著者
丸山 浩明 宮岡 邦任 仁平 尊明 吉田 圭一郎 山下 亜紀郎 ドナシメント アンソニー
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

アマゾンに建設された代表的な日本人移住地であるマウエスの日系人農場をおもな事例として、氾濫原(ヴァルゼア)と台地(テラフィルメ)という異質な生態空間を巧みに利用した、低投入持続型農業(LISA)を基幹とする住民の複合的な生活様式を明らかにした。事例農場は、ヴァルゼアとテラフィルメの両方に牧場を所有し、船で牛を移牧して周年経営を実現している。一定期間浸水する前者は乾季、浸水しない後者は雨季の放牧地である。テラフィルメ林は、焼畑農業や狩猟採集の場でもある。また、船を使った行商は現金収入を得る重要な農外就業であった。河川環境を利用した複合経営は、アマゾンでの生活の持続性や安定性の基盤となってきた。
著者
丸山 浩明
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.121, no.5, pp.799-814, 2012-10-25 (Released:2012-12-05)
参考文献数
55

This paper begins with a review of the progress of scientific geography in Brazil, and proceeds to explain academic exchanges between Japan and Brazil. The results are summarized as follows: (1) Geography in Brazil made great breakthroughs in the 1930's by actively absorbing scientific geography from Western nations, especially from France. (2) The notable progress in Brazilian geography owes much to the contributions of academic societies established in the 1930's, i.e., Institute Brasileiro de Geografia e Estatística (IBGE), Conselho Nacional de Geografia (CNG), Associação dos Geógrafos Brasileiros (AGB), and several leading universities. (3) Academic exchanges between Japan and Brazil in the field of geography started after World War II, when Japan resumed diplomatic relations with Brazil. The main subject of early research by Japanese geographers was the adaptation and settlement process of Japanese immigrants in Brazil. (4) From 1966, overseas scientific research expeditions by members of Tokyo University of Education and the current University of Tsukuba were conducted under Grant-in-Aid for scientific research. (5) Brazil has achieved great economic growth as a member of the BRICs. Social and environmental problems caused by rapid agricultural and fuel development have been the main subjects of Brazilian studies.
著者
丸山 浩明
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
Geographical review of Japan, Series B (ISSN:02896001)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.104-128, 1992-12-31 (Released:2008-12-25)
参考文献数
48

本研究では,浅間火山山麓での実証的な先行研究の成果を踏まえ,まず集落の起源や形態,集落(もしくは農家)を核とする農業的土地利用の種目構成とその空間的配列状況に着目して,火山山麓の農業的土地利用パターンを低位土地利用パターン (A類型),中位土地利用パターン (B類型),高位土地利用パターン(C類型)の散村型 (C1型)と集村型 (C2型)に類型区分した。そして,それぞれの類型の実態とその分布状態の特質を,中部日本の主要な火山山麓全域において検討した。 水稲を中心に果樹,野菜の組みあわせに特徴づけられる低位土地利用パターンは,河川や湧泉,溜池などに隣接した水利条件の良い低平な場所で卓越する。 A類型の主要な分布域は,火山山麓の最下部にあたる標高約700m以下の高度帯に認められる。中位土地利用パターンは,水稲,果樹,野菜,工芸作物を中心に,飼料作物や花卉一苗木類までが混在する多様な土地利用種目構成に特徴づけられる。 B類型の主要な分布域は,水田卓越地帯から畑地卓越地帯への移行部に対応する,火山山麓中腹の標高約1,000m以下の高度帯である。野菜を中心に飼料作物,花卉一苗木類,水稲が組みあわさった高位土地利用パターンは,火山山麓最上部の高冷地を中心に認められる。 C類型のなかで,散村型(C1型)は第二次世界大戦後のいわゆる戦後開拓集落など新開地の土地利用を反映する類型で,自立型の野菜栽培や畜産経営が卓越する。一方,旧集落を代表する集村型 (C 2型)では,戦後大規模な夏野菜栽培が著しく進展した。 C類型の主要な分布域は,一般に火山山麓最上部の標高約900~1,400mの高度帯である。 浅間火山山麓で実証された農業的土地利用パターンの類型分布の垂直的地帯構造は,より広範な中部日本の主要な火山山麓全域においても認められる一般的かっ基本的な特質であることが本研究で明らかになった。これは,中部日本の火山山麓が歴史的に極めて類似した開発過程を辿ってきたこと,土地利用を規定する水利,気温,地形(起伏),土壌などの自然的諸条件や,開拓地・旧集落の立地形態,交通条件,国有地や入会地の分布といった経済・社会的諸条件の特質に,中部日本火山山麓特有の共通性があることなどに起因していると考えられる。
著者
丸山 浩明 宮岡 邦任 仁平 尊明 吉田 圭一郎
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

ブラジルの南パンタナールを研究対象に,住民が世代を越えて継承してきた湿地管理のワイズユース(wise use,賢明な利用)を発掘し,その有効性を検証した。パンタナールでは,雨季にアロンバード(自然堤防の破堤部)から内陸部へと水を引き込み,水位が低下する乾季にはアロンバードを閉鎖して浸水域を消失させることで,木本種の侵入による草地の森林化に向かう植物遷移を抑制し,良質な天然草地の維持・形成を実現してきたことが明らかになった。