著者
国分 秀也 冨安 志郎 丹田 滋 上園 保仁 加賀谷 肇 鈴木 勉 的場 元弘
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.401-411, 2014 (Released:2014-10-08)
参考文献数
85
被引用文献数
4 2

2013年3月に, 本邦でもメサドン内服錠の臨床使用が開始された. メサドンは, モルヒネ等の他のオピオイドと異なる薬理作用をもち, 呼吸抑制およびQT延長といった重篤な副作用を発現することがある. その原因の1つとして, 体内薬物動態が非常に複雑であることが挙げられる. メサドンは大半が肝臓で代謝されるが, その代謝酵素はCYP3A4, CYP2B6およびCYP2D6など, 多岐にわたる. また, 自己代謝誘導があること, アルカリ尿で排泄が遅延すること, 半減期が非常に長く定常状態に到達するまでに長時間要すること等の問題がある. これらの複雑なメサドンの薬物動態を十分に理解して使用されなければ, 血中メサドン濃度が一定に保たれず, 一過性に上昇することによる重篤な副作用が起きる可能性がある. 本論文では, 臨床医師あるいは薬剤師がメサドンを安全に臨床使用するために必要な薬物動態についてまとめた.
著者
冨安 志郎 橋口 順康
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.561-569, 2006 (Released:2006-10-25)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

がんが発生すると, がんの増大に伴う機械的刺激やがんが誘導した炎症細胞から放出される発痛物質により持続的な侵害刺激が発生する. やがて疼痛伝達系全体に感作が発生すると, 病巣から離れた皮膚の痛覚過敏, アロディニアなどの知覚異常, 立毛筋収縮や発汗などの交感神経刺激症状, 筋肉の収縮, 周囲の圧痛といったいわゆる関連痛が発生する. 内臓や骨などの深部体性組織に発生したがんでしばしばみられる現象で, 内臓や骨が侵害刺激を入力している脊髄レベルに同様に侵害刺激を入力している皮膚, 同脊髄レベルに遠心路核をもつ筋肉, 交感神経に症状が出現する. 痛みの部位に病巣がない場合は, 関連痛を念頭において異常のある皮膚, 筋肉のデルマトーム, マイオトームから責任脊髄レベルを同定し, そのレベルに侵害刺激を入力する内臓や骨の異常を検索することが病巣の早期発見につながる. また, 関連徴候として神経障害性疼痛様の知覚異常が出現することを知っておくことは鎮痛薬選択の意味から重要である.
著者
澄川 耕二 三好 宏 冨安 志郎
出版者
長崎大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2001

視覚的に疱疹の程度を評価し、熱または機械的刺激に対する閾値の低下の程度とどのような相関があるのか評価を行った。ヘルペスゾスターウイルスを右下肢に皮下注し(ウイルスは10^6、10^7、10^8 plaque-forming unitを50μlに希釈して用いる)10日後のラットは疱疹の面積と機械的または熱刺激に対する閾値の低下は負の相関を示し、アロデイニアと痛覚過敏状態を呈した。しかし、現在作成している帯状疱疹後神経痛モデルラットは2週間ほど経過すると死に至ってしまい、急性痛の評価は可能であるが臨床的に大きな問題となっている慢性痛に対する評価は難しい。また、ウイルスの投与量が少なかったり、抗ウイルス薬を増量すれば長期生存はするが皮疹や痛覚過敏の発現をみず、疼痛モデルとして不適切なものとなってしまう。今後、現在のモデルにおける帯状疱疹後急性期の疼痛メカニズムを解析するより、現在のモデルを改良して帯状疱疹慢性期のメカニズムを検討できるモデルを作成するほうが臨床的に意義の高いことだと考え、ウイルスの量、抗ウイルス投与量とタイミング、疼痛反応測定の時期等を調整、もしくは何らかの新しい技術を導入し試行の予定である。