- 著者
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石田 明生
中田 喜三郎
青木 繁明
沓掛 洋志
岸 道郎
久保田 雅久
- 出版者
- 日本海洋学会
- 雑誌
- 海の研究 (ISSN:09168362)
- 巻号頁・発行日
- vol.11, no.2, 2002-03-05
北太平洋における水塊とフロンの分布と特徴を,海洋大循環モデル(GCM)によって調べた。さらにGCMの実験によって得られた移流と拡散場を用いて,海洋による人為起源のCO_2の取り込み量を見積もった。GCM実験において用いられる拡散のパラメータ化と海面外力の違いが,CO_2の取り込み量に与える影響を,三つの実験によって調べた:すなわち,これまでの多くのモデルで用いられてきた水平・鉛直拡散過程による実験(RUN1),等密度面拡散を導入した実験(RUN2),等密度面拡散とともに,水温と塩分に冬季の海面境界条件を与えた実験(RUN3)である。水塊とフロンの現実的な分布は,等密度面拡散モデルによって再現された。水平・鉛直拡散のモデルは塩分極小や現実的なフロンの侵入を再現できなかった。塩分極小層の深さは冬季の外力のもとで,よりよく再現された。これらの結果は等密度面拡散と冬季外力の両者が,モデルによる水塊とフロンの再現に必須であることを示唆している。RUN3で得られた移流と拡散場を用いた人為起源のCO_2の海洋による取り込み量は,1990年において19.8Gt Cであった。この値は水平・鉛直拡散過程を用いたRUN1の結果より約10%大きい。これまでのモデルが,人為起源のCO_2の吸収源と考えられている中層の水塊構造をよく再現できなかったことから,本研究の結果は,これまでのモデルが海洋による人為起源CO_2の取り込み量を小さく見積もっていたことを示唆している。