著者
田中 慧 佐藤 康仁 岩﨑 直子
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.10, pp.742-749, 2023-10-30 (Released:2023-10-30)
参考文献数
31

MODY患者に対する個別化医療の血糖コントロールならびに糖尿病関連医療費に及ぼす影響を検討した.遺伝学的診断後も通院継続中のMODY1患者2名とMODY3患者5名,計7名のMODY患者を対象とした.個別化医療開始前と12ヶ月後のHbA1c,1ヶ月の糖尿病関連医療費を検討した.平均HbA1cは開始前7.37±1.10 %から12ヶ月後6.29±0.48 %(p<0.05),糖尿病関連医療費は同様に20,153±6,665円/月から8,671±8,817円/月(p<0.05)と有意に低下した.当初7名中6名がインスリン投与中であったが,5名(83 %)が最終的にはインスリン離脱に至り,うち4名が経口薬単独治療となった.MODY1とMODY3患者に対する個別化医療はスティグマの改善にも影響することが示唆された.さらに,MODY3患者では高率に肝細胞腺腫を疑う所見が認められた.
著者
牧上 久仁子 大滝 倫子 佐藤 康仁 山口 直人
出版者
The Japanese Society for Hygiene
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.450-460, 2005-11-15 (Released:2009-02-17)
参考文献数
41
被引用文献数
10 10

Objectives: To evaluate the effectiveness of mass treatment with ivermectin of scabies outbreak in institutional settings. To determine the factors, such as host susceptibility and scabetic exposure level associated with the onset of scabies.Methods: The authors investigated a nosocomial scabies outbreak in a close psychiatric ward. The index case was a man with steroid-induced localized crusted scabies. Twenty-six patients were diagnosed with scabies, 4 of them had relapse of scabies, while no staff was infested. Despite frequent surveillance and treatment of symptomatic patients with 1% gamma-benzenehexachloride (γ-BHC: Lindane), new cases were observed. Thus, all 69 patients in the ward were treated with ivermectin (200μg/kg) simultaneously on day 105 of the outbreak (the mass treatment). Patients who had scabies were compared with patients who had no scabies in terms of age, body weight, diabetes, physical functions, topical administration of corticosteroid, proximity to the index patient, and problematic behavior.Results: The mass treatment was implemented without a significant adverse event. Although two patients developed symptoms of scabies after the mass treatment, no patient in the ward had been diagnosed with scabies since the 98th day of the treatment. Regarding factors associated with the scabies onset, the only statistically significant factor was proximity to the index patient with crusted scabies.Conclusions: Oral ivermectin was safe and effective for controlling scabies in institutional settings. The exposure level to scabetic mites was more important than host susceptibility in determining the risk of scabies onset.
著者
佐藤 康仁 吉田 雅博 山口 直人
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.39-46, 2008 (Released:2015-03-20)
参考文献数
5
被引用文献数
5

Minds(Medical Information Network Distribution Service)は,診療ガイドラインおよび関連する医療情報を提供するWeb上のデータベースシステムである.Mindsを定期的に利用している者の特徴を明らかにすることで,診療ガイドライン等の医療情報を提供するWebデータベースシステムに求められる要件を明らかにすることができると考える. 方法:対象はMindsのユーザ登録者とした.調査は2006年3月から4月にかけて実施した.アンケート調査への協力のお願いは電子メールで送信し,Webサイトにて調査を実施した.解析では,はじめに,定期的アクセスに関連する因子の探索をカイ二乗検定で行った.続いて有意差のみられた因子と定期的アクセスとの関連をロジスティック回帰モデルで分析した. 結果:コメディカルでは「患者・家族への説明のため(Odds ratio=2.05)」「Webサイトの使いやすさの満足度(OR=3.07)」に定期的アクセスと有意な関連が観察された.医師・歯科医師では「患者・家族への説明のため(OR=2.13)」「最新情報取得のため(OR=1.72)」「Mindsを診療に利用している(OR=2.88)」「Webサイトのコンテンツの満足度(OR=2.31)」に定期的アクセスと有意な関連が観察された. 結論:定期的にMindsを利用する者は,診療の現場において利用している者が多いことが明らかとなった.一方で,診療の現場ではインターネットへの接続が難しい場合が多い.今後は,インターネットに接続しない状態で情報提供を行う仕組みについても考慮する必要がある.
著者
佐藤 康仁 畠山 洋輔 奥村 晃子 清原 康介 小島原 典子 吉田 雅博 山口 直人
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.35-43, 2014 (Released:2016-04-20)
参考文献数
24
被引用文献数
3

Mindsサイトは,診療ガイドラインを中心とした医療情報を2002年より継続してインターネット上に提供している.本研究は,Mindsユーザを対象に実施したユーザ満足度に関するアンケート調査結果を分析することで,Mindsサイトの今後の課題を明らかにすることを目的として実施した.調査方法は,インターネット上の自記式アンケート調査とした.調査対象は,Mindsサイトにユーザ登録をしている者とした.アンケートへの回答者は2,940名(回答率8.2%)であった.「利用目的は達成されたか」について,達成できた割合が高かったのは,医療系学生の「学習や知識習得のため23名(53.5%)」,コメディカルの「診療のため82名(50.0%)」となっていた.利用目的を達成できた者は,利用したことがあるコンテンツの種類が多く,それぞれのコンテンツが役に立ったとする割合が高くなっていた.本研究により明らかとなったMindsサイトの課題は,システムや運用における対応を実施することで順次改善していきたい.
著者
佐藤 敏彦 佐藤 康仁 平尾 智広
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.141-150, 2009

保健医療政策の優先順位付けを行なうために疾患別の疾病負担データは重要である。さらに,今後の政策を策定するには現状の疾病負担のみならず,その将来予測もまた重要となる。本研究では,保健医療政策の施策に資するデータを提供することを目的に,わが国の官庁統計データを用いて回帰モデルにより傷病別の患者数および死亡数の将来推計を行った。その結果,年齢別推計総死亡数は,2010年は116万人,2020年は134万人,2030年は142万人と増加し,85歳以上の死亡割合はそれぞれ38%,51%,59%と顕著な増加を示した。傷病別の死亡数は2005年と同様,将来推計においても,新生物,循環器疾患,呼吸器疾患の順であり,新生物,呼吸器が男女とも大幅な増加を示したが,循環器疾患は心疾患が増加するものの脳血管疾患が減少するためにほぼ横ばいの結果となった。患者調査の入院率と国民生活基礎調査の通院率を用いて推計した全患者数は2005年に4,273万人であるのに対し,2010年,2020年,2030年には,それぞれ4,417万人,4,556万人,4,480万人であった。65歳以上の割合は2005年からそれぞれ,40%,44%,53%,56%と2020年以降は総患者の過半数を占めた。患者調査データを元にした傷病別推定患者数において2005年から2030年に増加を示したのは感染症(32%増),気管・気管支・肺がん(98%増),糖尿病(38%増),認知症(105%増),統合失調症(32%増),神経系疾患(138%増),高血圧(25%増),肺炎(210%増),脊柱障害(51%増),腎疾患(51%増),前立腺肥大(111%増)等であった。一方,減少を示したのは胃がん(58%減),虚血性心疾患(67%減),脳血管疾患(49%減)となった。国民生活基礎調査の通院率より推計した傷病別患者数はいずれも患者調査に基づく推計値を大幅に上回ったが,糖尿病,認知症,高血圧,脳血管疾患が2~3倍であるのに対し,通院率を用いた推計では増加傾向を示した狭心症・心筋梗塞は4倍~10倍以上にまで,その差が広がる結果となった。その原因として,実際には多くの患者は自己中断や延期をすることや,計算式に用いる平均診療間隔が実態と乖離していることなどがあるものと思われた。