著者
内田 知宏 黒澤 泰
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.92.20076, (Released:2021-11-30)
参考文献数
41
被引用文献数
4

The purpose of this study was to quantitatively clarify the physical and mental health of first year university students whose classes were conducted online due to COVID-19. The checklist of Visual Display Terminal (VDT) syndrome suggested that physical stress was placed mainly on the eyes, shoulders, neck, and head. In addition, from the results of the Kessler psychological distress scale (K6) scale, higher values were obtained than those of previous studies, which indicated the poor mental health of first year university students. Consequently, university academics who conduct online classes must consider the physical and mental fatigue of the students. In contrast, there was a correlation between university students who had desire for Hikikomori and students who preferred online classes. In other words, for students who experienced difficulties with existing face-to-face classes, it is suggested that online classes are one of the potential solution.
著者
内田 知宏 Tomohiro Uchida
雑誌
尚絅学院大学紀要 = Bulletin of Shokei Gakuin University (ISSN:2433507X)
巻号頁・発行日
no.80, pp.17-27, 2020-12-18

統合失調症患者において体験される妄想の発生・維持に認知の歪みが関わっていると考えられているが、こうした病理モデルを健常者の妄想様体験(パラノイア)に当てはめ検討していく取り組みは、統合失調症を含む精神病の早期発見、早期介入という観点から重要であると考えられている。本研究において、大学生200名を対象に質問紙調査を実施した結果、認知的洞察や自己・他者スキーマといった認知的側面や、抑うつ、不安といった感情は、それぞれ単独でもパラノイア傾向と相関していたが、これらの心理的要因を組み合わせて検討することで、とくに、自己確信性で示されるような認知の硬さ、他者へのスキーマ、および抑うつがパラノイア傾向に影響を与えることが示された。こうした知見は、パラノイア傾向の強い個人の心理的要因を包括的に理解する上で、また認知行動療法を中心とした介入の標的を特定する上で役立つ可能性があると考えられた。
著者
内田 知宏 川村 知慧子 三船 奈緒子 濱家 由美子 松本 和紀 安保 英勇 上埜 高志
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.143-154, 2012-03-30 (Released:2012-05-22)
参考文献数
34
被引用文献数
7 8

本研究は,自己と他者に対するスキーマを測定するために作成された日本版Brief Core Schema Scale(JBCSS)の信頼性,妥当性について検討をした。あわせて本研究では,自覚的な抑うつとスキーマとの関連について検討した。JBCSSの因子構造を確認するための確証的因子分析からは,「自己ポジティブ(PS)」,「自己ネガティブ(NS)」,「他者ポジティブ(PO)」,「他者ネガティブ(NO)」の4因子構造が確認された。さらに,クラスター分析によってこれら4因子を組み合わせたスキーマパターンの類型化を試みたところ,4つのクラスターが抽出された。分散分析の結果,自己および他者の両方に対してネガティブなスキーマをもつ群は,他の群と比べてもっとも抑うつ得点が高かった。こうした結果から,JBCSSで測定される自己と他者に対するスキーマを組み合わせて検討することで,症状に関するより詳細な情報が得られることが示唆された。
著者
内田 知宏 Tomohiro Uchida
雑誌
尚絅学院大学紀要 = Bulletin of Shokei Gakuin University (ISSN:2433507X)
巻号頁・発行日
no.82, pp.45-52, 2021-12-23

本研究では、全国の高校に郵送調査を実施し、養護教諭におけるメンタルヘルスリテラシー(以下、MHL)の実態について明らかにすることを試みた。思春期・青年期を好発期とする代表的な精神疾患として、統合失調症とうつ病を取り上げ、ヴィネットの症状から問題をどう捉えるのかを検討した。2012年11月から12月までの間に全国の公立、および私立の高等学校から無作為に抽出した1000校に対して郵送法による質問紙調査を実施した結果、349校(回収率34.9%)から返送を得た。対象者には、うつ病または統合失調症の精神疾患のヴィネット(模擬症例)をランダムに1つ提示し、ヴィネットの状態について3件法(1.病名はつくと思う、2.病名はつかないと思う、3.わからない)で尋ねた。さらに、「1.病名はつくと思う」を選択した者には自由記述にて病名の回答を求めた。ヴィネットに対して、病名がつくと回答した養護教諭はうつ病で127名(73.0%)、統合失調症で151名(86.3%)であった。さらに、ヴィネットから病名を特定できていた養護教諭はうつ病で98名(56.3%)、統合失調症で118名(67.4%)であった。養護教諭のうつ病および統合失調症のヴィネットに対する正答率は一般住民よりは高く、日々の業務の中で生徒の心身の健康問題に対応してきた表れとも考えられた。養護教諭は教育現場において、児童・生徒の精神的な不調を早期に発見し、適切な精神保健福祉領域の専門機関につなぐ重要な位置にあるため、思春期・青年期に多発する精神疾患に関する知識や精神的な不調への対応方法を習得しておく必要があるといえる。