著者
伊奈 正人
出版者
東京女子大学
雑誌
東京女子大学紀要論集 (ISSN:04934350)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.57-81, 2023-03-30

Michael Burawoy’s presidential address to the ASA has refocused attention on the work of C. Wright Mills. However, only the notion of “the sociologist as citizen” has been discussed, while a detailed discussion regarding his conception of public sociology has not been developed and the conventional negative image of Mills has persisted. In light of this situation, this paper investigates the concepts of “historical specificity,” “sociological imagination,” “vocabulary of motive,” and “sociotics,” and seeks to propose a new understanding of the “political public,” which lies at the heart of Mills’s thinking.公共社会学論争により、C.ライト・ミルズの学問は再び脚光を浴びたが、「普通の人々に語りかける社会学」ばかりが議論され、政治的公衆をめぐる積極的な議論は十分に展開されることはなく、従来のネガティブなミルズ像が放置された。これに対して、本稿は、歴史的特殊性の概念、社会学的想像力、動機の語彙論、社会学的言語分析(sociotics)などを検討し、ミルズに一貫する問題解決思考の核にある政治的公衆の再構成を試みた。
著者
伊奈 正人
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.77-96, 1998-06-30

この小論は, 「サブカルチャーとしての地域文化」を論じた井上俊 1984, 「地域文化と若者文化」を論じた中野収1990ほか先行する「地域文化論」, および筆者自身が行った映画上映運動についての岡山調査などを手がかりとして, 「地域文化としてのサブカルチャー」について論じようとするものである。まず第一に, 「東京文化」としてのサブカルチャー, それを育む, -村社会や, 地方都市にはない-東京という街の持つ特徴について論じる。第二に, 日本の近代化が行った地域の再編が, 地域ごとの「生のフォルム」を形成しえない中心盲信の「上京文化」「洋行文化」を生み出したことを確認する。 そして, 安直に「地方の時代」を賞揚せず, 根底にある「中心一周縁」の問題を隠蔽することなく視野におさめ, かつ「周縁」の可能性を開示する視点, スタイルの可能性を確認する。そして, 第三に, H・アーヴィン1970, B・シャンクス1988, W・ストロー1991などによりながら, それを可能にする視点として「文化シーン」という概念を導入する。それは, ヴァナキュラーで固定的で伝統的な「地方文化」の「コミュニティ」とは区別されるグローバルで可変的な「もう一つの地域文化」 (伊奈1995) の実体を表現するものである。そして, この視点により「地域文化」の可能性を仮説的論点として提起する。第四に, 一つの例解として, 岡山調査の結果を紹介する。 そして, 地域文化がかかえる困難と, そしてそれがゆえの洗練を明らかにする。
著者
伊奈 正人
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.77-96, 1998-06-30 (Released:2010-04-23)
参考文献数
32

この小論は, 「サブカルチャーとしての地域文化」を論じた井上俊 1984, 「地域文化と若者文化」を論じた中野収1990ほか先行する「地域文化論」, および筆者自身が行った映画上映運動についての岡山調査などを手がかりとして, 「地域文化としてのサブカルチャー」について論じようとするものである。まず第一に, 「東京文化」としてのサブカルチャー, それを育む, -村社会や, 地方都市にはない-東京という街の持つ特徴について論じる。第二に, 日本の近代化が行った地域の再編が, 地域ごとの「生のフォルム」を形成しえない中心盲信の「上京文化」「洋行文化」を生み出したことを確認する。 そして, 安直に「地方の時代」を賞揚せず, 根底にある「中心一周縁」の問題を隠蔽することなく視野におさめ, かつ「周縁」の可能性を開示する視点, スタイルの可能性を確認する。そして, 第三に, H・アーヴィン1970, B・シャンクス1988, W・ストロー1991などによりながら, それを可能にする視点として「文化シーン」という概念を導入する。それは, ヴァナキュラーで固定的で伝統的な「地方文化」の「コミュニティ」とは区別されるグローバルで可変的な「もう一つの地域文化」 (伊奈1995) の実体を表現するものである。そして, この視点により「地域文化」の可能性を仮説的論点として提起する。第四に, 一つの例解として, 岡山調査の結果を紹介する。 そして, 地域文化がかかえる困難と, そしてそれがゆえの洗練を明らかにする。
著者
伊奈 正人
出版者
東京女子大学
雑誌
東京女子大学紀要論集 (ISSN:04934350)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.135-136, 2000-09-20
著者
伊奈 正人
出版者
東京女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

「間」の文化とかかわる日本文化論的な知見などを整理・総括し、その上で「間」を動的関係のなかでの個の存在感=触覚的な手応えの問題として規定した。そして、「間」を、若者の生の実感=柔軟さと頑なさの弁証関係の問題として仮説化し、事例調査を行った。若者が自己の生をどのように「シンボル化」して概括しているか、若者の「間の語彙」、その批評性に着目し、そこに「間の美学」を読解しようとしたことが特徴的成果である。