著者
丸山 治彦 菊地 泰生 倉持 利明
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

マンソン孤虫による通常の孤虫症と違い、芽殖孤虫は人体内で無性的に増殖し、感染は致死的に経過する。芽殖孤虫の無性増殖の謎を解明するため、マンソン孤虫と芽殖孤虫のゲノムを決定し両者を比較した。芽殖孤虫のゲノムサイズは653 Mb、マンソン孤虫は796 Mbで、芽殖孤虫のゲノムでは16の遺伝子ファミリーが増大し、26の遺伝子ファミリーが縮小していた。増大していた遺伝子ファミリーは既知の遺伝子と相似性が低かったが、増大したファミリーの遺伝子には臓器分化、シグナル伝達、アポトーシスに関連するものがあった。これは、宿主内という定常環境に生息し臓器を持たないプレロセルコイドの活動を反映したものと考えられた。
著者
名和 行文 丸山 治彦 大橋 真 阿部 達也 緒方 克己 今井 淳一
出版者
宮崎医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

宮崎県下では1988年に我々が世界初のドロレス顎口虫人体感染確定診断例を見いだし、それ以前の7例の類似症例のうち皮膚生検で虫体が確認されていた2例からも、パラフィンブロックから虫体を剖出し、いずれもドロレス顎口虫幼虫であると同定した。それ以後も新規患者の発生が続き、延べ14例(虫体確認例4例)の患者を見つけた。問診上、14例中13例は渓流釣り愛好家あるいはその家族で、渓流魚の生食歴があり、これが感染源として重要であると推測された。また、1例はマムシ生食の既往歴がある。患者への感染源、および流行地域でのドロレス顎口虫の生活環を明らかにする目的で、まず終宿主である野生のイノシシについて調査を実施したところ、宮崎県の中央山地では現在でもほぼ100%の感染率であった。また、雌成虫より虫卵を取り出し、人工孵化して得た第1期幼虫を第1中間宿主である冷水型ケンミジンコに感染させて、第3期幼虫を得ることができた。次に、第2中間宿主や待機宿主について調査をおこなったところ、患者発生と密接な関係のある西都市銀鏡地区に棲息するマムシにはドロレス顎口虫幼虫が濃厚にしかも100%という高率で寄生しており、この幼虫をブタに感染させたところ成虫が回収された。さらに同地区で捕獲されたシマヘビも幼虫を保有していた。聞き取り調査によると野生のイノシシはヘビ類を食するということなので、自然界の生活環のなかでヘビが重要であると推察される。患者への感染を源として、問診では渓流魚が感染源となっている可能性が高い。そこで我々はヤマメについて約200匹を検査したが、これまでのところ幼虫を検出することはできなかった。また、1990年にはブル-ギルを刺身にして食した夫婦が同時に発症したため、一ツ瀬ダムにて捕獲したブル-ギル約200匹についても検査をしたが、幼虫は発見できなかった。したがって今後更に多数の検体についての調査を実施する必要がある。
著者
立石 美加 堀井 洋一郎 丸山 治彦 名和 行文 土屋 公幸 牧村 進
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.491-494, 1997-06-25

ミラルディア(Millardia meltada)のIgG抗体をイムノアフィニティークロマトグラフィー法で精製し, ウサギ抗血清を作成した. この抗体を用いて, 寄生虫特異的ミラルデイア抗体をELISAにて測定したところ, 従来の方法に比べ著しい感度の上昇が認められた. ミラルデイアはStrongyloides venezuelensisとNippostrongylus brasiliensis感染に対して効率的な抗体産生を行っていることから, この動物の寄生虫に対する高感受性は一般的な免疫不全によるものではないと考えられる.