- 著者
-
梶原 毅
綿谷 安男
佐々木 徹
- 出版者
- 岡山大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2003
本研究期間中に明らかにしたことは概略次のとおりである。1.左右内積をもつ可算生成ヒルベルトC^*双加群が有限指数をもつことと、conjugationを持つことが同値であることを証明し、また有限指数をもつ可算生成ヒルベルトC^*双加群の例を多数構成した。また、一般に直交しない可算生成基底の性質についても明らかにした。これらの結果は、"Jones index theory for Hilbert C^*-bimodules and its equivalence with conjugation theory"において刊行した。2.有理関数によってリーマン球面上に与えられる複素力学系からヒルベルトC^*双加群を構成し、それからPimsner構成によって作られるC^*-環について、単純性と純無限性を証明した。また、いくつかの例において、K-群の計算を行った。これらの結果は、"C*-algebras associated with complex dynamical system"において刊行した。3.縮小写像の組から作られる自己相似集合に対しても、ヒルベルトC^*-双加群を構成し、Pimsner構成によってC^*-環を構成した。適当な条件のもとで、構成されたC^*-環が単純かつ純無限になることを示した。代表的な自己相似集合の例であるシルピンスキギャスケットに対して二通りの構成法で作られたC^*-環が同型でないことをK-群によって示した。またコッホ曲線から作られたC^*-環のK-群も計算した。これらの結果は、"C^*-algebras associated with self-similar sets"において刊行した。4.複素力学系、また自己相似写像から作られるヒルベルトC^*双加群に対して、可算基底の具体的な構成を行った。これはもともとテント写像の場合にウエーブレット基底にヒントを得て構成したものを一般化したものであり、具体的な可算生成ヒルベルトC^*双加群に対して初めて構成されたものである。これはまだ刊行された論文には含まれていないが、複素力学系から作られるC^*-環上のKMS stateの分類を考える際に大きな助けになった。5.超越関数からも同様なやりかたでC^*-環を構成して研究した。特に指数関数から作られる場合に単純になることを示し、日本数学会等で公表した。ただし、この場合ピカールの定理により無限遠点が真性特異点になり、これをどのようにうまく扱うかが未解決な問題である。