著者
山口 直人
出版者
公益財団法人 産業医学振興財団
雑誌
産業医学レビュー (ISSN:13436805)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.1, 2023 (Released:2023-01-01)

紙巻きタバコ、加熱式タバコの使用者が吸入する発がん化学物質の量を推計して、吸入ユニットリスクによって生涯の過剰発がん率を推計した研究を評価した結果、加熱式タバコによる過剰な発がんリスクは紙巻きタバコの3%程度であることが示された。喫煙がリスクとなる循環器疾患等の比較も進めて、完全禁煙が困難な紙巻きタバコ喫煙者が次善の策として加熱式タバコへ変換することの是非について検討を進める必要がある。
著者
杉原 辰哉 萩原 文香 門永 陽子 鳥谷 悟 松浦 佑哉 井原 伸弥 黒崎 智之 森山 修治 上田 正樹 森脇 陽子 広江 貴美子 古志野 海人 山口 直人 大嶋 丈史 岡田 清治 太田 哲郎
出版者
松江市立病院
雑誌
松江市立病院医学雑誌 (ISSN:13430866)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.53-56, 2019 (Released:2019-07-01)
参考文献数
10

【目的】心肺運動負荷試験(CPX)のAT レベルの心拍数(THRAT)での運動処方が困難な場合はKarvonen の式から得られる心拍数(THRkarvonen)を参考に実施するが, 心不全やβ遮断薬投与例では必ずしも適切な決定ができない.本研究はβ遮断薬投与中の急性心筋梗塞患者を対象にATHRとKarvonen 式の関係を検討し,適切な心拍数を求めることを目的とした.【方法】対象はβ遮断薬投与中の急性心筋梗塞患者20 例,年齢62.7±8.2 歳.a(220-年齢)を最大HR とし,係数a は実際にCPX で得られた実測最大HR からa =実測最大HR/(220-年齢)を求め,また,Karvonen の式から運動強度の係数k =(THRAT-安静時HR)/(最大HR-安静時HR)として求め,係数k と臨床的指標の関係について検討した.【結果】CPX から求めた係数a は0.72±0.09,係数k は0.42±0.13,THRmodified Karvonen = 0.42[0.72(220-年齢)-安静時HR]+安静時HR で,THRAT とTHRmodifiedKarvonen の相関関係はr=0.84(p < 0.01)であった.係数k と臨床的指標の関係は心リハ開始日数とLVEF に関連性が認められTHRclinical =(0.005×LVEF-0.015×心リハ開始まで+0.312)[0.72(220-年齢)-安静時HR]+安静時HR とすると,THRAT との相関関係はr=0.88(p < 0.01)であった.【結語】β遮断薬投与中の急性心筋梗塞患者はTHRmodified Karvonen = 0.42[0.72(220-年齢)-安静時HR]+安静時HR で求められ,係数k はLVEF と心リハ開始日数と関連して変化する可能性が示された.
著者
牧上 久仁子 大滝 倫子 佐藤 康仁 山口 直人
出版者
The Japanese Society for Hygiene
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.450-460, 2005-11-15 (Released:2009-02-17)
参考文献数
41
被引用文献数
10 10

Objectives: To evaluate the effectiveness of mass treatment with ivermectin of scabies outbreak in institutional settings. To determine the factors, such as host susceptibility and scabetic exposure level associated with the onset of scabies.Methods: The authors investigated a nosocomial scabies outbreak in a close psychiatric ward. The index case was a man with steroid-induced localized crusted scabies. Twenty-six patients were diagnosed with scabies, 4 of them had relapse of scabies, while no staff was infested. Despite frequent surveillance and treatment of symptomatic patients with 1% gamma-benzenehexachloride (γ-BHC: Lindane), new cases were observed. Thus, all 69 patients in the ward were treated with ivermectin (200μg/kg) simultaneously on day 105 of the outbreak (the mass treatment). Patients who had scabies were compared with patients who had no scabies in terms of age, body weight, diabetes, physical functions, topical administration of corticosteroid, proximity to the index patient, and problematic behavior.Results: The mass treatment was implemented without a significant adverse event. Although two patients developed symptoms of scabies after the mass treatment, no patient in the ward had been diagnosed with scabies since the 98th day of the treatment. Regarding factors associated with the scabies onset, the only statistically significant factor was proximity to the index patient with crusted scabies.Conclusions: Oral ivermectin was safe and effective for controlling scabies in institutional settings. The exposure level to scabetic mites was more important than host susceptibility in determining the risk of scabies onset.
著者
山口 直人 塩見 彰睦
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータと教育(CE) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.103, pp.7-12, 2003-10-17
参考文献数
2

SEP-3は、静岡大学情報科学科の計算機教育用に開発されたマイクロプロセッサである。現在は回路図入力によるボトムアップ式で設計演習を行なっている。一方、実際の設計現場では言語ベースのトップダウン式設計手法へのシフトが起きようとしており、本学の設計演習もこのような変化に対応する必要がある。そこで本研究では、C言語を拡張したHDLであるHandel-Cを用いたトップダウン方式のSEP設計方法を提案し、その工数を評価した結果を報告する。実験の結果、目標工数36時間未満を達成することができ、回路規模も現行の実験ボードに実装可能な規模であることが確認できた。In our university, the design exercise of microprocessor SEP-3 for education using a schematic entry CAD is performed with bottom-up method. On the other hand, design site is try to change to top-down design method using C base hardware description language. We also have to apply to such change. In this paper, we propose the top-down design of SEP-3 using Handel-C, and describe the design effort. At the result, new design method needed 15 man-hour and required approximately 10,000 gates.
著者
佐藤 康仁 吉田 雅博 山口 直人
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.39-46, 2008 (Released:2015-03-20)
参考文献数
5
被引用文献数
5

Minds(Medical Information Network Distribution Service)は,診療ガイドラインおよび関連する医療情報を提供するWeb上のデータベースシステムである.Mindsを定期的に利用している者の特徴を明らかにすることで,診療ガイドライン等の医療情報を提供するWebデータベースシステムに求められる要件を明らかにすることができると考える. 方法:対象はMindsのユーザ登録者とした.調査は2006年3月から4月にかけて実施した.アンケート調査への協力のお願いは電子メールで送信し,Webサイトにて調査を実施した.解析では,はじめに,定期的アクセスに関連する因子の探索をカイ二乗検定で行った.続いて有意差のみられた因子と定期的アクセスとの関連をロジスティック回帰モデルで分析した. 結果:コメディカルでは「患者・家族への説明のため(Odds ratio=2.05)」「Webサイトの使いやすさの満足度(OR=3.07)」に定期的アクセスと有意な関連が観察された.医師・歯科医師では「患者・家族への説明のため(OR=2.13)」「最新情報取得のため(OR=1.72)」「Mindsを診療に利用している(OR=2.88)」「Webサイトのコンテンツの満足度(OR=2.31)」に定期的アクセスと有意な関連が観察された. 結論:定期的にMindsを利用する者は,診療の現場において利用している者が多いことが明らかとなった.一方で,診療の現場ではインターネットへの接続が難しい場合が多い.今後は,インターネットに接続しない状態で情報提供を行う仕組みについても考慮する必要がある.
著者
佐藤 康仁 畠山 洋輔 奥村 晃子 清原 康介 小島原 典子 吉田 雅博 山口 直人
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.35-43, 2014 (Released:2016-04-20)
参考文献数
24
被引用文献数
3

Mindsサイトは,診療ガイドラインを中心とした医療情報を2002年より継続してインターネット上に提供している.本研究は,Mindsユーザを対象に実施したユーザ満足度に関するアンケート調査結果を分析することで,Mindsサイトの今後の課題を明らかにすることを目的として実施した.調査方法は,インターネット上の自記式アンケート調査とした.調査対象は,Mindsサイトにユーザ登録をしている者とした.アンケートへの回答者は2,940名(回答率8.2%)であった.「利用目的は達成されたか」について,達成できた割合が高かったのは,医療系学生の「学習や知識習得のため23名(53.5%)」,コメディカルの「診療のため82名(50.0%)」となっていた.利用目的を達成できた者は,利用したことがあるコンテンツの種類が多く,それぞれのコンテンツが役に立ったとする割合が高くなっていた.本研究により明らかとなったMindsサイトの課題は,システムや運用における対応を実施することで順次改善していきたい.
著者
古志野 海人 山口 直人 大嶋 丈史 広江 貴美子 太田 庸子 岡田 清治 太田 哲郎
出版者
松江市立病院
雑誌
松江市立病院医学雑誌 (ISSN:13430866)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.43-48, 2019

症例は96 歳女性.労作時呼吸困難を主訴に近医を受診.HR40 回/ 分の完全房室ブロックを認め当院紹介.徐脈による心不全の合併が認められペースメーカー植え込み術を行った.術後2 日目に心不全が増悪,心エコーで初診時には認められなかった心尖部の壁運動異常が出現し,トロポニンI は3.445 ng/mL と上昇,心電図胸部誘導V2-6 に巨大陰性T 波が出現した.利尿薬やβ blocker を使用し,心不全は改善,心尖部の壁運動異常も改善し自宅へ退院することができた.たこつぼ症候群はストレスが誘因となり,高齢の女性に好発するが,本症例のようにペースメーカー植え込み後に発症した症例も報告されており,術後に心不全が増悪する症例では本疾患の合併を疑う必要がある.
著者
大草 孝介 阿部 興 内藤 貴也 山口 直人 加田 拓磨 黒田 淑恵 佐藤 のぞみ 日高 明日香 森 健人 鎌倉 稔成
出版者
日本計算機統計学会
雑誌
計算機統計学 (ISSN:09148930)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.147-154, 2015 (Released:2017-05-01)
参考文献数
3

本報告は, 経営科学系研究部会連合協議会主催, 平成24年度データ解析コンペティションにおける本研究チームの報告内容をまとめたものである. 同コンペティションでは, 物件情報サイト上の顧客の行動履歴に対する解析を行い, 消費者が将来閲覧するであろう物件を予測するという課題が提供された. この問題に際し, 本研究では顧客行動の中でも, ユーザの検索時の検索条件と, 実際に閲覧した物件の持つ条件の共起関係について重点を置いて解析を行い, ユーザが将来閲覧する物件の予測を行った. 結果として, 提案手法は単純に検索条件に基づいてリコメンドした場合に比べて, 高い予測精度を得ることに成功した.
著者
山口 直人 塩見 彰睦
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータと教育(CE)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.103(2003-CE-071), pp.7-12, 2003-10-17

SEP-3は、静岡大学情報科学科の計算機教育用に開発されたマイクロプロセッサである。現在は回路図入力によるボトムアップ式で設計演習を行なっている。一方、実際の設計現場では言語ベースのトップダウン式設計手法へのシフトが起きようとしており、本学の設計演習もこのような変化に対応する必要がある。そこで本研究では、C言語を拡張したHDLであるHandel-Cを用いたトップダウン方式のSEP設計方法を提案し、その工数を評価した結果を報告する。実験の結果、目標工数36時間未満を達成することができ、回路規模も現行の実験ボードに実装可能な規模であることが確認できた。
著者
山口 直人
出版者
日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.78-82, 2013 (Released:2013-05-29)
参考文献数
14
被引用文献数
1 2

The International Agency for Research on Cancer of World Health Organization announced in May 2011 the results of evaluation of carcinogenicity of radio-frequency electromagnetic field. In the overall evaluation, the radio-frequency electromagnetic field was classified as “possibly carcinogenic to humans”, on the basis of the fact that the evidence provided by epidemiological studies and animal bioassays was limited. Regarding epidemiology, the results of the Interphone Study, an international collaborative case-control study, were of special importance, together with the results of a prospective cohort study in Denmark, case-control studies in several countries, and a case-case study in Japan. The evidence obtained was considered limited, because the increased risk observed in some studies was possibly spurious, caused by selection bias or recall bias as well as residual effects of confounding factors. Further research studies, such as large-scale multinational epidemiological studies, are crucially needed to establish a sound evidence base from which a more conclusive judgment can be made for the carcinogenicity of the radio-frequency electromagnetic field.
著者
山口 直人
出版者
東京女子医科大学
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.14-22, 2013-02-25

がん対策として、一次予防、二次予防、三次予防を効果的に組み合わせた総合的な取り組みが求められている。我が国のがんの罹患率、死亡率の年次推移を分析して、我が国のがん対策がどのような影響を与えつつあるかを考察した。0〜79歳の累積罹患確率で分析した結果、2007年の罹患リスクが最も高かったのは、男では、胃、肺、前立腺、結腸、肝、女では、乳房、胃、結腸、肺、肝の順であった。また、1997年から2007年までの10年間に男女とも累積罹患確率には上昇傾向が認められること、10年間の変化率は男6.77%に対して、女14.09%であり、女の方が、変化率が大きいことが明らかとなった。また、部位別の分析では、男では前立腺癌の変化率が150.10%と非常に大きいこと、女では子宮体癌、乳癌の変化率が大きいことが明らかとなった。,1975年以降の5歳年齢階級別罹患率および死亡率(50〜79歳)の年次推移の分析を行ったところ、乳癌に対するマンモグラフィー検診、前立腺癌に対するPSA検診では、がん検診による過剰診断の可能性が示された。また、胃癌(特に男)についても、過剰診断について検討が必要であることが示唆された。大腸癌では、便潜血反応による検診は、良性の腺腫性ポリープの摘除につながり、その結果として大腸癌のリスクを低下させる可能性があることが示唆された。さらに、肝癌と肺癌では出生コホートによって生涯の罹患リスクが異なることが示され、一次予防の重要性が示された。,本論文は記述的な解析によるものであり、因果関係を実証するものではなく、示された結果は、今後の研究の方向性を示すものである。特に、がん検診による過剰診断の問題は、我が国における実態について、これまでに行われた研究で十分に実証されたとは言えないことから、さらなる研究の推進が求められる。