著者
山本 悦子 仲俣 菜都美 間嶋 満 倉林 均 高橋 一司 荒木 信夫 山元 敏正
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.408-411, 2022 (Released:2022-11-22)
参考文献数
10

嚥下障害は進行期のParkinson病(Parkinson disease:PD)患者の生命予後に大きく関わる症状の一つであり,病気の進行に伴い緩徐に出現するが,自覚的,他覚的にも気づきにくいことが多い.本研究の目的は,嚥下障害の出現頻度が高い進行期PD患者を対象として,食事摂取の可否に関連する因子を明らかにし,PD患者の嚥下障害を簡便に評価できる方法を検討することである.対象:当院脳神経内科に入院した進行期PD患者37名,平均年齢は77.0±5.8歳(meant±SD),平均罹病年数は7.9±6.3年であった.方法:嚥下造影検査(videofluoroscopic examination of swallowing:VF)の結果から明らかな嚥下障害を認めたか否かをもとに対象例を嚥下障害なし群と嚥下障害あり群の2群に分けた.次に両群を簡便に分別するための因子を検討するために,年齢,性別,罹病期間,入院期間,入院から嚥下造影検査までの日数,Hoehn&Yahr stage,VF検査時点の血清アルブミン値,body mass index,mini mental state examination(MMSE),咽頭反射の有無,反復唾液嚥下テストの値,自己喀痰排出能力,最長発声持続時間(maximum phonation time:MPT),声量,発話明瞭度,握力,歩行能力,入院期間,入院からVF検査までの日数について比較した.結果:握力,自己喀痰排出能力,声量,MPT,咽頭反射で有意差を認めたが,他の項目では両群間に差はなかった.結論:握力,自己喀痰排出能力,声量,MPTが進行期PD患者の嚥下障害の有無を簡便に検出する指標となり得ることが明らかになった.
著者
荒川 典子 秦 和文 栗原 加奈 川嵜 卓也 倉林 均 間嶋 満
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.B0051, 2006 (Released:2006-04-29)

【はじめに】視床障害の臨床症状として,感覚障害,不全片麻痺,運動失調症が代表的であるが,不随意運動としてジストニアが出現することも知られており,その頻度は17%程度とされている.今回,視床出血後に生じたジストニアが歩行及びADL能力改善の阻害因子となった3症例の理学療法を経験したので,その内容と経過について報告する.【症例紹介及び理学療法経過】<症例1>57歳男性,右視床出血.第2病日から脳外科病棟にて起立・歩行練習開始.第13病日リハ科転科.転科時のgrade(上肢/手指/下肢)は左6/10/10.左深部感覚脱失.第30病日頃から歩行・応用動作時,左上下肢にジストニアが出現し,同時に左肩関節痛も見られるようになった.歩行・階段昇降時に出現するジストニアと左肩関節痛に対して,疼痛及びジストニアが誘発されない肢位・運動強度での動作練習を実施.この際,左上下肢の深部感覚障害もジストニア発現に関与していると思われたため視覚フィードバックを用いた.第74病日,T字杖での監視歩行が室内で可能となり自宅退院.左深部感覚に改善はなく,左上下肢の痺れも残存.<症例2>68歳男性,右視床出血.第2病日から脳外科病棟にてベッド上座位開始.第6病日から端坐位,第19病日から起立,第22病日から歩行練習開始.第31病日リハ科転科.転科時のgradeは左10/10/10.左深部感覚中等度鈍麻.歩行・起立時に左上肢近位部・体幹にジストニア出現し,歩行時には左短下肢装具・膝装具を使用しても中等度の介助を要した.歩行時のジストニアに対し,運動療法と並行して薬物療法施行.第36病日からは歩行練習を中止し,下肢筋力強化,ジストニア抑制肢位で視覚フィードバックを用いた起立練習を実施.第53病日から平行棒内歩行,第66病日から四点杖歩行開始.第99病日,室内での四点杖による歩行が自立し,自宅退院.左深部感覚に改善なし.<症例3>64歳女性,右視床出血.発症当日から脳外科病棟にて起立練習開始,第5病日から歩行練習開始.第6病日リハ科転科.転科時のgradeは左11/11/10.左深部感覚重度鈍麻.左上下肢・体幹にジストニアを認め,歩行にはT字杖を用い,更に軽介助を要した.ジストニア抑制肢位での起立練習を実施.第32病日,独歩にて自宅退院.左深部感覚は中等度鈍麻.【まとめ】ジストニアの発症には深部感覚障害に基づくものと,大脳皮質-基底核間の運動制御ループの破綻によるものとの二つの生理学的機序が想定されている.ジストニアは強い筋収縮を伴う運動や精神的負荷で誘発されやすいことが知られており,今回の理学療法においてはジストニアが誘発されない範囲の負荷での反復運動を施行し,筋力強化や動作能力の向上を図ることが有効であることが示唆された.また,深部感覚障害によるジストニアの発現も考慮し,運動時のジストニア出現の自己抑制を目的とした,視覚フィードバックを利用することも重要であると思われた.
著者
友信 綾 國田 広規 伊藤 有希 間嶋 満
出版者
公益社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
理学療法 - 臨床・研究・教育 (ISSN:1880893X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.51-54, 2011 (Released:2011-03-30)
参考文献数
5

脊髄性筋萎縮症(SMA)Ⅰ型では乳児期から重度の肢体不自由を呈するが,一般的に知的な遅れはあっても軽度とされており,福祉機器を使用することでコミュニケーション手段の獲得に至っている例も多い。本報告では当院入院中のSMAⅠ型児に対してコミュニケーション手段の獲得を最終目標に,導入期としてスイッチを工夫して玩具を操作できる環境を設定し,その理解度を4段階で評価した。その結果,児は現在機器操作の理解度の3段階目にあたり,スイッチと機器との一次的な繋がりは理解しているものの,完全な理解には至っていないということが解った。その背景として,子どもがコミュニケーション能力を発達させていく過程で必要な相互作用が,本児には与えられる機会が極めて乏しかったという経緯が示唆された。今回の結果を受けコミュニケーション手段獲得に向けた今後の課題として,フィードバックを強化した機器操作練習と,児からの働きかけを汲み取り,応答し,さらなる表出を促していくような取り組みの必要性を検証することができた。
著者
櫻田 弘治 浦川 宰 小澤 亜紀子 佐藤 真治 澤 貴広 牧田 茂 間嶋 満 許 俊鋭
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.434, 2003

<B>【はじめに】</B>現在、心臓外科術後症例に対する心臓リハビリテーションの有効性は明らかなものである。心臓外科術後早期の短期間での効果も、我々の研究結果において明らかにされている。しかし、この中には改善のみられなかった症例も存在することは事実である。今回、心臓外科術後早期の短期入院での運動療法によって、運動耐容能に改善のみられなかった症例について、その要因を検討した。<B>【対象】</B>2001年9月から2002年9月に当院心臓血管外科にて胸部正中切開による手術後、リハビリテーションを施行した患者のうち、早期離床を目的とした病棟内理学療法施行後、リハビリテーション科での短期入院による運動療法を施行した症例28例(男性:25名・女性:3名、平均年齢63.1±11歳)を対象とした。リハビリテーション科での運動療法は心肺運動負荷試験(CPX)の結果より嫌気性代謝閾値(AT)を決定し、その結果をもとに自転車こぎをおこなった。開始時期は、術後平均病日11.7±4.3、運動療法期間は10.9±4日であった。手術様式別は冠動脈バイパス術14例、弁置換・弁形成術9例、冠動脈バイパス+弁置換術5例であった。尚、術後運動器疾患を合併症した症例は除外した。<B>【方法】</B>運動療法実施後のPeak VOH<SUB>2</SUB>が改善した群(22例)、しなかった群(8例)の2群間において、術前左室駆出率(LVEF)・手術侵襲(手術時間)・術後臥床期間を対応なしのt検定を用いて検討した。<B>【結果】</B>改善した群・しなかった群でのPeak V(dot)O<SUB>2</SUB>は、それぞれ運動療法前:12.3±2.6・12.2/2.2ml/kg/min、運動療法後15.2±3.2・11.5±2.5 ml/kg/minであった。改善した群・しなかった群での、術前左室駆出率(LVEF)は各々、57.4±13.9・63.3±14%、術後臥床期間は2.5±0.7・3.0±0.6日で有意な差はみられなかった。しかし、手術時間は改善した群で263.5±83min、改善しなかった群で344.7±66.9minと有意差が認められた。<B>【考察】</B>心臓血管外科手術は血行動態や心筋虚血の改善、運動能力の向上を目的として行われるが、全症例が同様に改善するわけではない。今回、心臓外科術後約11病日より自転車エルゴメータによる、約10日間の運動療法施行症例中で、運動耐容能が改善しなかった群では、手術時間が長かったことによる、心筋自体の回復、および全身状態安定の遅延が運動耐容能が改善しなかった大きな要因であると考える。<B>【結語】</B>心臓外科術後早期、約11病日より開始した、約10日間の運動療法を施行しても、改善がみられなかった症例の原因としては、手術時間が長いことであった。