著者
馬場 みちえ 板並 智子 一木 真澄 畝 博
出版者
The Japanese Association for Cerebro-cardiovascular Disease Control
雑誌
日本循環器病予防学会誌 (ISSN:13466267)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.75-80, 2007

目的 : 要介護4・5の重度の要介護状態になるリスク要因を明らかにすることである。<BR>対象と方法 : 福岡県Y町において症例対照研究を実施した。症例群は介護保険の要介護4と5の高齢者 (以下、要介護者群) 62人、対照者群は健常高齢者あるいは要支援の高齢者から性、年齢をマッチさせ、1 : 1の割合で無作為に抽出した。2001-2002年に聞き取り面接調査を行い、要介護状態になった原因疾患、既往歴・治療歴、基本健康診査受診回数、生活習慣、性格、趣味などの情報を得た。さらに、過去の血圧値と降圧薬服用状況、および実際の基本健康診査受診歴について、1989年~1993年の基本健康診査データを参照した。<BR>結果 : 要介護状態になった原因疾患は、脳血管疾患が41.9%、認知症27.4%、大腿骨骨折12.9%の順であった。要介護に関連する要因では、糖尿病治療歴のある者ではオッズ比は3.54 (95%CI : 1.07-11.76, p<0.05) と有意に高く、高血圧治療歴のある者ではオッズ比が0.82とリスクの上昇がみられなかった。そこで、要介護者群と対照者群の高血圧症の頻度およびその治療状況を過去の基本健康診査データ (1989-1993年) に遡って22ペアについて比較した。既に治療中である者も含めた高血圧症の数は、要介護者群が14人 (63.6%) 、対照群が8人 (36.4%) であり、要介護者群に高血圧症が多かった (p<0.05) 。そのうち降圧薬を服用している者は、要介護者群では4人 (28.6%) 、対照者群では4人 (50.0%) であり、要介護者群に高血圧症でありながら治療を受けている者が少なかった。また実際の基本健康診査受診歴 (45ペア) では、要介護者群に受診回数が少なかった。<BR>結論 : 要介護者群では、高血圧症の者が多いにもかかわらず、高血圧症への認識や治療へのコンプライアンスが悪く、また基本健康診査の受診回数も少なかった。定期的に健康診査を受けることは、人々の高一血圧への認識や治療へのコンプライアンスを高めることにつながり、重度の要介護状態になることを予防していることが示唆された。
著者
長弘 千恵 趙 留香 馬場 みちえ 児玉 尚子 尾坂 良子 吉永 一彦 畝 博
出版者
九州大学
雑誌
九州大学医療技術短期大学部紀要 (ISSN:02862484)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.27-38, 2001-03
被引用文献数
1

1972年にBreslowらによりライフスタイルが身体杓および精神的健康に影響を与えるという研究が報告された。それ以降,わが国においては生活習慣と健康に関する研究が増加してきた。大学生を対象にした生活習慣と健康状態に関する調査では,望ましい生活習慣をもつ学生は健康状態がよく,欠席日数も少ないと報告されているが,韓国においては最近のこの種の調査は少ない。予防医学的な見地から20代の年齢層が盲点的存在であるされ,青年期の生活習慣に対する教育のあり方が問われている。また,看護職の保健行動が患者の保健行動に強く影響するという報告もあり,将来看護職となる学生の生活習慣に関する調査は重要であり,種々の報告がなされているが健康状態との関連を報告するものは少ない。今回,生活習慣と主観的健康度との関連を検討する目的で,日本と韓国の看護大学の学生を対象にOkayama Medical Index (OMI)健康調査表を用いて留め置き調査を行った。回収率は日本71.1%,韓国61.5%であった。内的整合性に基づく信頼係数Cronbachのα係数は0.98〜0.71の範囲にあり,回答用紙の信頼性は高いと考え,解析を行った。対象者の平均年齢は日本20.41歳,韓国22.69歳と韓国が高く,年齢による交絡因子を避けるため年齢を調整した。睡眠時間,喫煙については韓国が日本よりも望ましい生活習慣の学生が多かった。飲酒,朝食,間食については日本の学生が韓国より望ましい生活習慣の学生が多く,運動習慣については差はみられなっかた。主観的健康状態については全身症状15項目のうち10項目ですべて韓国が訴えが多く,各器官症状64項目について33項目すべて韓国の学生が日本より訴えが多かった。精神気質については差異は認められなかった。
著者
人見 裕江 中村 陽子 小河 孝則 畝 博 井上 仁 仁科 祐子
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

グループホームやデイサービスにおける痴呆症高齢者ケアの実態と美容を取り入れたケアの効果について、事例分析、免疫機能、動脈硬化指数、家族に及ぼす美容の効果、およびスタッフをはじめとするケア提供者へ及ぼす影響について検討した。免疫機能、動脈硬化指数では変化が明らかではなかったが、認知症高齢者の表情が豊かになり、言語も増す傾向が示され、スタッフや家族への相互作用があることが示唆された。化粧が及ぼす生理・心理的反応に関する基礎的研究(北川・人見、2006)を行い、手軽にできる口紅について、心理的変化および脳活動・自律神経機能に与える影響について検討した。口紅をつけた結果、これまでの報告にもみられるように、化粧による気分の高揚や積極性の向上などの心理的変化が認められた。しかし、このような心理的変化では、脳活動。自律神経機能には有意な影響を与えないことが示唆された。京都、イスタンブール、ベルリンにおける第20-22回アルツハイマー病協会国際会議に参加し、世界の認知症ケアに関する情報を得た。A老年性痴呆疾患治療病棟における攻撃的行動のある認知症高齢者に対するスタッフの態度とバーンアウト症候群との関係をパイロットスタデイとして調査した。攻撃的行動を否定的に捕らえるスタッフはバーンアウト傾向にあることが示唆され、認知症ケアにおける看護介入の方策、およびスタッフ教育について、検討する必要性が急務であることが示めされた(人見・中平・中村・他、2006)。そこで、大阪および山陰地方の介護施設のスタッフ約1、500人を対象に、調査研究を行った。また、代替療法を用いた介入研究を地域の病院における療養型治療病棟や特養において実施し、本人だけでなくスタッフおよび家族への波及効果がある傾向が示された。今後、全国の痴呆症ケアに関わる病院や施設および事業所等に勤務するスタッフの態度とバーンアウト症候群との関係を明らかにし、介護提供者の教育システムを構築に関する示唆を得ると共に、提言をする予定である。