著者
丹野 清人
出版者
福祉社会学会
雑誌
福祉社会学研究 (ISSN:13493337)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.13-31, 2019-05-31 (Released:2019-10-10)
参考文献数
10

憲法上は日本にも外国人の人権はある,ということになっている.ただし,外国人の人権は日本人のそれとは大きく異なる.在留資格の中で,職業選択の自由も,住居の選択の自由も制限がかかることを当然のこととしており,日本人であればありえない自由の制限は予定されている.「自由」の意味が国民である日本人とは全く異なっているのだ.人の得ることができる「自由」の意味が異なるということは,自由を保障するシティズンシップもまた,日本人と外国人とでは異ならざるを得ない. しかし,その一方で,外国人の人権があることは日本でも自明のことであるから,様々な社会福祉の対象に外国人が俎上にのることは当然であるのだ.本稿は,どのようにして外国人が具体的な社会福祉の課題の対象になってきたのかということから,外国人の「シティズンシップ」を考察する.生活保護や児童扶助等の福祉に行政がどのように取り組まなければならないとされてきたのかを,行政の運用の問題として捉え,行政運用の中に成立する福祉の供給を「運用上のシティズンシップ」として検討していく.
著者
丹野 清人
出版者
首都大学東京
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

外国人労働者またはその家族として日本でやって来た者で、何らかの罪を犯してしまった者、しかしその犯した罪が軽微なものであって、刑務所には収監されておらず、執行猶予判決であったにもかかわらず、日本滞在に必要なビザの更新の際に、その軽微な犯罪を根拠に退去強制令が発令されたケースの事例研究を行った。法務省が公示する司法統計にも現れない部分のケースであり、極めてセンシティブな問題を扱うため、調査は弁護士事務所に通い、弁護士にあらかじめ見ていいと許可を受けた資料で、その資料で個人情報が記載されている部分に予めマスキングしてもらってケーススタディを行った。なお、弁護士事務所内でとったノートを事務所外に持ち出す際には、弁護士にノートを確認してもらい、個人情報の持ち出しに当たる部分がないことを確認した。また、本年度に発表した公刊物『「外国人の人権」の社会学」や論文等において公表する際にも、今一度弁護士に全てをチェックしてもらってから公表した。また、日系人の少年で少年非行に走ってしまい、その少年非行での犯歴が原因となり退去強制令が発布されて、ブラジルに強制送還された少年3人にサンパウロ市内でインタビューをしてきた。日本から出国するときには少年であったが、インタビュー時点ではいずれも23歳以上になっていた成人であったが、ブラジルでのインタビューは首都大学東京が学術交流協定を持っているサンパウロ大学に来てもらい、サンパウロ大学の倫理規程にあった形でインタビューを行った。当初、少年期に強制的に帰国させられて、帰国後の適応がうまくいっていないことを想定していたが、単純にはそのように想定できないものであることがブラジル調査で確認された。
著者
加藤 哲郎 田中 ひかる 丹野 清人 堀江 孝司 小野 一 岡本 和彦 井関 正久 大中 一彌 高橋 善隆 鳥山 淳 島田 顕 許 寿童
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、研究代表者が長年進めてきた現代国家論研究と近年取り組んでいる情報政治研究の結節点で、経済のグローバル化と共に進行する国内政治の国際政治化、国際政治の地球政治化を解析した。モノ・カネ・ヒトが国境を越える「帝国」型グローバル政治の形成と、そのもとで進行する民衆の移動・越境・脱国家化の動きに注目し、既存の概念の変容と新しい課題を実証的な国際比較と歴史的・思想的系譜から考察した。