著者
安田 雅俊 関 伸一 亘 悠哉 齋藤 和彦 山田 文雄 小高 信彦
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.227-234, 2017 (Released:2018-02-01)
参考文献数
37
被引用文献数
2

現在沖縄島北部に局所的に分布する絶滅危惧種オキナワトゲネズミTokudaia muenninki(齧歯目ネズミ科)を対象として,過去の生息記録等を収集し,分布の変遷を検討した.本種は,有史以前には沖縄島の全域と伊江島に分布した可能性がある.1939年の発見時には,少なくとも現在の名護市北部から国頭村にいたる沖縄島北部に広く分布した.外来の食肉類の糞中にオキナワトゲネズミの体組織(刺毛等)が見つかる割合は,1970年代後半には75–80%であったが,1990年代後半までに大きく低下し,2016年1月の本調査では0%であった.トゲネズミの生息地面積は,有史以前から現在までに99.6%,種の発見時点から現在までに98.4%縮小したと見積もられた.
著者
石田 健 宮下 直 服部 正策 山田 文雄 石井 信夫 前園 泰徳 亘 悠哉 川崎 菜実
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

多様な固有種のいる生態系に、国際自然保護連合が「最も危険な外来種100種」に指定しているジャワマングースによる被害の出ていた奄美大島において、マングースの餌ともなる外来種クマネズミ、両種に捕食される鳥類とイシカワガエル、動物個体群に大きく影響するスダジイ堅果結実量、の動態を調べ、生態系管理の基礎情報を得た。研究成果をふまえ、国内外で外来種管理の重要性と可能性を説明した。
著者
亘 悠哉
出版者
独立行政法人森林総合研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本研究では,外来捕食者と生息地改変の複合的な影響を明らかにすることを目的とし,21年度はデータ解析と論文執筆を主に実施した.以下に概要を述べる.1.外来捕食者根絶後の生態系の回復外来捕食者の根絶後の在来生物群集の回復が,環境要因によって異なるかどうかを調べるために,年度の後半はパリ第11大学に滞在し,フランス領ニューカレドニアのサプライズ島で,生物群集の調査を行った.この島の生息地は,木本パッチと草本パッチからなり,外来種クマネズミ根絶後の在来生態系の回復の異なる生息地間での違いを明らかにするのに適している.根絶前後での在来種群集の生息データと比較すると,ウミドリ類,トカゲ類,植物,無脊椎動物類のすべてで顕著な回復が見られた.また,この回復の度合いは環境間で異なり,開けたパッチほど回復が顕著であった.これは,開けたパッチは,外来種の捕食圧の軽減の効果だけでなく,植生もより大幅に回復しており,これが在来生物の隠れ家や餌を提供するという,相乗効果が見られたと考えられた.環境の違いによる復元の違いを示したのは本研究が初めてであろう.これらの成果をカナダでの国際学会で発表し,外来種の根絶についての論文集に受理された.2.外来種対策が引き起こす想定外の現象の総説良かれと思って実施した外来種対策が,想定したほど効果がなかったり,時には逆効果になってしまうことがある.こういった事例は個々に報告されてはきたが,その概観がまとめられたことはなく,現場の担当者が生じている現象を正しく診断し,適切な対処法を講じていくのは難しい状況にあった.今回はこうした想定外の事例について,潜在する生態学的プロセスとそれに応じた対処法をまとめた.これは,今後,より効果的な外来種対策を実施していくのに役立つであろう.