著者
乾 陽子
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.413-419, 2016 (Released:2016-08-24)
参考文献数
35

ランビルの森に優占するフタバガキ科の林冠木の樹冠には、シダやランなどの着生植物が多く見られる。こうした着生植物が提供する微小生息場は、主として樹上性のアリ類が占有している。特に、着生のシダ(ウラボシ科)2種は、明瞭なドマティア(空隙構造)を有し、そこに著しく攻撃性の高いシリアゲアリが排他的に営巣する。このアリ種により、他の樹上性のアリ類やシロアリ類が少なくなるだけでなく、シダや林冠木の食害も低く抑えられていることがわかった。極めて多様性の高い樹冠において、シリアゲアリと着生シダのコンビネーションは多様な他種を排除し画一化を促進しているようにも見えるが、着生シダのドマティアには、この強力なアリの攻撃をかわし好適な微小生息場を得る好蟻性の節足動物が複数生息していた。そのなかで極めて豊富だったのが新属新種のゴキブリである。特筆すべきはこのゴキブリ種が自身の化学的プロフィールをアリコロニーに蔓延させ、多くの好蟻性昆虫に知られる化学擬態とは異なる方法でアリ巣に潜入していたことである。シリアゲアリ種は、着生シダさえあれば樹冠に君臨し高い排他性を示す一方で、化学的セキュリティーを致命的に欠くように見える。一方、同じ調査地に分布する亜高木のオオバギ属(トウダイグサ科)アリ植物にも植物を防衛するアリの攻撃をかわし、特定のオオバギ種を専食するムラサキシジミ類(シジミチョウ科)の幼虫が知られている。このムラサキシジミ類もまた、よく知られた好蟻性昆虫の化学擬態とはまったく異なる特徴的な化学的戦略をもつと示唆される化学プロフィールを示した。熱帯雨林地域にのみ進化したアリ植物の共生系は、単に防衛アリと植物の相利的関係としても種間関係の強度が多様であることがこの十数年で明らかになったが、さらにその共生系に便乗する好蟻性昆虫も非常に多様であり、そのなかにはこれまで知られていなかった種間関係やその化学的な維持機構が潜んでいる。
著者
梅原 頼子 藤原 いすず 川村 亜由美 乾 陽子 福永 峰子 山田 芳子
出版者
鈴鹿大学短期大学部
雑誌
鈴鹿国際大学短期大学部紀要 (ISSN:13450085)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.105-119, 2006

運動部に所属する高校生・大学生に食生活調査を行い、次のような結果を得た。1)牛乳の摂取頻度では、高校野球部の75%が「毎日」飲んでいた。2)豆類の摂取頻度では、高校サッカー部が他の運動部に比べ低かった。3)お菓子の摂取頻度では、高校サッカー部が高かった。お菓子の種類は、全ての運動部で「スナック菓子」が8割程度であった。4)エネルギー、カルシウム摂取量では、高校野球部が他の運動部よりも高かった。5)高校野球部は食意識の高いことが伺えた。
著者
中西 晃 東 若菜 田中 美澄枝 宮崎 祐子 乾 陽子
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.125-139, 2018 (Released:2018-08-02)
参考文献数
133

林冠生物学は、生物多様性や生態系機能が局在する森林の林冠において、多様な生物の生態や相互作用、生態学的な機能やプロセスの理解を目指す学問である。林冠は高所に存在し複雑な構造を有するため、林冠生物学研究の飛躍的な進展は1980年代以降の林冠アクセス手段の発達に拠るところが大きい。様々な林冠アクセス手段の中でも、ロープテクニックを駆使して樹上にアクセスするツリークライミングは道具を手軽に持ち運べることから移動性に優れ、対象木に反復してアクセスすることが可能である。また、林冠クレーンや林冠ウォークウェイなどの大型アクセス設備に比べて経済的であるという利点が活かされ、林冠生物学研究に幅広く適用されてきた。近年では、ツリークライミングの技術や道具の発展によって安全性や作業効率の向上が図られており、今後ますます活用されることが期待されている。本稿では、ツリークライミングを用いた林冠生物学の研究例を紹介しつつ、樹上調査における林冠アクセス手段としてのツリークライミングの有用性を示す。さらに、ツリークライミングを用いた林冠生物学研究の今後の展望および課題について議論する。移動性、経済性、撹乱性に優れたツリークライミングは、場所の制限を受けないため、あらゆる森林での林冠生物学研究において今後も重要な役割を担うと考えられる。また、他の林冠アクセス手段や測定機器と併用することでさらなる進展が期待される。一方、安全かつ有効なツリークライミングが普及するためには、研究調査以外の領域も含めたツリークライミング・ネットワークの形成と情報共有のためのプラットフォームづくりが急務である。
著者
前澤 いすず 梅原 頼子 乾 陽子 福永 峰子 久保 さつき 山田 芳子 Isuzu MAEZAWA Yoriko UMEHARA Yoko INUI Mineko FUKUNAGA Satsuki KUBO Yoshiko YAMADA 鈴鹿短期大学 鈴鹿短期大学 鈴鹿短期大学 鈴鹿短期大学 鈴鹿短期大学 鈴鹿短期大学 Suzuka Junior College Suzuka Junior College Suzuka Junior College Suzuka Junior College Suzuka Junior College Suzuka Junior College
出版者
[鈴鹿短期大学図書委員会]
雑誌
鈴鹿短期大学紀要 = Journal of Suzuka Junior College (ISSN:13450085)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.223-232, 2008-01-01

扎魯特旗の農牧地域の成人住民および魯北モンゴル族実験小学校において、中国・内モンゴル族の食生活状況、身体状況や身体活動状況の実態を把握することを目的に調査を行い、次のような結果を得た。1)小学生は日本人よりも成長が遅く、その後40 歳までに体重が日本人よりも重くなる。2)成人男性は100%、成人女性63.9%が高血圧であった。3)骨量・水分モニター測定では、小学生は標準体型であり、その後、骨量・脂肪量が増加して、骨太の肥満型に成長する。4)奶茶の摂取量は、1 日1ℓ~2ℓであり、他の乳製品も摂っていた。5)起床時間は4時頃であり、1日の歩数は15,000 歩以上であった。We surveyed the Mongolian food lives and their physical conditions by interviewing the Mongolian people living in Jarud qi (village) and the Mongolian pupils attending to the neighboring elementary school, Ln Bei in Neimenggu (Inner Mongolia), China. The summary of the study is as follows;1) The growing rate of the pupils in the school is rather slower than Japanese pupils but the weight of them has been increasing until they'll reach the age of forty.Most of Mongolian adults are heavier than Japanese adults.2) 100% of the male adults suffer the high blood pressures and 63.9% of the female adults suffer the high blood pressures too.3) By the measurement of their bone and moisture-quantity in their bodies, the pupils keep the normal and standard levels. But as they grow year after year, their bone and fat-uantities in the bodies increase and become fat and big-boned.4) In their daily life they take 1~2 liter of Nai Tea (milk tea) per day and also they drink lots of milk.5) They get up at around 4 o'clock early in the morning and they walk more than 15,000 strides a day.
著者
乾 陽子 前澤 いすず 三浦 彩 山田 芳子
出版者
鈴鹿大学短期大学部
雑誌
鈴鹿短期大学紀要 (ISSN:13450085)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.219-230, 2010

成長期にある高校生にとって、健全な食生活は健康な心身を育むために欠かせないものであり、将来の食習慣の形成、次世代育成に影響を及ぼすものであり極めて重要である。今回彼らの食生活を調査した。結果は次のとおりである。1)多くの生徒は食品や栄養への興味関心が少なく、食事をバランスよく食べようと心がけている者は36.8%であった。2)朝食の欠食率が26.9%で、その理由の多くは、朝食を食べる時間がないためである。3)三食を食べようとする意識のある生徒のほとんどが毎日朝食を食べており、食事のとき挨拶をする頻度も高い。4)約半数の生徒が料理を作ることができ、チャーハン、カレーが作れるという生徒が多い。5)朝食を1人で食べる生徒が46.5%おり孤食が目立つ。6)食事のマナーを注意される生徒は62.7%で、食べるときの姿勢を注意される者が最も多い。7)約半数の生徒が正しい箸の持ち方をしていた。