著者
中村 陽子 人見 裕江 西内 章 津村 智惠子 上村 聡子 松浦 尊麿 村岡 節 金 玄勲 金 東善
出版者
園田学園女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

限界集落における終末期の現状は在宅死よりも病院での死亡が多かったが、後期高齢者になると自宅か町内の病院死が多かった。厳しい生活条件の下での暮らしの中、人々は地域に深い愛情を持ち、家で終末期を迎えることを希望しながらも現実は無理であるとの思いが強かった。高齢化と過疎化、相互扶助の文化が薄れてきており、看取りの文化の継承が困難である現状が明らかになった。韓国の過疎地域における終末期ケアの課題としては医療・福祉サービスなどの多様なサービスの提供と都市部と地方の地域格差の解消が重要であることの示唆を得た。
著者
人見 裕江 塚原 貴子 中西 啓子 千田 美智子 森安 孝子
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.91-98, 1996

水分摂取は簡便で身近な看護ケアの一つであるが, この飲水が健康な成人の排便習慣に及ぼす影響を, 日本語版便秘評価尺度と便形評価尺度を用いて調べた.普段より実験的に水分を多く飲むことの了解の得られた対象に, 所定の用紙に研究期間中の水分量, 排便時間と負荷前・負荷中・負荷後のCAS評価と便形評価を依頼し, その排便習慣を検討した.その結果, 成人の排便習慣に及ぼす水分の影響として, 飲水を負荷することによって便は柔らかな形となり, 便硬度の軟化傾向があることが明確になった.この飲水の効果の自覚や飲む時間帯による差は, CASおよび便形評価のいずれの場合にも認められない.しかし, 飲水の負荷は, 便秘でない者, また下剤を使わない者の便形を変化させるが, 便秘者への影響は少ない.さらに, 身体の変調を含むCASでは, 飲水の負荷により, 腹部の身体症状を来たしやすく, 飲水が便秘を改善するかどうかCAS得点上にあらわれにくい.
著者
人見 裕江 中村 陽子 小河 孝則 畝 博 井上 仁 仁科 祐子
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

グループホームやデイサービスにおける痴呆症高齢者ケアの実態と美容を取り入れたケアの効果について、事例分析、免疫機能、動脈硬化指数、家族に及ぼす美容の効果、およびスタッフをはじめとするケア提供者へ及ぼす影響について検討した。免疫機能、動脈硬化指数では変化が明らかではなかったが、認知症高齢者の表情が豊かになり、言語も増す傾向が示され、スタッフや家族への相互作用があることが示唆された。化粧が及ぼす生理・心理的反応に関する基礎的研究(北川・人見、2006)を行い、手軽にできる口紅について、心理的変化および脳活動・自律神経機能に与える影響について検討した。口紅をつけた結果、これまでの報告にもみられるように、化粧による気分の高揚や積極性の向上などの心理的変化が認められた。しかし、このような心理的変化では、脳活動。自律神経機能には有意な影響を与えないことが示唆された。京都、イスタンブール、ベルリンにおける第20-22回アルツハイマー病協会国際会議に参加し、世界の認知症ケアに関する情報を得た。A老年性痴呆疾患治療病棟における攻撃的行動のある認知症高齢者に対するスタッフの態度とバーンアウト症候群との関係をパイロットスタデイとして調査した。攻撃的行動を否定的に捕らえるスタッフはバーンアウト傾向にあることが示唆され、認知症ケアにおける看護介入の方策、およびスタッフ教育について、検討する必要性が急務であることが示めされた(人見・中平・中村・他、2006)。そこで、大阪および山陰地方の介護施設のスタッフ約1、500人を対象に、調査研究を行った。また、代替療法を用いた介入研究を地域の病院における療養型治療病棟や特養において実施し、本人だけでなくスタッフおよび家族への波及効果がある傾向が示された。今後、全国の痴呆症ケアに関わる病院や施設および事業所等に勤務するスタッフの態度とバーンアウト症候群との関係を明らかにし、介護提供者の教育システムを構築に関する示唆を得ると共に、提言をする予定である。
著者
中村 陽子 宮原 伸二 人見 裕江
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.195-204, 2000-12-25
被引用文献数
1

戦後日本においては疾病構造の変化, 医療技術の高度化, 病院化の進展の中で, 死亡に関しては, 在宅での死は減り, 病院での死が急増しているのが現状である.1965年には死亡者全体の29%が病院死であったが, 1995年には74%になり, 日本人の死に場所は家から病院へと変わった.死についての今日の人々の意識や実態は, 高度経済成長期をへて, ここ30年の時代環境で大きく変化した.さらに, 現在多くの国民は在宅死を再び望むようになってきた.高齢者の在宅死を可能にするためには, 医療福祉の役割として, 現在存在するサービスを整備するだけでは課題への対応は困難であり, 新たなケアマネジメントが重要となってくる.具体的な内容としては, 死への不安や恐怖に対して, あらゆる専門職との連携が重要となる.特に心理の専門家やボランティアとの連携が, 看取りにおける心の援助を可能にすると思われる.家族・地域を包括した看取りの教育が急務である.死の教育こそが看取りの文化を継承していく.また, 都市の看取りを考える場合, これまで日本にあった隣近所による助け合いの精神に基づいた相互扶助の援助に変わる, 新しい援助が重要になってくると考えられる.地域共同体意識の低い都市においては, 地域が看取りの力を持ちうるためのまちづくりが重要な課題である.介護者に犠牲を強いることのない, 介護を生きがいのある魅力あるものにし, 自己決定に基づく死に場所選びを可能にするため, 医療福祉として統一された援助が重要となる.医療福祉はその役割を負う.