著者
俣野 源晃 山口 悦司 渡辺 桜 置塩 佳奈
出版者
Japan Society for Science Education
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.61-64, 2022-12-18 (Released:2022-12-15)
参考文献数
4

本研究の目的は,アーギュメントの証拠として利用すべき複数の観察・実験結果を必ずしも証拠として記述できていない「アーギュメント構成における証拠の十分性の問題」について,証拠の十分性に関する認識的理解の観点から事例的に検討することであった.俣野・山口・渡辺・置塩(2022)において報告された小学校理科の単元「太陽と地面の様子」に関する証拠の十分性の認識的理解のタイプに即して,事例となる学習者3名を抽出し,個々の学習者における証拠の十分性の認識的理解,証拠の選択,証拠の記述という3者の関係性を検討したところ,アーギュメント構成における証拠の十分性の問題には証拠の十分性に関する認識的理解が影響していることが示唆された.
著者
俣野 源晃 山本 智一 山口 悦司 坂本 美紀 神山 真一
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.187-195, 2021-07-30 (Released:2021-07-30)
参考文献数
14

本研究の目的は,複数の証拠として,適切かつ十分な証拠を利用するアーギュメント構成能力を育成する上で,McNeill and Krajcik(2011)の教授方略を援用してデザインした授業の有効性について,小学校第5学年の単元「電流がつくる磁力」を事例として明らかにすることである。山本・稲垣ら(2013)は,同学年の単元「物の溶け方」を事例として,教授方略を援用した授業をデザインし,その有効性を明らかにしている。本研究は,異なる単元においても教授方略を援用した授業が適切かつ十分な証拠を利用するアーギュメント構成能力を育成する上で有効なのかを新たに検証するものである。アーギュメント構成能力を評価するために,第5学年の2クラスの児童計65名を対象に,既習内容に関するアーギュメント課題を単元前後に実施した。課題の回答を分析した結果,児童は,主張に関連する科学的な証拠のみを利用する適切性の点において,アーギュメント構成能力が向上したことが明らかになった。また,量的,質的なものを含めた多様な証拠を利用する十分性の点においては,部分的ではあるが,アーギュメント構成能力が向上したことが明らかになった。しかしながら,同時に,証拠の十分性の一部についてはさほど向上しなかったことも見出された。その理由を探るために,証拠の選択率を補足的に分析したところ,実験結果の意味を類推しなければならない「間接的な証拠」を選択することが必ずしもできていないことがわかった。以上の結果を総合的に考察することで,McNeill and Krajcik(2011)の教授方略を援用してデザインした授業は,単元「電流がつくる磁力」においても,適切かつ十分な証拠を利用するアーギュメント構成能力を育成する上で有効であると結論づけることができた。併せて,教授方略を援用してデザインした授業は,「単元内におけるアーギュメントの複数回指導」と「間接的な証拠利用の促進」という点で改善の余地があると考えられる。
著者
神山 真一 俣野 源晃 山本 智一
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.45-50, 2017-12-16 (Released:2018-07-01)
参考文献数
10

本研究の目的は,アーギュメント構成能力を育成するうえでの現職教師の信念(Beliefs)を事例的に分析し,教師教育プログラム(神山ら,2017)が教師のBeliefs に与える影響を明らかにすることである.対象は,アーギュメントを授業に導入した経験が無い,国立大学附属小学校の理科専科教員M(小学校教員歴12 年),1 名であった.教師教育プログラムは,神山ら(2017)に基づいて行い,受講後,対象教員M に対して,質問紙調査と聞き取り調査を実施した.その結果,1) プログラムによって実感したアーギュメントの論理的であるという特質が,教師のBelief に影響を及ぼしている,2) プログラムで検討した授業実践において,問題解決の能力と結びついてアーギュメントのBelief が影響を受けている,3) プログラム中の実際に授業を構想・実施するという活動が,アーギュメント指導の自信や環境に対するBelief に影響を及ぼしていることが明らかになった.