著者
幸福 輝 尾崎 彰宏 青野 純子 深谷 訓子 中田 明日佳 髙城 靖之
出版者
独立行政法人国立美術館国立西洋美術館
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-10-31

17世紀オランダ美術の特質はなによりその写実的風景画や風俗画にあり、古代神話や聖書主題の作品を描いたルネサンスと対比されてきた。こうしてオランダ美術における「オランダ的なもの(オランダ性)」の解明が重要な課題のひとつとなった。他方、オランダの経済的繁栄の基盤は東西貿易にあり、芸術作品を含むあらゆるモノがオランダに集まっていた。そのような社会において異国の文化の受容は必然であり、「オランダ性」はオランダ固有の国内問題であると同時に、世界に向きあった国際化の問題でもあった。本研究では、特にアジアの視点から17世紀オランダ美術を再検討し、「オランダ性」に関する様々な調査研究をおこなった。
著者
栗原 隆 加藤 尚武 座小田 豊 尾崎 彰宏 野家 伸也 伊坂 青司 山内 志朗 鈴木 光太郎 佐藤 透 城戸 淳
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

「主体」は空間の中で、形の認知に感応する中でこそ自覚されるものであって、自我の自己措定のような機序によって成り立つものではないことが確認された。
著者
田中 英道 尾崎 彰宏 有賀 祥隆 松本 宣郎
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究では、研究代表者が日本と西洋の古典主義を比較検討する作業を行っている。とくに、本年度は、代表者がドイツに長期で滞在する機会を得たため、ドイツ・ゴシック美術と日本美術の関係について詳細な報告をおこなった。古典主義が美術表現にどのような形で表れてくるのか、研究分担者が、それぞれの専門領域からアプローチし、それぞれの成果はやはり研究報告書にまとめられた。古代を担当する松本宣郎は、「古代ローマの美術政策」に光を当てている。ローマ美術、わけてもアウグストゥスの元首政の時代のローマ建築や美術に関する最近の研究に依拠して、「古典美術」が元首・皇帝の政策と関わって展開した状況を概観している。イタリアを担当する森雅彦は、「プッサンとアカデミー」の問題に絞り、古典主義の美術理論とプッサンの芸術との関連性をアカデミーという場に求め、詳細な分析をおこなった。足達薫は、パルミジアニーノの作品における古代に焦点を当て、マニエリスムと古典主義の関係に新たな視点を提供した。元木幸一は、ドイツ美術の古典主義美術の大御所、デューラーの芸術表現にいかに古代が強く作用していたかを改めて検証している。尾崎彰宏は、17世紀オランダ美術の代表的画家、「レンブラントのメランコリー」に絞った検討を行った。古代ギリシアに端を発するこの「メランコリー」理論は、ルネサンスに隆盛を極め、バロックの時代にまでその影響は残っている。その代表格がレンブラントの作品である。この視点は長らく等閑に付されてきた。
著者
尾崎 彰宏 幸福 輝 元木 幸一 森 雅彦 芳賀 京子 深谷 訓子 廣川 暁生 松井 美智子
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

最大の研究成果は、「カーレル・ファン・マンデル「北方画家列伝」註解」が完成し、出版の準備を整える事ができたことである。この翻訳研究の過程で、以下の点が明らかになった。(1)マンデルは『絵画の書』において、inventie(着想/創意)、teyckenconst(線描芸術)、welverwen(彩色)という鍵となる概念を用いて、15、16世紀ネーデルラント絵画史を記述したこと。(2)マンデルは、自律的に『絵画の書』を執筆したのではなく、とくにヴァザーリの『芸術家列伝』に対抗する形で、ヴェネツィアの絵画論、とりわけロドヴィコ・ドルチェの『アレティーノ』で論じられている色彩論を援用した。つまり、マンデルのteckenconstは、ヴァザーリのdesegnoを強く意識しながらも、マンデルは本質と属性の関係を逆転した。ヴェネツィアにおける色彩の優位という考えとディゼーニョを一体化させることで、絵画とは、素描と色彩が不即不離の形で結びついたものであり、絵画として人の目をひきつけるには、属性として軽視された色彩こそが重要なファクターであるという絵画論を打ち立てた。(3)この絵画とは自律的な存在ではなく、鑑賞者の存在を重視する絵画観である。つまりよき理解者、コレクターが存在することで、絵画の意味はその「あいだ」に生まれるという絵画観が表明されている。このように本研究では、マンデルの歴史観が明らかになり、ネーデルラント美術研究のための新たなる地平を開くことができた。