- 著者
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井上 正康
- 出版者
- 日本ビタミン学会
- 雑誌
- ビタミン (ISSN:0006386X)
- 巻号頁・発行日
- vol.78, no.9, pp.458-460, 2004-09-25
- 被引用文献数
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通常, "疲労"と言えば"肉体疲労"と"精神疲労"に分類されるが, 風邪や慢性炎症などでも強く疲労を感じ, いずれの場合も"しんどい"と感じる. このことは, 筋肉病態, 感染病態, あるいは精神病態が誘起した変化を同じ病態情報として認識する脳の"疲労検知中枢"が存在することを意味する. UVAは体表組織の葉酸を破壊して成長不良を誘起するが, 遺伝子毒性の強いUVBはコレステロールからビタミンD前駆体を合成してクル病を予防する. アフリカ大地溝帯で産まれた人類の祖先は, 紫外線のプラスとマイナスの効果がちょうど折り合うニッチで, 黒人, 黄色人種および白人として環境に適応分布してきた. しかし, 大航海時代以後, 移動システムの進歩, 植民地政策, 奴隷貿易などにより, 肌の色や紫外線感受性とは無関係に人種の分布が混ざり合ってきた. オーストラリアの珊瑚礁などで1時間ほど太陽光を浴びると皮膚細胞の遺伝子に約10万個もの傷がつきメラノーマが生じる. このため, オーストラリアの70歳以上の白人男性の約半数は皮膚癌に悩まされている. 皮膚をUVBで照射すると日焼けすることは常識であるが, 実は「眼に紫外線を当てても皮膚が黒くなる」という驚くべき現象がみつかった.