著者
福岡 梨紗 五味 郁子
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.277-284, 2022 (Released:2022-05-01)
参考文献数
25

本研究は、訪問診療利用高齢者の栄養状態の評価・判定を行い、「低栄養」または「低栄養のおそれあり」に判定された者かつ、「食べることに対する義務感がある」者を「摂食困難」と定義し、在宅療養高齢者の摂食困難の実態として、対象者の属性や身体計測値、栄養・食事に対する自己評価との関連を検討した。対象者は、A市内の診療所Bの訪問診療を月1回以上利用している65歳以上の療養者28人であった。MNA®-SFにて、「低栄養」および「低栄養のおそれあり」と判定された者は21人(75.0%)、「栄養状態良好」と判定された者は7人(25.0%)であった。前者のうち、「食べることに対する義務感がある」摂食困難群に該当する者は10人(35.7%)、「食べることに対する義務感がない」非摂食困難群に該当する者は11人(39.3%)であった。摂食困難群の平均年齢は78.5±7.1歳であり、3群間に有意な差は認められなかったが、非摂食困難群86.3±7.5歳と比較し、有意に低値を示した(p=0.025)。BMI、%AMCは、3群間に有意な差が認められ(p=0.043)(p=0.027)、摂食困難群は良好群と比較し有意に低値を示した。訪問診療利用高齢者は、低栄養のリスクが高いことが明らかになった。 また、摂食困難群が持つ食べることに対する義務感は、在宅療養高齢者の年齢が低いことが関係していることが示唆された。
著者
五味 郁子
出版者
神奈川県立保健福祉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

地域で暮らす生活保護受給者や高齢者は、食生活や身体状況、生活状況の変化による低栄養の予防が必要である。一方、地域には、住民の食生活をサポートする地域資源が多様に存在している。そこで本研究は、個別の食生活状況に応じて、必要な食生活サポート地域資源(サービス)をコーディネートするインターネット活用型システム「食生活サポートナビ http://shoku-support.com」を構築した。
著者
谷口 英喜 秋山 正子 五味 郁子 木村 麻美子
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.359-366, 2015-10-25 (Released:2015-12-24)
参考文献数
14
被引用文献数
2 2

目的:介護老人福祉施設の通所者におけるかくれ脱水(脱水の前段階)の実態調査を行い,非侵襲的なスクリーニングシートを開発することを目的とした.方法:介護老人福祉施設の通所者70名を対象に血清浸透圧値を計測し,かくれ脱水(体液喪失を疑わせる自覚症状が認められないにもかかわらず,血清浸透圧値が292から300 mOsm/kg・H2O)の該当者を抽出した.該当者において,脱水症の危険因子および脱水症を疑う所見に関してロジスティック回帰分析を行い,オッズ比を根拠に配点を行った.配点の高い項目から構成される高齢者用かくれ脱水発見シートを作成し,該当項目に応じた合計点毎の感度および特異度を求め,抽出に最適なカットオフ値を探索した.結果:かくれ脱水の該当者は,15名(21.4%)であった.先行研究のかくれ脱水発見シートを改良し,①女性である(4点),②BMI≧25 kg/m2(5点),③利尿薬を内服している(6点),④緩下薬を内服している(2点),⑤皮膚の乾燥や,カサつきを認める(2点),⑥冷たい飲み物や食べ物を好む(2点),の6項目から構成される高齢者用かくれ脱水発見シートを考案した.このシートにおいて,かくれ脱水である危険性が高いと考えられるカットオフ値は,9点(合計21点)に設定した(感度0.73,特異度0.82;P<0.001).結論:高齢者においては,脱水症の前段階であるかくれ(潜在的な)脱水が一定の割合で存在し,非侵襲的なスクリーニングシートにより抽出が可能である.