著者
関 伸一 安田 雅俊
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.S1-S8, 2021 (Released:2021-03-22)
参考文献数
19

瀬戸内海の南縁にあたる豊予海峡の高島(大分県)でオオミズナギドリ Calonectris leucomelas の新たな集団繁殖地を発見した.内部に土砂の堆積がなく過去数年以内に利用された可能性のある巣穴の確認数は122個,既知の巣穴の分布範囲の面積は0.28haであった.北側には瀬戸内海唯一の繁殖地である宇和島,南側の豊後水道には沖黒島,小地島がいずれもほぼ等距離に位置しており,高島はこの地域の小規模繁殖地の存続と遺伝子流動において重要となるかもしれない.繁殖地に設置した自動撮影カメラでは巣穴に出入りするオオミズナギドリとともに,捕食者となる可能性のあるクマネズミ属の種 Rattus sp.,特定外来生物であるクリハラリス Callosciurus erythraeus,ハシブトガラス Corvus macrorhynchos が撮影された.高島のクリハラリスは継続的な捕獲により個体数が減少傾向にあるが,その影響でクリハラリスと食物の一部が競合するクマネズミ属の種が増加する可能性があり,今後の経過をモニタリングする必要があるだろう.
著者
関 伸一
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research
巻号頁・発行日
vol.6, pp.A1-A11, 2010

2009年7月22日に起こった皆既日食の際に,トカラ列島中之島における鳥類の音声行動の変化を調査した.森林内の3地点にデジタル録音装置を設置し,皆既となる6分間とその前後各1時間の2時間6分間の録音を行ない,1分あたりのさえずりまたは地鳴きの回数を種ごとに記録した.また,日食の前日および翌日の同じ時間帯における録音記録(各2地点)と,日没および日出の時間帯における録音記録(各1地点)との比較を行なった.鳴き声や記録された種は17種で,昼行性の鳥類のさえずりや地鳴きなどの音声行動は,調査地点や天候による記録頻度の変動はあるものの日中は継続的に観察され(平均16.4回/分),2分以上にわたって途切れることはなかった.しかし,皆既となる時間帯を含む平均7分49秒間には昼行性の種の鳴き声が全く記録されず,1地点では夜行性のリュウキュウコノハズクが記録された.このような現象は皆既日食にともなう明るさの変化の影響による可能性が高いと推測された.皆既前後の行動と日出・日没時の行動とでは類似点はあるものの異なる部分も多く,日出前後に見られる明るさの変化につれて優占して鳴く種が交代する現象や,日没時刻の約10分前のまだ明るいうちに昼行性の小鳥類の鳴き声が希になってフクロウ類が記録されるようになる現象などは皆既日食前後には観察できなかった.
著者
安田 雅俊 田村 典子 関 伸一 押田 龍夫 上田 明良
出版者
国立研究開発法人森林研究・整備機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

大分県の無人島(高島)において特定外来生物クリハラリスの個体群を対象として①いかに個体数を減少させるか、②いかに残存個体を発見しするか、③外来リス根絶後の生態系の回復過程をいかに把握するかを検討した。異なる防除オプション(生捕ワナ、捕殺ワナ、化学的防除)の組合せが迅速な根絶達成に必要と結論した。クリハラリスの化学的防除の試験を行い、生態系への負の影響を最小化する技術を開発した。ベイト法は低密度個体群において有効と結論した。防除開始直後の高島の生物群集(鳥類と昆虫類)に関するデータを得ることができた。これは高島におけるクリハラリス地域個体群の根絶後における生態系回復の理解において重要となる。
著者
関 伸一
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.A35-A48, 2012 (Released:2013-01-17)
参考文献数
17

トカラ列島の3つの無人島(臥蛇島,上ノ根島,横当島)に上陸して直接観察を行なうとともに,森林内に自動記録装置(赤外線センサー式自動撮影カメラとタイマー機能付録音機)を1年以上にわたり設置して鳥類相を調査した.3島で記録された種数はそれぞれ40 種,30 種,28 種であったが,繁殖の可能性が示唆された種は 13 種,9種,8種であった.直接観察でのみ記録されたのは海鳥類やサギ科など森林を利用することが稀な種であった.また,いずれの島でも自動記録装置でのみ記録された種が約3分の1を占め,渡りの途中で一時的に滞在したり,越冬したりする渡り鳥で,上陸調査の実施可能な時期には観察しにくい種が多く含まれた.森林性で繁殖していると推測された種は複数の手法で共通して記録されることが多かったが,繁殖の可能性を判断する根拠となったのは主に録音機による繁殖期の連続的なさえずりの記録であった.自動記録装置は,動作安定性に課題が残されてはいるが,遠隔地では非常に効果的な調査手法であることが明らかになった.
著者
西海 功 山崎 剛史 濱尾 章二 関 伸一 高木 昌興 岩見 恭子 齋藤 武馬 水田 拓
出版者
独立行政法人国立科学博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

日本列島の島嶼部を中心に分布する陸鳥類の14分類群(19種)について、異所的な集団の種分化と種分類に関する研究をDNA分析、形態学的分析、およびさえずりの音声分析を含む生態学的分析によっておこなった。日本列島の島嶼部を中心とした陸鳥の集団構造や種分化が極めて多様なことが示された。つまり、遺伝的な分析からは、南西諸島の地史を直接に反映した集団構造は陸鳥類では全くみられず、集団の分化のパターンが種によって大きく異なることがわかった。遺伝的に大きく分化している地理的境界線の位置も種によって異なるし、遺伝的分化の程度も分化の年代も種によって大きく異なることが示唆された。また、形態的分化や生態的分化の程度も種によって異なり、それらは必ずしも遺伝的分化の程度と相関しないことが推測された。近縁種の存否がさえずりの進化に影響する、すなわちさえずりの形質置換があったり、人為的環境の改変への適応が行動を通して形態的適応進化を促進したりすることがわかった。また、リュウキュウコノハズクやキビタキなど多数の種で亜種分類の見直しの必要性が示唆され、ウチヤマセンニュウなどいくつかの種では種分類の見直しの必要性が示唆された。今回の研究期間ではっきりと種・亜種分類の見直しの検討が出来たのはメボソムシクイ類とコトラツグミのみであったので、それ以外の見直しは今後の課題として残された。
著者
関 伸一
出版者
日経BP社
雑誌
日経ものづくり (ISSN:13492772)
巻号頁・発行日
no.706, pp.122-127, 2013-07

飯田工場ではマリンバやビブラフォン、ティンパニー、そして、のど自慢番組で合否判定時に鳴らされるのでお馴染みのチャイムなどの打楽器も製造している。ギターに続いてマリンバの製造工程も拝見した。 マリンバの基本構造は木の板を成形した音板の下方に…
著者
関 伸一
出版者
森林総合研究所
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.193-205, 2010 (Released:2012-12-03)

東シナ海北東部の男女群島でそれぞれ異なる季節に5回の鳥類調査を行って観察種を記載するとともに、これまで文献に記載されている記録の整理を行い、男女群島における鳥類の観察記録をリストとしてとりまとめた。現地調査では75種が観察され、これまでの記録と併せて179種となった。このうち確実な繁殖記録があるのは6種のみで、繁殖している可能性のある種を含めても18種であった。男女群島は、他の地域とは地理的に隔離されていることに加えて面積が限られているために、島嶼環境に適応したアカヒゲ、ウチヤマセンニュウなどの種が分布する一方で、ウグイスやカワラヒワなど面積の大きな島では広域的に分布する種の一部が欠落し、単純で特異な繁殖鳥類群集が生じたと推測される。 渡り鳥については、個体数に関する記録が少ないため、渡りの中継地としてのこの地域の重要牲を評価することは困難であった。しかし、春期の調査において高い割合で記録される渡り鳥があり、これらの種では男女群島を経由する渡りのルートを利用する個体が恒常的に存在すると推測された。
著者
八木橋 勉 渡久山 尚子 石原 鈴也 宮本 麻子 関 伸一 齋藤 和彦 中谷 友樹 小高 信彦 久高 将洋 久高 奈津子 大城 勝吉 中田 勝士 高嶋 敦史 東 竜一郎 城間 篤
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.131, 2020

<p>ヤンバルクイナは沖縄島北部のやんばる地域のみに分布しており、環境省のレッドリストで絶滅危惧IA類(CR)に分類されている。森林面積や外来種とヤンバルクイナの繁殖分布の関係を明らかにするため、沖縄島北部でプレイバック法による調査を2007年から2016年の繁殖期に3年ごとに4回実施し、確認個体数を応答変数とするGAMMによる統計解析を行った。その結果、ヤンバルクイナは、マングースが少ない場所ほど多い、広葉樹林面積が大きい場所ほど多い、畑地草地面積が大きい場所ほど多い、2007年と比較して近年確認個体数が増加している、という統計的に有意な関係がみられた。また、確認地点数も増加していた。これらの結果から、地上性のヤンバルクイナは、外来種であるマングースの影響を強く受けているが、マングース防除事業の効果により、近年分布が回復していると考えられた。ヤンバルクイナは広葉樹林面積が大きい場所で多いことから、近年大面積伐採が減少していることも分布回復に有利に働いていると考えられた。同時に畑地草地面積が大きい場所で多いことから、林内だけでなく、林冠ギャップ、林縁や草地なども生息環境として重要である可能性が考えられた。</p>
著者
関 伸一 安田 雅俊
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.33-40, 2018 (Released:2018-07-31)
参考文献数
48

クリハラリスCallosciurus erythraeusは日本各地で野生化し分布を拡大しつつある外来の樹上性リスであり,鳥類の巣で卵や雛を捕食して繁殖を阻害すると推測されているが,捕食行動の観察事例は稀である.そこで,クリハラリスが高密度に生息する大分県の高島において,鳥類の巣を模した擬巣にウズラCoturnix japonicaの卵を入れて森林内に設置し,自動撮影カメラで捕食者を特定することによりクリハラリスによる卵捕食の頻度を調査した.3週間後には25個の擬巣のうち24個(96%)で卵が消失し,いずれも最初に巣の入り口で撮影されたのはクリハラリスであったことから,全てクリハラリスが卵を捕食したものと推定された.9個の巣では捕食者となる可能性のあるハシブトガラスCorvus macrorhynchosおよびクマネズミRattus rattusも撮影されていたが,いずれもクリハラリスが複数回訪れた後での記録であった.クリハラリスが擬巣の入り口に最初に接触した日時を捕食の時期とすると,卵が捕食されるまでの平均日数は2.7日で,1日あたりの擬巣の生残確率は0.72と低く,クリハラリスが鳥類の繁殖に対して影響の大きい捕食者となっている可能性が示された.狭い行動圏内で複数個体が重複して食物の探索をするクリハラリスの生息地の利用様式によって,その他の捕食者による場合と比べて短期間に高い確率で擬巣が発見され,捕食されるのかもしれない.
著者
安田 雅俊 関 伸一 亘 悠哉 齋藤 和彦 山田 文雄 小高 信彦
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.227-234, 2017 (Released:2018-02-01)
参考文献数
37
被引用文献数
2

現在沖縄島北部に局所的に分布する絶滅危惧種オキナワトゲネズミTokudaia muenninki(齧歯目ネズミ科)を対象として,過去の生息記録等を収集し,分布の変遷を検討した.本種は,有史以前には沖縄島の全域と伊江島に分布した可能性がある.1939年の発見時には,少なくとも現在の名護市北部から国頭村にいたる沖縄島北部に広く分布した.外来の食肉類の糞中にオキナワトゲネズミの体組織(刺毛等)が見つかる割合は,1970年代後半には75–80%であったが,1990年代後半までに大きく低下し,2016年1月の本調査では0%であった.トゲネズミの生息地面積は,有史以前から現在までに99.6%,種の発見時点から現在までに98.4%縮小したと見積もられた.
著者
関 伸一
出版者
森林総合研究所
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.89-92, 2007 (Released:2011-12-19)