著者
井上 和秀
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.137, no.5, pp.563-569, 2017-05-01 (Released:2017-05-01)
参考文献数
17
被引用文献数
4 11

A growing body of evidence indicates that extracellular ATP released or leaked from nonexcitable cells as well as neurons plays important roles in the regulation of neuronal and glial functions in the entire body through ATP receptors. ATP receptors (ionotropic P2X and metabotropic P2Y receptors) are the most abundant receptor families in living organisms. In the central nervous system, these receptors participate in the synaptic transmission and intercellular communications between neurons and glia. The glia cells are classified into three types: astrocytes; oligodendrocytes; and microglia. There are many reports that spinal microglia express ATP receptors (P2X4, P2X7, P2Y6, and P2Y12 receptors) that have very important roles. We reported that several molecules of microglia are activated after peripheral nerve injury in a neuropathic pain model. In particular, P2X4 receptors (P2X4Rs) expressed in microglia play a critical role in evoking neuropathic pain. P2X4Rs are upregulated in spinal microglia after nerve injury by several factors such as the CC chemokine receptor CCR2, fibronectin in the spinal cord, interferon regulatory factor (IRF) 8, and IRF5 expressed in microglia. The inhibition of P2X4R action suppresses the functions of microglia and neuropathic pain. These results indicate that overexpressing P2X4Rs on microglia are a central player in evoking neuropathic pain.
著者
井上 和秀 齊藤 秀俊 津田 誠 増田 隆博
出版者
九州大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2013-06-28

ミクログリア特異的IRF8欠損マウスでは、社会的認識能が選択的に低下していることが認められた。また、正常では脳内の定位置で細胞突起を動かしているミクログリアが、IRF8欠損マウスでは細胞体ごと脳内を移動していることを見出した。また、時期特異的・ミクログリア特異的IRF8欠損マウスでも、同様の突起形成異常と形態変化が再現されることを見出し、IRF8がミクログリアの形態の維持に関与する転写因子であることを明らかにした。ミクログリアの形態・機能異常が脳の回路形成に影響を及ぼして高次機能の発現に混乱をもたらし、ミクログリアの正常な活動が脳の回路形成や高次機能の維持にも寄与すると考えられた。
著者
井上 和秀 池永 敏彦 大橋 裕
出版者
日本生薬学会
雑誌
生薬学雑誌 (ISSN:00374377)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.99-105, 1977-06-20

山口県秋吉台で採取したセンブリSwertia japonica MAKINO種子を1ヵ月おきに60日間低温(2°湿潤状態)で処理し,1975年2月から4月まで月1回は種した.また,対照として無処理(室内保存)種子を1974年12月から1975年4月まで月1回低温処理と各月の同じ日には種した.試験は鉢を用いて,ファイロンハウス内でおこなった.1)発芽は2月まきでよく,4月まきはひじょうに悪かった.2)発芽への低温処理の効果は3月まきと4月まきにあらわれ,発芽はよくなかった.3)生存個体数は1月〜3月まきで多かったが,なかでも2月まきがやや多くなる傾向があった.4)生長への低温処理の効果は3月まきと4月まきの1年生植物にあらわれたが,1年生の終わり頃からなくなり始め,2年生植物にはまったくみられなかった.5)鉢あたりの収量は4月まき無処理で少なかったが,あとの区間には差がなかった.6)暖地でのは種適期は1月〜2月といえるが,なかでも2月が最適時期といえそうであった.

1 0 0 0 OA ATPと痛み

著者
津田 誠 小泉 修一 井上 和秀
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.116, no.6, pp.343-350, 2000 (Released:2007-01-30)
参考文献数
50

ATP受容体が痛みの発生と伝達にどのように関与しているかについてその可能性も含めてまとめた.イオンチャネル型ATP受容体のなかでも,P2X3はカプサイシン感受性の小型脊髄後根神経節(DRG)神経細胞に局在し,急速な不活性化を伴う内向電流の発現に寄与し,末梢側ではブラジキニンに匹敵するような痛みを引き起こす.さらに, nocifbnsive behavior および themlal hyperalgesia 発現に関与している事が推測される.脊髄後角ではP2X3はDRG中枢端からのグルタミン酸放出を促進することにより痛み伝達を増強するようである.一方,P2X2とP2X3のヘテロマー受容体は,カプサイシン非感受性のやや中型DRG神経細胞に局在し,比較的緩徐な不活性化を伴う内向電流の発現に寄与する.行動薬理学的にはこのヘテロマー受容体は mechanical allodynia の発現に関与していることが推測されている.なおGタンパク共役型ATP受容体は,痛みとの直接の関与については未だ証明されていないが,それを示唆する状況証拠はかなり蓄積されており,特に病態時の関わりについて今後の研究が待たれる.