著者
伊東 美緒 宮本 真巳 高橋 龍太郎
出版者
一般社団法人 日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.5-12, 2011-01-15 (Released:2017-08-01)
参考文献数
11
被引用文献数
2

認知症の行動・心理症状はさまざまな要因が絡み合って出現するが,介護職員のかかわりに対する反応として症状が現れることが少なくない.そこで介護職員がかかわったあとに何らかの徴候(sign)が現れる可能性があると考え,「介護職員とのかかわりの中で生じる,意識的とはいえない不安・混乱・落ち着きのなさ・あきらめを示す態度や言動」を不同意メッセージと命名した.不同意メッセージの特徴を明示することと,不同意メッセージが認められたときに,BPSDを回避することのできる介護職員の対応を明らかにすることにした.《服従》,《謝罪》,《転嫁》,《遮断》,《憤懣》という5つの不同意メッセージが抽出され,特に《服従》,《謝罪》,《転嫁》の3つは認知症高齢者の拒否的行動と捉えられにくいため,介護職員に気づかれないままにBPSDに至ることがあった.介護職員が,早い段階でこれらのメッセージに気づき,『ケアの方向性を変更する』,『状況が変化するのを待つ』,『責任転嫁のための言い訳を提案する』ということができた場合に,BPSDへの移行を防ぐことができていた.
著者
小山 晶子 小山 智史 伊東 美緒 紫村 明弘 福嶋 若菜 山﨑 恒夫 内田 陽子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.176-185, 2022 (Released:2022-10-15)
参考文献数
23

目的:地域在住高齢者の服薬支援の在り方を検討するために,服薬アドヒアランス良群・不良群別に対象者の属性を検討し,2群の服薬管理の工夫の特徴を示した.方法:地域在住高齢者55名を対象に,属性と服薬アドヒアランスに関する質問紙調査と,服薬管理の工夫に関する聞き取りおよび観察を行った.結果:服薬アドヒアランス良群は19名(34.5%),不良群は36名(65.5%)であり,全対象者が何らかの服薬管理の工夫を行っていた.【服薬指示理解と服薬の段取り】は〈服薬指示を記憶する〉など13の工夫,【薬の保管】は〈1週間分程の薬を手元に置く〉など10の工夫,【薬の飲み忘れ対策】は〈食事から服薬までを一連の流れで行う〉など9の工夫がされていた.結論:服薬管理の工夫は,個人の生活に合わせて調整されていた.したがって,看護師は対象者の生活と服薬管理の工夫を把握した上で,服薬支援を行うことが必要である.
著者
小俣 敦士 竹林 洋一 石川 翔吾 宗形 初枝 中野目 あゆみ 伊東 美緒 坂根 裕 本田 美和子 原 寿夫 桐山 伸也
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, pp.3Pin146, 2018

<p>本稿では,認知症高齢者の個性やゴール(願い)といった個性情報に基づいたケアの実践と高度化のための協調学習環境を提案し,有効性について検討する. 本学習環境では,認知症の人本人の個性やゴールといった個性情報をもとに,認知症ケアの映像を用いて組織全体で学びを促進できる.認知症ケアの現場において,提案する学習環境の枠組みに則って協調学習を実施した. その結果,個性やゴールに基づき協調的に学ぶことが,ケアを受ける相手の理解を深めるとともに,ケアを行う際の目標やその意図をチーム全体で共有でき,多様な個性を持った認知症の人に合わせたケア実践につながることが示唆された.</p>
著者
大西 季実 吉田 裕美 藤井 美代子 鈴木 まさ代 伊東 美緒 高橋 龍太郎
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.101-107, 2010-01-15

はじめに 精神科では、自殺・事故防止の観点から、入院生活に何らかの制限が設けられていることが多い。病棟内に持ち込む日常生活用品を制限することもその1つである。制限される物品としては刃物やガラス製品、ベルト、電化製品のコード、耳かき、爪楊枝、毛抜き、割り箸など多岐にわたる。刃物など明らかに危険な物品については、マニュアルなどに明文化され対応が統一されていることが多いが、危険度が必ずしも高いとはいえない耳かき、毛抜き、爪楊枝、割り箸などの取り扱いについては、病院・病棟により規定が異なる上、看護者の判断によっても対応に違いが存在するのではないだろうか。 縊死に関連した日常生活用品の持ち込み制限に関する田辺らの調査においても、コード、ネクタイ、針金ハンガーなどは持ち込みを許可する病棟と許可しない病棟がそれぞれ半数ずつであり、看護者が異なる視点で判断している可能性を示唆している*1。病棟内においても看護者間の考え方や対応の相違により混乱が生じることは多々あり、特に精神科の臨床では日常的に遭遇する体験であるという*2。病棟内の看護者間において価値観そして実際の対応方法が異なる場合、患者に混乱をもたらし、そこで働く看護者を悩ませる要因にもなりうる。 過度な物品管理、不必要な制限は患者の依存や退行を引き起こし、自立の妨げになる可能性があり、病棟生活を送る患者の生活の質(QOL)に影響を与えることが示唆されている*1。QOLや人権に配慮しすぎると事故の危険が高まる*3ものの、事故防止を優先しすぎると日常生活を送る上で不都合が生じる。看護師が事故防止を優先するのか、QOLを優先するのかによって日常生活用品の持ち込みの判断に影響が生じると予測される。 そこでこの研究では、①病棟内への日常生活用品の持ち込み制限と優先傾向(事故防止・QOLのどちらを優先するのか)との間には関連があるのか、②看護者のバックグラウンドと優先傾向との間に関連があるのかの2点を明らかにすることを試みた。
著者
宗形 初枝 原 寿夫 石川 翔吾 菊池 拓也 エーニン プインアウン 本田 美和子 盛 真知子 伊東 美緒 Gineste Yves 竹林 洋一
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第29回全国大会(2015)
巻号頁・発行日
pp.2M4NFC04b4, 2015 (Released:2018-07-30)

本発表では,全国に先駆けて認知症ケア技法ユマニチュードを全病棟に導入した経験を下に,認知症の人とのコミュニケーションが改善した結果について述べる.多段階でコミュニケーションを表現できるマルチモーダル行動観察ツールを活用し,介護・看護におけるユマニチュードの有効性について考察する.
著者
高橋 龍太郎 伊東 美緒
出版者
地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所)
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、広島とパール・ハーバーにおいて戦争被害を受けた日米51名の高齢者へのインタビューデータ分析を通じて、彼らの人生における健康の転換点を見出すことである。広島被爆者からは「被爆者になること」というテーマが、パール・ハーバー生存者からは「時に現れる誇りに思う記憶」というテーマが浮かび上がった。広島被爆者においては生涯持続し更新される健康体験の核を形成し、パール・ハーバー生存者においては折に触れて現れる体験であった。体験や国を超えて、他者とのつながり、平和の希求が一貫して表出された。
著者
伊東 美緒
出版者
地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所)
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

通所介護施設を利用する認知症高齢者を対象として、週に2回、3か月間、施設から200-500m離れた公園などにでかける「寄り道散歩」プログラムを実施した。22名から同意を得たものの、1年間プログラムに参加して追跡できたのは10名のみであった。散歩をしない時期と散歩をする時期を交互に2回繰り返したところ、2回目のプログラム実施時に自宅における認知症の行動・心理症状(BPSD)の出現頻度が低下する者が半数を占めた。CDR3の認知症が重度の者2名も1年間追跡することができ、認知症の程度にかかわらず、歩行機能が保たれていれば混乱せず実施できる活動プログラムとして活用できる可能性がある。