著者
田中 章浩 小泉 愛 今井 久登 平本 絵里子 平松 沙織 de Gelder Beatrice
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.42-42, 2010

情動認知の文化差に関しては、顔の表情を用いた研究を中心に検討が進められてきた。しかし、現実場面での情動認知は、視覚・聴覚などから得られる多感覚情報に基づいておこなわれている。そこで本研究では、顔と声による多感覚情動認知の文化差について検討した。実験では日本人およびオランダ人の学生を対象に、情動を表出した顔と声のペア動画を提示した。顔と声が表す情動が一致している条件と不一致の条件を設けた。声を無視して顔から情動を判断する顔課題と、顔を無視して声から情動を判断する声課題の2種類を実施した。実験の結果、オランダ人と比べて日本人被験者では、顔課題における不一致声の影響が大きく、声課題における不一致顔の影響が小さかった。この結果は、日本人は多感覚情報に基づいて情動を認知する際に、声にウェイトを置いた判断を自動的におこなっていることを示唆している。
著者
今井 久登
出版者
学習院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

記憶の想起意識を俯瞰的に検討し,次の成果を得た。① 研究史:想起意識は当初,記憶システムの定義として位置づけられた。研究の進展と共に,想起意識から手続き的定義へと精緻化されたが,このような想起意識の位置づけの変化は明確に議論されず,結果として想起意識が研究の焦点から外れていった。② 実証研究:匂い手がかりによる自伝的記憶の無意図的想起と, 外的想起手がかりがない場合の展望記憶の自発的想起の研究を行い,それぞれの想起意識の性質を明らかにした。③ 5種類の想起意識(想起意図/想起努力/想起の自覚/回想・親近性/想起意識のない再認)を連続的に関係づけ,想起意識を全体的に捉える図式を提案した。