は,教室の介入群で教室のすべての回と最終評価に参加した28人と,教室の非介入群で再調査にも回答のあった70人のうち,死亡・転出者と対象期間に社会保険に加入していた者を除外し,医療費データの利用に同意が得られた49人(介入群20人,非介入群29人)とした。医療費データは,2014年1月から2018年12月の傷病名に関節症のコードを含む医科入院外レセプトとそれに関連する調剤レセプトの合計を用いた。教室開催前の2014年を基準とする2015年から2018年までの各年の医療費の変化量を算出し,その間の医療費の推移に及ぼす介入の効果を線形混合効果モデルで分析した。結果 医療費の変化量の推移に対する教室の効果(調整平均値の群間差:介入群−非介入群)は,対象全期間を通じて有意差は認められなかった(全期間−5.6千円/人,95%CI:−39.2-28.0)。各年では,2015年9.3千円/人(95%CI:−39.6-58.3),2016年−2.0千円/人(95%CI:−44.4-40.5),2017年−10.3千円/人(95%CI:−42.5-21.9),2018年8.2千円/人(95%CI:−39.1-55.4)であり,介入による有意な医療費抑制効果は確認されなかった。結論 今後は介入プログラムや対象人数を増やすなどの改善を行ったうえで,引き続き検証する必要がある。
著者
佐藤 慎一郎 根本 裕太 高橋 将記 武田 典子 松下 宗洋 北畠 義典 荒尾 孝
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.63, no.9, pp.560-568, 2016 (Released:2016-11-04)
参考文献数
62
被引用文献数
1

目的 本研究は地域在住の自立高齢者を対象に,膝痛の包括的な関連要因を男女別に明らかにすることを目的とした。方法 山梨県都留市下谷地区在住の65歳以上の要介護認定を受けていないすべての高齢者1,133人を対象に,健康状態,生活習慣に関する調査を行った。調査内容は基本属性,健康状態,生活習慣,膝痛,身体活動であった。膝痛は,過去 2 週間の平地を歩く際の痛みの有無について調査した。身体活動は,国際身体活動質問紙短縮版の日本語版を用い,週あたりの総身体活動量と 1 日あたりの座位時間を算出した。世界保健機関による健康のための身体活動に関する国際勧告に基づき,週あたりの歩行および中等度強度以上の総身体活動量が150分以上を身体活動量充足群,150分未満を身体活動量非充足群の 2 群とした。座位時間は中央値を基準値とし,5 時間以上を長時間群,5 時間未満を短時間群の 2 群とした。基本属性は,年齢,性別,最終学歴,婚姻状態,健康状態は体格指数(Body mass index:BMI),現症歴,生活習慣は食生活,飲酒状況,喫煙状況を調査しそれぞれ 2 値に分類した。解析は,男女別に行い,膝痛の有無を従属変数とし,身体活動量,座位時間,食生活,飲酒状況,喫煙状況,BMI を独立変数とした。また,不可変変数である年齢,最終学歴,婚姻状態,現症歴を調整変数として一括投入した多重ロジスティック回帰分析を行った。結果 有効回答数は801人(有効回答率70.7%)であった。解析対象者801人のうち,男性は365人(74.9±6.9歳),女性は436人(74.9±6.9歳)であった。膝痛の関連要因を性別にて検討した結果,男性においては,身体活動量(P=0.035)のみが有意な関連要因であった。身体活動量非充足群に対する身体活動量充足群の膝痛のオッズ比は0.605,95%信頼区間は0.380-0.964であった。女性においては,BMI(P=0.023)と食生活(P=0.004)が有意な関連要因であった。BMI では25 kg/m2 以上群に対する25 kg/m2 未満群の膝痛のオッズ比は0.595,95%信頼区間は0.380-0.931であった。食生活は,食生活不良群に対する食生活良好群の膝痛のオッズ比は0.547,95%信頼区間は0.364-0.823であった。結論  本研究結果から,男性では身体活動量,女性では BMI と食生活がそれぞれ膝痛の関連要因であることが示唆された。
著者
佐藤 慎一郎 杉浦 彰彦
雑誌
第82回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, no.1, pp.377-378, 2020-02-20

場の情報共有を目指す知的環境認識型ネットワークとして提案されたエリアIPフォンは,狩猟,災害,海難エリア等を対象に研究されてきた.本研究では,高速道路の渋滞多発エリアを対象に研究・開発を行う.具体的には,正確な情報収集とリアルタイム性を満たす渋滞情報の共有を実現し,交通事故防止を目指す.本提案では,渋滞に巻き込まれた最後尾にいる車両を基準に高速道路環境に適した3段階の警告範囲を設け,警告範囲ごとに異なる警告音声を再生することで距離や速度の変化に応じたエリアIPフォンによる渋滞情報の共有を行う.さらに,高速道路の状況に適した警告範囲を予測することで,適切な警告を提示し,事故低減を目指す.
著者
佐藤 慎一郎 稲葉 宏次 小穴 修平 三浦 雅憲 近藤 公亮 滝川 康裕 鈴木 一幸 上杉 憲幸 増田 友之 久喜 寛之
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.102, no.5, pp.595-599, 2005 (Released:2005-06-14)
参考文献数
15

症例は68歳男性.1996年より無症候性原発性胆汁性肝硬変の診断で通院中であった.2002年10月麻痺性腸閉塞の診断で入院,内科的治療で改善したが同時に四肢,体幹の筋萎縮と四肢の筋力低下を認めたため精査を行った.筋生検でragged-red fiberを認め,ミトコンドリア脳筋症の診断となった.原発性胆汁性肝硬変とミトコンドリア脳筋症の合併は過去に報告はなく極めてまれである.両者の合併に関連性があるかは不明であるが,抗ミトコンドリア抗体(anti-mitochondrial antibody;AMA)がミトコンドリア脳筋症の発症やその後の経過に影響を与えた可能性は否定できず,AMAの病因論的意義を考える上で興味深い症例と思われた.
著者
藤本 鎮也 佐藤 慎一郎 浅岡 祐之 西原 賢 星 文彦
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会
巻号頁・発行日
vol.31, 2012

【目的】<BR>本研究の目的は下部体幹に装着した非拘束慣性センサのデータに基づいて坐位からの歩行動作の相分けを行い,理学療法士の動画観察による相分けと比較し,その妥当性を検証することである。<BR>【方法】<BR>対象は健常若年男性5名(年齢19.5&plusmn;0.5歳)であった。また,評価者として臨床経験年数の異なる理学療法士3名の協力を得た。課題として、肘掛のない椅子の背もたれに軽くもたれた坐位からの歩行動作(Sit-to-walk)を最大速度にて行うよう指示した。慣性センサは,3軸加速度計と3軸角速度計、そして通信用のBluetoothを備えた小型無線ハイブリッドセンサ(WAA-010,ワイヤレステクノロジー社) を使用し,第3腰椎高位の下部体幹に装着し,サンプリング周波数50Hzにて慣性データをパソコン(以下PC)に取り込んだ。同時にPCにUSB接続したWebカメラ(UCAM-DLY300TA,エレコム社)にて側方より動作を録画した。慣性センサデータと動画の同期と取り込みにはSyncRecord Ver.1.0(ATR-Promotions社)を使用した。取り込んだ下部体幹の慣性センサデータの前後方向加速度とPitch方向の角速度変化から運動開始,離殿そして歩き始めの瞬間を特定し出現までの所要時間を算出した。理学療法士の観察による分析は,録画データをPC上で再生し,速度を自由に変えながら3人の理学療法士が運動開始,離殿そして歩き始めを判断し,画面上のタイムコードを読み取り所要時間を計測した。データ解析は,まず理学療法士による分析結果の再テスト法による検者内信頼性および検者間信頼性を検証し,続いて下部体幹センサに基づく結果と理学療法士の分析結果の相関分析を行った。データ処理と解析にはExcel 2010及びSPSS for Win ver.18を使用した。本研究は協力者に研究内容の説明を行い,書面にて同意を得た後、転倒防止や個人情報保護等に配慮しながら行った。<BR>【結果】<BR>理学療法士の分析結果の信頼性は検者内検者間共に高い信頼性を示した(ICC:&rho;=0.99-1.00,p<0.01)。下部体幹装着慣性センサにより特定された全ての結果と理学療法士の分析に基づく結果の間で高い相関が認められた(運動開始r=0.99,離殿r=0.99,歩行開始r=0.99,いずれもp<0.01)。<BR>【考察およびまとめ】<BR>理学療法士の分析結果は,動画の再生速度を変化させながらタイムコードを利用した時間計測を行ったことで信頼性が高まったと思われる。理学療法士の分析結果と下部体幹装着慣性センサの結果が高い相関を示したことは,下部体幹装着慣性センサによる相分けの臨床適用の可能性を示唆するものであると考える。