著者
久保田 一雄 倉林 均 田村 耕成 田村 遵一
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.71-79, 1999 (Released:2010-04-30)
参考文献数
23
被引用文献数
1

From June 1990 to October 1998, 100 patients with adult-type atopic dermatitis (59 males and 41 females, 25±8 years) were admitted to our hospital to receive balneotherapy using Kusatsu hot-spring water. The atopic dermatitis in all but 9 cases occurred while the patients were still under 20 and had been refractory to various treatments including steroid ointment therapy over a long period of time. The patients took a 10-minute 40-42°C hot-spring bath followed by immediate application of white petrolatum 1-2 times daily for 75±46 days. The main components of the hot-spring water are aluminium, sulphates and chlorides, and its pH is 2.0. The skin symptoms of 79 of 100 cases (79%) were improved through the balneotherapy and furthermore pruritus was improved in 55 of the 79 cases (70%). The improvement of skin manifestations was supported by a significant decrease in serum LDH levels. In contrast, pruritus was not improved in the remaining 21 cases who showed no changes in skin symptoms and serum LDH levels. Moreover, changes in the number of Staphylococcus aureus on the skin surface were examined before and after balneotherapy. In the 69 cases examined whose skin symptoms were improved, many Staphylococci aureus were detected in 52 of the cases but not in the other 17 cases before starting balneotherapy. They disappeared in 24 cases and decreased in 18 cases of the 52 cases, but were not changed in the remaining 10 cases through the balneotherapy. On the other hand, the number of Staphylococcus aureus on the skin surface was not changed in 11 of the 14 cases examined whose skin symptoms were not improved. Our previous study reported that bactericidal activity against Staphylococcus aureus is expressed by the co-existence of manganese and iodide ions contained in the hot-spring water under an acidic (pH 2.0-3.0) condition. Thus, the mechanisms of the improvement of skin manifestations through the balneotherapy may be explained by considering bactericidal activity of Kusatsu hot-spring water against Staphylococcus aureus inducing acute flares of skin manifestations. Therefore, balneotherapy at Kusatsu can be useful for the treatment of refractory cases of adult-type atopic dermatitis as a suitable method of skin care.
著者
久保田 一雄 町田 泉 田村 耕成 倉林 均 白倉 卓夫
出版者
The Japanese Association of Rehabilitation Medicine
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.40-45, 1997-01-18 (Released:2009-10-28)
参考文献数
23
被引用文献数
2

平成2年6月からの5年間に46例のアトピー性皮膚炎患者(男性31例,女性15例,25±11歳)に対して,草津温泉療法(40~42℃,1回10分,1日1~2回)を3~28週行った.その泉質は酸性(pH2.0)-アルミニウム-硫酸塩・塩化物温泉である.32例(70%)で皮膚症状が改善し,さらにそのうち18例で掻痒も改善した.皮膚症状の改善は血清LDHの有意な低下でも裏付けられた.皮膚症状改善例のうち,温泉療法前に皮膚表面に多数の黄色ぶどう球菌が検出された15例では,温泉療法後に13例で消失,2例で減少した.この草津温泉療法による皮膚症状の改善機序として,皮膚病変の増悪因子である黄色ぶどう球菌に対する酸性温泉水の殺菌作用が推定される.
著者
山本 悦子 仲俣 菜都美 間嶋 満 倉林 均 高橋 一司 荒木 信夫 山元 敏正
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.408-411, 2022 (Released:2022-11-22)
参考文献数
10

嚥下障害は進行期のParkinson病(Parkinson disease:PD)患者の生命予後に大きく関わる症状の一つであり,病気の進行に伴い緩徐に出現するが,自覚的,他覚的にも気づきにくいことが多い.本研究の目的は,嚥下障害の出現頻度が高い進行期PD患者を対象として,食事摂取の可否に関連する因子を明らかにし,PD患者の嚥下障害を簡便に評価できる方法を検討することである.対象:当院脳神経内科に入院した進行期PD患者37名,平均年齢は77.0±5.8歳(meant±SD),平均罹病年数は7.9±6.3年であった.方法:嚥下造影検査(videofluoroscopic examination of swallowing:VF)の結果から明らかな嚥下障害を認めたか否かをもとに対象例を嚥下障害なし群と嚥下障害あり群の2群に分けた.次に両群を簡便に分別するための因子を検討するために,年齢,性別,罹病期間,入院期間,入院から嚥下造影検査までの日数,Hoehn&Yahr stage,VF検査時点の血清アルブミン値,body mass index,mini mental state examination(MMSE),咽頭反射の有無,反復唾液嚥下テストの値,自己喀痰排出能力,最長発声持続時間(maximum phonation time:MPT),声量,発話明瞭度,握力,歩行能力,入院期間,入院からVF検査までの日数について比較した.結果:握力,自己喀痰排出能力,声量,MPT,咽頭反射で有意差を認めたが,他の項目では両群間に差はなかった.結論:握力,自己喀痰排出能力,声量,MPTが進行期PD患者の嚥下障害の有無を簡便に検出する指標となり得ることが明らかになった.
著者
久保田 一雄 田村 耕成 武 仁 倉林 均 白倉 卓夫
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.23-29, 1997-01-25 (Released:2009-11-24)
参考文献数
23
被引用文献数
8 7

平成元年1月から同7年6月までの6年6カ月間に当院に入院した急性心筋梗塞患者31例 (旅行者15例, 草津在住者16例) 及び脳梗塞患者40例 (旅行者15例, 草津在住者25例) について, その発症における温泉浴の関与を検討した. 発症前24時間以内に温泉浴を行った急性心筋梗塞患者15例 (旅行者9例, 草津在住者6例) 中12例 (旅行者6例, 草津在住者6例) は温泉浴開始後3時間以内の発症, その内8例 (旅行者4例, 草津在住者4例) は1時間以内の発症であった. また, 発症前24時間以内に温泉浴を行った脳梗塞患者27例 (旅行者11例, 草津在住者16例) 中15例 (旅行者9例, 草津在住者6例) は温泉浴開始後3時間以内の発症, その内10例 (旅行者6例, 草津在住者4例) は1時間以内の発症であった. なお, 入浴中の発症は急性心筋梗塞2例 (旅行者1例, 草津在住者1例), 脳梗塞2例 (旅行者1例, 草津在住者1例) であった. 急性心筋梗塞の時刻別発症頻度と温泉浴開始後発症までの時間には旅行者と草津在住者で大きな差異は見られなかった. 脳梗塞の時刻別発症頻度は旅行者で6時から12時まで, 草津在住者で18時から24時までの時間帯でやや少ない傾向が認められ, 温泉浴開始後発症までの時間は草津在住者で3時間以上が多かった. ほとんどの症例で1~4の危険因子 (高血圧症, 高脂血症, 高尿酸血症, 糖尿病, 喫煙, その他の既往疾患) が認められたが, 旅行者と草津在住者, 温泉浴の有無の比較では明らかな差異は見られなかった. 温泉浴開始後短時間内にこれら血栓性疾患が発症する要因として, 血圧, 心拍数, 血液粘度, 線溶活性並びに血小板機能などの一過性の変化が推定される. また, 私達は既に20時の温泉浴が夜間の血圧をより低下させ, さらに翌早朝の血液粘度の上昇をより急激にすることを報告したが, 真夜中や午前中の発症にはそのような機序の関与も考えられる.
著者
荒川 典子 秦 和文 栗原 加奈 川嵜 卓也 倉林 均 間嶋 満
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.B0051, 2006 (Released:2006-04-29)

【はじめに】視床障害の臨床症状として,感覚障害,不全片麻痺,運動失調症が代表的であるが,不随意運動としてジストニアが出現することも知られており,その頻度は17%程度とされている.今回,視床出血後に生じたジストニアが歩行及びADL能力改善の阻害因子となった3症例の理学療法を経験したので,その内容と経過について報告する.【症例紹介及び理学療法経過】<症例1>57歳男性,右視床出血.第2病日から脳外科病棟にて起立・歩行練習開始.第13病日リハ科転科.転科時のgrade(上肢/手指/下肢)は左6/10/10.左深部感覚脱失.第30病日頃から歩行・応用動作時,左上下肢にジストニアが出現し,同時に左肩関節痛も見られるようになった.歩行・階段昇降時に出現するジストニアと左肩関節痛に対して,疼痛及びジストニアが誘発されない肢位・運動強度での動作練習を実施.この際,左上下肢の深部感覚障害もジストニア発現に関与していると思われたため視覚フィードバックを用いた.第74病日,T字杖での監視歩行が室内で可能となり自宅退院.左深部感覚に改善はなく,左上下肢の痺れも残存.<症例2>68歳男性,右視床出血.第2病日から脳外科病棟にてベッド上座位開始.第6病日から端坐位,第19病日から起立,第22病日から歩行練習開始.第31病日リハ科転科.転科時のgradeは左10/10/10.左深部感覚中等度鈍麻.歩行・起立時に左上肢近位部・体幹にジストニア出現し,歩行時には左短下肢装具・膝装具を使用しても中等度の介助を要した.歩行時のジストニアに対し,運動療法と並行して薬物療法施行.第36病日からは歩行練習を中止し,下肢筋力強化,ジストニア抑制肢位で視覚フィードバックを用いた起立練習を実施.第53病日から平行棒内歩行,第66病日から四点杖歩行開始.第99病日,室内での四点杖による歩行が自立し,自宅退院.左深部感覚に改善なし.<症例3>64歳女性,右視床出血.発症当日から脳外科病棟にて起立練習開始,第5病日から歩行練習開始.第6病日リハ科転科.転科時のgradeは左11/11/10.左深部感覚重度鈍麻.左上下肢・体幹にジストニアを認め,歩行にはT字杖を用い,更に軽介助を要した.ジストニア抑制肢位での起立練習を実施.第32病日,独歩にて自宅退院.左深部感覚は中等度鈍麻.【まとめ】ジストニアの発症には深部感覚障害に基づくものと,大脳皮質-基底核間の運動制御ループの破綻によるものとの二つの生理学的機序が想定されている.ジストニアは強い筋収縮を伴う運動や精神的負荷で誘発されやすいことが知られており,今回の理学療法においてはジストニアが誘発されない範囲の負荷での反復運動を施行し,筋力強化や動作能力の向上を図ることが有効であることが示唆された.また,深部感覚障害によるジストニアの発現も考慮し,運動時のジストニア出現の自己抑制を目的とした,視覚フィードバックを利用することも重要であると思われた.
著者
久保田 一雄 田村 耕成 倉林 均 武 仁 白倉 卓夫 田村 遵一
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.61-68, 1997 (Released:2010-04-30)
参考文献数
18
被引用文献数
1

To clarify possible involvement of hot spring bathing in the occurrence of acute myocardial infarction and cerebral infarction at Kusatsu, its effects on blood pressure, heart rate, plasma cortisol and hematocrit were examined in 9 healthy young men. Abrupt increase in systolic blood pressure was observed immediately after starting a 3-minute 47°C or a 10-minute 42°C hot-spring bath. Both systolic and diastolic blood pressure were abruptly decreased one minute after completing either 47°C or 42°C bathing. The heart rate was increased gradually after the start of either 47°C or 42°C bathing and was decreased gradually after the completion of either 47°C or 42°C bathing. It was considered that the plasma Cortisol level was increased 15 minutes after starting 47°C bathing and the hematocrit was increased 15 minutes after starting 42°C bathing. We have already reported that fibrinolytic activity was decreased and platelet function was activated by 47°C bathing. Taken together, it is suggested that the mechanism of the occurrence of thrombotic diseases after hot spring bathing may be explained by considering transient changes in blood pressure, heart rate, blood viscosity, fibrinolytic activity and platelet function induced by hyperthermal stress.
著者
田村 耕成 久保田 一雄 倉林 均
出版者
The Japanese Association of Rehabilitation Medicine
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.34-37, 2001-01-18 (Released:2009-10-28)
参考文献数
10

水治療の対象者は血栓性疾患の危険因子を有する場合が多い.水浴と血栓性疾患との関連性を研究する目的で,入浴負荷可能な健常成人男性10例を対象として40℃20分浴と42℃10分浴の血小板および凝固線溶系に及ぼす影響を検討した.40℃20分浴では組織プラスミノーゲン活性化因子抗原(tPA)が増加し,プラスミノーゲン活性化因子インヒビターI抗原(PAI-I)が減少する傾向が,42℃10分浴ではHt,tPA,PAI-Iが増加する傾向が見られたが有意な差ではなかった.血小板に対する影響はなかった.以上の成績から40~42℃の水温による水治療は血小板および凝固線溶系には影響を与えないと考えられた.
著者
久保田 一雄 町田 泉 田村 耕成 倉林 均 白倉 卓夫
出版者
リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.40-45, 1997-01-18
参考文献数
23
被引用文献数
2

平成2年6月からの5年間に46例のアトピー性皮膚炎患者(男性31例, 女性15例, 25±11歳)に対して, 草津温泉療法(40~42℃, 1回10分, 1日1~2回)を3~28週行った。その泉質は酸性(pH2.0)-アルミニウム-硫酸塩・塩化物温泉である。32例(70%)で皮層症状が改善し, さらにそのうち18例で掻痒も改善した。皮膚症状の改善は血清LDHの有意な低下でも裏付けられた。皮膚症状改善例のうち, 温泉療法前に皮層表面に多数の黄色ぶどう球菌が検出された15例では, 温泉療法後に13例で消失, 2例で減少した。この草津温泉療法による皮層症状の改善機序として, 皮膚病変の増悪因子である黄色ぶどう球菌に対する酸性温泉水の殺菌作用が推定される。