著者
住吉 光介
出版者
沼津工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

超新星爆発は、重い星が進化を遂げた最期に起きる華々しい天体現象である。多次元効果の中で起こる爆発の鍵が何であるか多くの課題が残されている。本研究では、多くの数値シミュレーションにおいて近似が施されているニュートリノ輻射輸送を厳密な計算により扱うことで、残存する近似を排して爆発メカニズムの主たる要因を特定することにある。今年度の研究では、ボルツマン方程式によるニュートリノ輻射流体計算コードを超新星コアの数値シミュレーションに応用することで、回転する親星における多次元爆発ダイナミクスとニュートリノ輻射の解明、爆発におけるニュートリノ反応の影響、大質量星の重力崩壊現象からのニュートリノ放射の分析に関する研究を行った。(1)京コンピュータにおいて6次元ボルツマン方程式ソルバーを組み込んだニュートリノ輻射流体計算コードによる軸対称大規模シミュレーションを実行して、回転する星の重力崩壊におけるコアバウンスから衝撃波発展へ至るダイナミクスを明らかにした。この研究において、初めてニュートリノエネルギー・角度分布の非対称性が明らかになり、モーメント法において用いられている近似公式の問題点を指摘した。(2)京コンピュータにおいて6次元ボルツマン方程式ソルバーを組み込んだニュートリノ輻射流体計算コードによる球対称シミュレーションを実行して、大質量星の重力崩壊・コアバウンス・衝撃波伝播・ニュートリノ放出においてニュートリノ反応の違いが及ぼす影響について定量的に明らかにした。また、ニュートリノ放出の親星による違い、ニュートリノ振動への影響についての応用研究を並行して行なった。これらの成果について、国内・国際会議による口頭発表、査読論文による発表を行なった。また、研究成果をもとに、超新星に関して物理過程の基礎から超新星ダイナミクス応用までを学んで理解するための、分野入門に適した書籍を出版した。
著者
住吉 光介 千葉 敏
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.60, no.12, pp.754-758, 2018 (Released:2020-04-02)
参考文献数
9

天空にとつぜん現れ他の星々を圧倒して急激に輝きやがて消えて行く超新星。その名に反し超新星は新しい星の誕生ではなく星の終焉をかざる大爆発である。宇宙に存在する重い元素の多くはこの時合成される。われわれの世界は超新星爆発の残滓からできている。鍵を握るのは素粒子ニュートリノであり,星が進化し超新星爆発に至る道筋は原子核や核力の性質から理解できる。高度な計算機シミュレーションによりこの道筋の理解が進んでいる。中核を担うのはニュートリノ輸送計算であり,この計算は原子力における中性子輸送計算と多くを共有する。
著者
佐藤 勝彦 橋本 正章 鈴木 英之 山田 章一 長滝 重博 固武 慶 滝脇 知也 渡辺 元太郎 大西 直文 住吉 光介 藤本 信一郎 木内 健太 岩上 わかな 澤井 秀朋 安武 伸俊 西村 信哉 諏訪 雄大 中里 健一郎 長倉 洋樹
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2007

本研究課題では大質量星が進化の最後におこす重力崩壊型超新星及びガンマ線バーストの爆発機構・源エンジンについて世界最先端の研究を行い、多くの成果を挙げた。大規模数値シミュレーションによる研究を豊富に行い、場合によっては京コンピュータを用いた世界最高レベルの数値シミュレーションを実現した。またこれらの現象に付随して起こる重力波・ニュートリノ放射、r-process元素合成を含めた爆発的元素合成、最高エネルギー宇宙線生成、等々について世界が注目する成果を数多く挙げた。以上の様に本研究課題では当初の予想を上回る、世界最先端の成果を修めることが出来た。また同時にこの分野に於ける将来の課題・展望を提示しつつ5年間のプログラムを終了した。