著者
元木 幸一
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

ゼーバルト・ベーハム作《ケルミス大版画》を中心に、居酒屋、歯医者、雄鶏合戦、ダンス、九柱戯、刃渡り、鶏ダンス、徒競走、競馬など諸モティーフの意味、起源を詳細に分析した。また宗教画と世俗画における画中版画と文献資料の分析から、農民祝祭版画の受容と販売形式を明らかにした。最後に、ニュルンベルク宗教改革がいかに祝祭行事に介入したかを歴史的に解明し、それがケルミスにどのように影響したか、そして《ケルミス大版画》がどのような機能を目指して制作されたかをまとめた。
著者
元木 幸一
出版者
山形大学大学院社会文化システム研究科
雑誌
山形大学大学院社会文化システム研究科紀要 = Bulletin of Graduate School of Social & Cultural Systems at Yamagata University
巻号頁・発行日
vol.7, pp.39-52, 2010-10-05

Abstract: In the Middle Ages, it was discussed, whether Christ had laughed, or not. Laughter was prohibited particularly in monasteries. Misericords, which are carvings under the seats of choirs in the churches, however, are decorated by humorous motives. The world of secular humor has thus entered into the holy areas. This paper searches for the reason. The reasons may be associated with the marginal decorations of the manuscripts. The margins of Book of Hours and Breviary are zrnamented by fantastic motifs. These motifs may have been cited from the secular festivals.
著者
尾崎 彰宏 幸福 輝 元木 幸一 森 雅彦 芳賀 京子 深谷 訓子 廣川 暁生 松井 美智子
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

最大の研究成果は、「カーレル・ファン・マンデル「北方画家列伝」註解」が完成し、出版の準備を整える事ができたことである。この翻訳研究の過程で、以下の点が明らかになった。(1)マンデルは『絵画の書』において、inventie(着想/創意)、teyckenconst(線描芸術)、welverwen(彩色)という鍵となる概念を用いて、15、16世紀ネーデルラント絵画史を記述したこと。(2)マンデルは、自律的に『絵画の書』を執筆したのではなく、とくにヴァザーリの『芸術家列伝』に対抗する形で、ヴェネツィアの絵画論、とりわけロドヴィコ・ドルチェの『アレティーノ』で論じられている色彩論を援用した。つまり、マンデルのteckenconstは、ヴァザーリのdesegnoを強く意識しながらも、マンデルは本質と属性の関係を逆転した。ヴェネツィアにおける色彩の優位という考えとディゼーニョを一体化させることで、絵画とは、素描と色彩が不即不離の形で結びついたものであり、絵画として人の目をひきつけるには、属性として軽視された色彩こそが重要なファクターであるという絵画論を打ち立てた。(3)この絵画とは自律的な存在ではなく、鑑賞者の存在を重視する絵画観である。つまりよき理解者、コレクターが存在することで、絵画の意味はその「あいだ」に生まれるという絵画観が表明されている。このように本研究では、マンデルの歴史観が明らかになり、ネーデルラント美術研究のための新たなる地平を開くことができた。